1-6
***
カキン、カキンと
男子生徒の剣術の様子を横目で見つめながら令嬢達は黄色い声を上げる。
「ああ! やはりメルディス様は素敵ですわ!」
「王子殿下のあの身のこなし、光る汗、目が眩みそうですわっ!」
シルヴィール様とダルク・メルディス様が手合わせ中で、私も視線を向ける。確かに絵になる二人である。
騎士団長のご子息であるダルク・メルディス様と
タニアが以前、幼いシルヴィール様が並々ならぬ努力を重ね、剣術の訓練をしていたと教えてくれたことを思い出す。その後もきっと鍛錬を続けていたのだと思うと、何だか
昔を思い出し胸を熱くしていると――
「危ないっ!! 」
「き、きゃぁぁぁぁぁぁぁ―――― 」
動けなくなりその場で固まっているのは、いつぞやのピンクブロンドの男爵令嬢ピクセル・ルノー様だった。
考えるより先に身体が動いた。すぐ
「怪我はないかしら?」
そう言って
「……え? なんで?」
彼女は物凄く驚いていた。そして私の手を取ることなく、心からガッカリしたようにしょんぼりと
座り込んでいる彼女を気遣っていると、周りから「きゃあああ」と、黄色い声が上がった。
「か、格好いい……」
「まるで騎士様みたいに素敵ですわ!」
何故か女生徒達に囲まれてしまった。
「いえ、剣術を少し嗜んでおりまして。誰も怪我がなくてよかったですわ」
「まあ……!」
なんだか皆の目がときめいているように見えるのは気のせいかしら?
今まで遠巻きだった貴族令嬢達の態度がいきなり好意的に変化したのに
「ルイーゼっ! 大丈夫かいっ!?」
そんな中、剣を飛ばしてしまったらしい顔を真っ青にさせた男子生徒とシルヴィール様達が
「大丈夫ですわ。誰一人怪我はありません。しかし、剣の
「鍛錬は私とダルクがしっかりつけるから大丈夫だよ。もう二度と剣が手から離れないように……ね」
「ひ、ひえぇぇ、申し訳ございませんでしたぁぁ!」
男子生徒は泣きそうな表情で謝り
「君が無事で良かったよ。剣の前に飛び出していくから吃驚したけれど……」
「ご心配をおかけしました。でも剣術は得意ですの!」
「……そう、でも危険なことはしないでね」
婚約者として心配しつつも
「はい。
「うん。約束だよ。学園側にも、生徒を危険に
何故か、背筋が寒い気がした。先生、頑張ってくださいねと
「えーっ、危険から護ってもらえるラブハプニングイベントなのにどうして!? 悪役令嬢ってあんなに動けたっけ?
!?」
後ろで座り込んだまま、ピクセル・ルノー様はボソボソと何かを言っていた。
*****
あの剣が飛んできたのを回避した件以来、私は女生徒に好意的に受け入れられるようになった。
鍛錬にも一緒に参加したいと申し出てくれる女生徒達もちらほら出てきて、ルナリア様もジュリア様も後から参加した令嬢達に
まあ、新たに参加したご令嬢は一回参加して以降は『鍛錬よりも応援に回ります!』と言われることの方が多いのだけれども。
ルナリア様とジュリア様は噂話や悪口を言う余裕がなくなってきたのか、彼女達から負の感情を聞くことはない。
身体も
希望に満ち溢れていると――
「なあ、ずっと気になってたんだけど、あんたら何してんだ?」
『攻略対象 騎士団長の息子(猫耳に弱い)』を頭の上に浮かべたダルク・メルディス様が話しかけてきた。
「まあ、ごきげんよう。メルディス様。鍛錬ですわ。悪から善へなるために、彼女達と鍛錬してますの」
「……。よくわからないけど、あれじゃ逆に身体
さすが、将来の騎士団長候補ですわね!
猫耳を愛する変態さんですが……、ここは助言を頂きたいところですわ。
「そうですか。ところで猫耳はどうしてお好きなんですか?」
あ……、自然と一番気になっていたことが口から出てしまった。
「ええっっっっ!?」
ダルク・メルディス様、驚いてますね。
ごめんなさい。だって気になりすぎるんですもの。
「そ、そうか……、『
シルヴィール様の側近である彼には私の異能である『透視の能力』は知られているようだ。
「協力、していただけますか? 彼女達の鍛錬に」
「……わかった……」
ダルク・メルディス様は諦めたように
こうして私達の鍛錬に、優秀なアドバイザーであるダルク・メルディス様が加わった。
「それで、今はどんなトレーニングを行ってるんだ?」
「走り込みに、護身術
得意げに言い切った私にダルク・メルディス様は深いため息を吐いた。
「なんだその過密訓練は……。一気に色々しても筋肉がバラバラに鍛えられてバランスが悪くなるぞ。今度負荷が多すぎないバランスの取れたメニューを作ってやる」
「「ありがとうございますぅぅ!」」
いつの間にやってきたのか、ルナリア様とジュリア様が瞳を
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