原初之話「プロローグ」

 ここは現代でありながら魔法やあらゆる種族の生命が存在する歪みきった世界。その全ての根端はある厄災から始まった。


 遥か昔、一匹の巨大な竜が日本を、天界を焼き尽くした。全てが火の海に変わり果てようとしたその時、スサノオノミコトという者がその竜を殺し、人々を救った。これぞ古事記にも載っているとされる物語……ヤマタノオロチ伝説。


 だが人類のほとんどはその伝説を知ることも無いまま、ある日厄災竜ヤマタノオロチは人間体の精霊として生まれ変わった。それからはさすらいとして、影の如く黒服一式に身を包みながらも魔物や数多の事件から多くの命を救った。かつて己を葬った英雄スサノオノミコトのように。

 よっていつの日か世間でその存在を知られるようになり、彼はこう呼ばれた。



――『黒き英雄』――と。



 ……やがて時が経ち、そんな英雄に突如悲劇が訪れる。それも不条理極まりない、厄災竜の魂に降りかかる宿命であった――


 悪魔の笑い声が、四方八方から聞こえてくる、残酷な運命。一歩間違えれば、その先に待つのは『死』あるのみ……


 そんな運命のレール……またの名を『死の宿命』を辿りながら、因果応報に藻掻き続け、懸命に今日という地獄を生き抜いていく。それこそが、黒き英雄に果たされた使命という名の呪いであった。


 これは、罪に塗れた竜の生まれ変わりの青年による、己に降りかかる死の宿命から全てを守り抜く……不条理で満ちた物語――

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