最終話 咆哮(その①)

 それからも、蟇田はつきまとい続けた。俺の何が気にいったのかわからなかったが、何かにつけては側によってき、特異な〝力〟を見せつけてきた。


 それでも、俺は信じなかった。頑なに、拒み続けた。信じれば、今まで培ってきたものが根底から覆されてしまう気がしたからだった。


    ※ 


 某日。


 俺は、池袋の某家電量販店にいた。休日なのにどこに行くあてもなく、何となくぶらぶらと、TV売場を眺め歩いていた。


 と、並べられていたTVが番組を中断し、一斉に臨時ニュースを流しはじめた。


 俺は驚愕した。TV画面には異様な、それでいて個人的には見慣れた〝もの〟が映っていたからだった。


「あれは! あれはいったい何でしょうか! 巨大な! 巨大な人のかたちをした〝もの〟が! 季節外れの猛吹雪のなか、私の眼前に立っています!」


 興奮気味の女性レポーターの言葉どおり、画面には巨大な人型がロングショットで映っていた。風景から渋谷だとわかった。宮益坂下辺りから撮っているのだろう、山手線のある高架橋の向こう、道玄坂の109ビル近くに屹立していた。


「人のかたちをしていますが、輪郭はうっすらと定かではありません! まるで、雲や霧が人のかたちを取っているようです! 顔らしきところに輝いている、ふたつの光は眼でしょうか! 緑色に、燃えるように輝いています!」


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