ep11 天使

日記のようなものをまとめるとこうだ。


「まず、この男は貴族か、もしくはかなりの金持ちとみて間違いない。」


「実家から盗んだ金、下水道の工事を知っていたこと、学者との交流があったこと。これらは金のない奴が持っていたにしてはおかしなことばかりだ。」


「そしてこの男の目的は“俺を否定したあいつらに痛い目を見せてやる”ってことだ。この“あいつら”っていうのは学者のことだろうな、魔物を利用して何かをしようとしていたこの男は学者たちにその何かを否定されたんだろう。」


「だから強力な魔物を求めた。力によって報復を考えたはずだ。」


「そのために実家から盗んだ金でこの研究室を作り、あの白い寄生虫を研究していた。」


「逃げた一匹が下水道で成長したのがあのボス、もしかしたら増殖している可能性もあるが、それはボスのリポップとして扱われるんだろうな。」


「実験は失敗続きだったが“天の島”から“天使”が落ちてきたことで実験は進んだわけだ。」


「言葉を話すようになったが、何かの単語を繰り返すだけの天使にこの男は怒り、廃棄を決めた。」


「ここで日記が終わっているってことはこの先に起きたことは2パターン。」


「一つ、実験は成功し、男の言うことを聞く天使が完成した。」


「一つ、実験は失敗し、男は死んだ。」


「まぁ、これは後者とみていいだろう。天使に殺されたか、それとも失意の末の自殺か、老衰か。」


「この部屋のカプセルの中はあの寄生虫か。このサイズなら楽に倒せそうだしいい経験値になるかな?」


カプセルの一つを手に取り、割ってみれば、中には干からびたゲジゲジの様なものが残っていた。


「まぁ、死んでるか。」


この研究室にはもう何もない。

つまり残されたのはこの先の部屋のみ。


「さて、一応構えながら行くか。」


銃を構えて扉を開く。

そうして先へ進んだショコレータの目の前に居たのは。


「……ゲンデイール?」


真っ白の髪。

赤く光る双眸。

こめかみから伸びる小さな巻き角。

美術品のような儚さを持つ表情。

ボロボロの下着を着せてあったが、下腹部に血が残っており、そこに刻まれた丸い針の跡に得体の知れなさを感じる。

やせ細り、白くくすんだ肌を持つ少女が座っていた。

一瞬あっけにとられてしまうが、日記の内容を思い出し気を引き締める。


「……ゲンデイール?」


繰り返し少女は呟いている。


「とにかく、外に連れ出せばいいのか?」


少女の手を取り、外へ連れて行こうと手を触れた途端、少女は恐ろしい速度で体当たりを仕掛けてきたのだった。


――ドン!


吹き飛んだ先は先ほどボス戦を行った広場だった。

壁に打ち付けられた状態から素早く起き上がると、アナウンスが始まる。


【SUB STORY QUEST】


【下水の姫と小さな翼】


【EVENT BOSS BATTLE】


【アイニイキルモノ】


【インセール・アンペリシュ】


【BATTLE START】



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