②
***
鍛錬の日々が続いたある日、ジュノバン伯爵
心当たりのないお父様は『何か悪いことでもしたのか!?』と
(ルイーゼの能力については誰にも
お父様は
「よく来てくれたな、ジュノバン伯爵とご令嬢よ」
「はっ。ありがたき幸せに存じます」
「ジュノバン伯爵が娘、ルイーゼと申します、国王陛下……」
当たり前だが、国王と対面するなんて初めてで、緊張して足がブルブルと
「
「さて、そなたの娘について興味深い話を聞いたのだが……どうやら異能を持っているそうだな?」
何故陛下がそのことを!?
私は
「はっ! も、申し訳ございません。
「よい。どうやら、他者の秘密などがわかるそうだな? そんな能力は聞いたこともない」
そう言って、国王陛下は私に
そうだ、相手は国王陛下。ジュノバン伯爵家始まって以来の
このお方は、あまねく貴族の情報を
絶対に
「何がどう見えるのか、説明してもらおう。……シルヴィール!」
国王陛下に呼ばれ姿を現したのは、第二王子であるシルヴィール・ナイル
我がナイル王国には二人の王子がいる。第一王子のシュナイザー殿下と四つ年が
銀色の星空のような美しい
「さあ、ジュノバン伯爵令嬢には、シルヴィールの文字を見てもらおうか。我が
私も本来ならばそのキラキラした容姿にうっとりするところかもしれない。しかし私の視線は、シルヴィール殿下の頭の上に浮かぶ文字に
『
その文字にポカンと口を開けてしまった。
「―――― ちょろい?」
正直に口に出してしまい、我に返った私は自分の失態に青ざめ口元を手で押さえた。
シルヴィール殿下は
「ももももも、申し訳ございませんっ!!」
私もお父様に
「伯爵も面を上げてください。私は気にしていません。それよりも……なるほど。ジュノバン伯爵令嬢は
その瞳は何か面白い
「私の頭の上には『ちょろい』って浮かんでいるのかな?」
恐る恐るコクリと頷くと、更にシルヴィール殿下は私に近付いてきた。
「ちょろいってどういうこと?」
「ちょ、『ちょろい』としか書いてないので、詳細は……」
「他には何か書いてある?」
――『攻略対象』の意味はわからないし、何だか
噓にはならない
「えっと……『第二王子』と……」
「ふぅん。その人の立場や役職と、その他に
「そのようです」
「ちょろいの他には、特徴は見えないの?」
「……いつも一つしか書かれていません」
「そんなに質問
そう言われ、国王陛下の
じっと宰相様の頭の上を見ると――『宰相(髪の毛が
心の底から言いにくい。見た目はふさふさだからこそ、言いにくい。
モジモジする私に、シルヴィール殿下が気付いてくれ、そっと耳打ちするように
「『宰相(髪の毛が薄い)』と書かれています」
「……ふふ、それは言えないね。父上、ジュノバン伯爵令嬢の見えている文字に恐らく
シルヴィール殿下の言葉に宰相様はぎょっとした表情になる。
シルヴィール殿下に耳打ちされ、真っ青な顔で頷いている。……宰相様の秘密は絶対に公言しないと
「ほう。シルヴィールの『ちょろい』は検証しきれんが、見えるというのは本当のようだな。これはひょっとすると、秘密を
そう言って、私とシルヴィール殿下だけ別室に案内された。
当然だけれど、国の絶対的な存在である陛下の秘密を暴くなど、誰かが聞いているかもしれない場でしたら
だから国王陛下も「私の文字はなんだ?」とは聞かなかったのだ。
では、シルヴィール殿下の文字は何故この場で見ても良かったのだろう――?
考えに耽っているうちに、お茶の準備がされ、シルヴィール殿下の指示で従者も下げられ、二人だけのティータイムが始まってしまった。
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