第2話 凌辱(その②)

 奴が耳打ちしてきた。


「えっ?」


 眠たげな眼で、奴は女子高生を凝視していた。視線に気づいた女子高生が、怪訝そうに顔を向けた。視線が合った瞬間、ゲシュタルト崩壊を起こしたように、その表情が崩れた。


 表情はすぐに戻ったが、女子高生はその場に立ちつくしていた。


「ちょっと……振り向いてみてください」


 しばらくして、蟇田が囁いてきた。


 振り向くと、先程の女子高生が後ろをついてきていた。怪訝そうな表情のまま、何故に自分がくたびれた中年男たちの後をついていくのかわからない、といった顔をしていた。


 奴を先頭に、俺、女子高生という順番で、駅から反対の方向へと歩いていく。


 早朝のために人通りの少ない、雑居ビルの建ち並ぶ区域に、いつしか俺たちは入りこんでいた。


 蟇田はその中の一角、ビルとビルの間にある、狭い空隙のような空き地に俺たちを連れこんだ。


 空き地は一メートルの横幅もない狭さだった。が、奥行きは七、八メートルぐらいあった。俗に言う、ウナギの寝床というヤツだった。地面は雑草が繁茂し、投げ捨てられた空き缶や菓子袋などのゴミ類が散乱していた。


 雑居ビルの並ぶこの辺りは何度も通っていたが、狭間にこんな場所があるとは全く知らなかった。


 するといきなり、蟇田はおのれのベルトに手をかけると、薄汚れたジーンズを膝までずり下ろした。

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