ep6 ”踏み潰す”

――グシャ!


――グシャ!グシャ!……グシャ!


グシャグシャグシャグシャ!


下水道に響くのは水分を含んだゴミを踏み潰すような音だった。


「……POWERがもう半分かよ……。」


体にまとわりついた敵を振り払い、しっかりと靴のカカトで潰していく。


「まぁ……“インパクト”を使う必要も無さそうだし待ってれば回復するか。」


しかし酷い目にあった。

あれだけの数の敵を倒す羽目になるとは思ってもみなかった。


「おっ……経験値が入ってるな。どうせ弱点しか攻撃しないしDEXに全部……いや、まて。まだ必要ないはずだろ?もうちょい戦ってから考えてもいいんじゃないか?」


レベルが上がると全ステータスが5増えるのはわかった。だが同時に付与される自由に振り分け可能なポイントはまだ振らずに考えたほうがいいと判断した。


「意外に落とし穴的なデメリットが出てくるかもしれないしな。」


むしろ今の戦闘で戦闘の幅が増えたことを喜ぶべきだ。


「踏み潰したら敵を倒せた……ってことは必ずしも武器で攻撃する必要もないわけだ。」


これは攻撃速度の遅い銃にとってかなり大事なことになる。

敵の大群相手には体術である程度処理できるかどうかで結果が大きく変わることもあるだろう。現に、今の戦いはそうだった。


「……よし、POWERも完全に回復したし、進むぞ、進む、進む。」


足音を立てないよう注意を払いながら道を進んでいく。

また大群を相手にするのはできるだけ避けたいからだ。


「……居るな。」


暗闇に慣れてきた目で通路の奥を見れば先ほど同様の黒い悪魔が蠢いている。


「……試してみるか。」


足元の石を拾って遠くへと投げ込むと敵はその方角へ走っていった。


「やっぱり音か。今のうちに……!」


まだ、移動していない個体がいた。

スッと近づいて踏み潰す。


【スキルを獲得しました。】


倒した途端、そんなメッセージが視界に映る。

ブゥン、と音を立ててメニューを見れば、“ストンプ”というスキルが増えていた。

初のアクティブスキル獲得に少し口元が歪む。


【初めてスキルを獲得しました。】


【RANK UP!】


【RANKが2になりました。】


続けて出てきた表示を見ていると、通路の奥から先ほどの敵が戻ってきた。


「ゲッ……確認する暇もねぇか!」


徘徊する時間が決まっているのか、ただ何も見つけられず戻ってきたのか、先ほどの集団が戻ってきたのだった。


「早速使ってやるか!“ストンプ”!」


ショコレータの両足が薄く光る。


――ダン!


足元まで走りこんできた敵を踏み潰してその光は治まる。


「RANKのせいかスキルの消費が少ないのか……POWER減ってねぇな?」


一瞬減ったPOWERがすぐに戻ったことで気兼ねなく新しいスキルを連打していく。


――ダン!グシャ!グシャ!グシャ!ダン!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!


今度は危うげなく集団を倒しきった。


「いいね……強くなった実感がある。」

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