第1話 奴(その④)

 「⁉ ……く、苦っ⁉」


 突然、権堂がおのれの腹を庇いだした。胃のあたりを押さえながら、〝お立ち台〟から崩れ落ちていった⁉


 最初に異変に気づいたのは、権堂の近くにいた小コンベアーの派遣たちだった。


「⁉ おい! 誰か、社員を!」


「先にコンベアーを止めろ!」


 場内は騒然となった。多くの荷物を載せて流れていた大ベルトコンベアーが急停止され、派遣の誰かが奥の事務所から正社員を三、四人連れてきた。


 正社員らによって担ぎあげられた権堂が、苦悶の表情のまま運ばれていく。


 ふと、視線を感じて振り返った。


 五基ほど後の小コンベアーの傍らに佇んでいる、蟇田だった。


 半開きの眠たげな眼で、じっと俺を見ていた。


 


 

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