第2話 凌辱(その①)
結局、権堂は救急車で搬送された。が、俺たち派遣はいつもと変わりない、残業代の発生しない午前六時二十五分ぎりぎりまで、きっちりと働かされた。
勤務終了後、最寄り駅に到着したハイエースから降ろされ、疲れた身体を引きずって歩きだそうとした矢先、
「一緒に、お茶でもどうですかねぇ」
蟇田が声をかけてきた。奴も同乗していたのだ。
同じハイエースに乗っていた同僚らが、俺と蟇田を意味ありげな眼で見やりながら通りすぎていった。親しい間柄に見られた気がして、厭な気分になった。
そんな俺の気持ちなど気にもしない素振りで、奴はすたすたと歩きだした。俺も断ればいいものを、素直に後をついていってしまった。
「――どうです、ボクの〝力〟。信じていただけましたかねぇ?」
「偶然だ、偶然。そうに決まってる」
駅前の歩道を並んで歩きながら――蟇田の言葉を切って捨てた。
確かにあの時は驚いたが、冷静になって考えてみたら、信じられるわけがなかった。何でも思いどおりにできる〝力〟? 権堂はたまたま休憩時間にでも何か悪いものを食ったのだ。そして、これまたタイミングよく腹痛に見舞われたのだ。偶然に偶然が重なっただけなのだ。
「沢渡サン。それは物質主義に凝り固まった人間が超常現象を目撃した際に見せる、もっとも典型的な反応ですねぇ」
ちょうどそこへ、通学鞄をさげた女子高生が前から歩いてきた。肩にかかるかかからないかのセミロングの黒髪で、丸顔にぱっちりした眼の、かわいいタイプだった。清楚な雰囲気だったが、それでいて胸は大きめなのが、セーラー服越しでもわかった。
ロリコン趣味があるわけではないのだが、何故かここ数年、街で女子高生を見かけると、ついつい眼で追ってしまうのだった。
「では、別の証拠を見せてあげましょうか? 例えば……あの女の子で」
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