ep2 フォールン・バンデット

ショコレータの脳裏にキャラメイクの時の記憶が蘇る。

刀の特殊技能“居合”。

納刀した状態で構え、オーラが赤くなった時に抜き放つ神速の踏み込み斬り。


「でもなぁ!」


ショコレータはそれを見た瞬間から、行動を起こしていた。

アンブロシアの壁を蹴る様に駆け上がり、空中へと飛び上がる。


「なっ!?跳んだ!?」


“居合”中の彼らはすでに赤いオーラになっていた。

アレは赤くなってから3秒で解除されるのを知っている。


「踏み込み斬りは空中の相手に当たんねえよなぁ!?」


――ガゥン!……ガゥン!


空中から二人の眉間を撃ち抜いて、“居合”を解除してしまった最後の1人に蹴りをプレゼントする。


――ガゥン!


「おいおい……もう残りたった5人だぜ?」


流し目で残りのプレイヤーを見る。

銃を構えた男が悔しそうに舌打ちしている。


「チッ……動き回って狙えねぇし、近接組が邪魔すぎる!」


「お前ら!ちゃんとやれ!中距離武器なんだからもっと攻めるチャンスあったろ!?」


2人の鞭使いが拙い鞭さばきでショコレータを狙うも、一歩左、二歩手前を打ち付ける。


「そんな使いにくそうな武器を選ぶからだ馬鹿め!」


――ガゥン!


鞭使いのそばに居た槍使いを撃ち抜く。


「……あいつ槍使いを重点的に狙ってやがる!」


「そりゃあ、一番厄介だからな!」


残りのプレイヤーを一瞥して煽る。


「これで鞭二人と銃一人。あとはバンデット、お前のその刀だけだな?」


――ガゥン!


銃使いが発砲するもその一撃はショコレータのすぐそばを通る。


「避けるまでもねぇな。こんな反動の銃、そんな震える手で撃てるかよ?」


銃使いは謂われて初めて自分が震えていることに気づいた。


――ガゥン!……ガゥン!……ガゥン!


「残りはお前だけだぜ?バンデットなんたら!」


「バンデット・ケーニッヒだ!……クソがぁ!」


破れかぶれに突撃してきたバンデットを半歩下がることで体を並行に向けてスルリと躱す。

そこから繰り出した回し蹴りはバンデットを崖下へと突き落とすものだった。


「“インパクト”……これで終わりだ。」


薄く光る銃で落下していくバンデットの眉間を睨みつける。


――ドゥン!


一瞬の閃光と共に、バンデットの体はポリゴンとなって消えるのだった。


――ガラガラガラガラ……


しかし“インパクト”の衝撃によって、崖の縁で立っていたショコレータは崩れた足場と共に地面に向けて落下していくのだった。


「おいおいおい!道が崩れるなんてそんなのありかよ!?」


岩山に3方を囲まれ、その間には巨大な門があり、上は吊り橋で光の届かない暗闇へと、ショコレータは落ちていったのだった。

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