第2話 割れる天井(その②)
無論、その場の皆が悪いわけではない。
僕の資質、というか持って生まれた性分の所為なのか、昔から学校や会社、その他どの組織や集団に属しても、いつもそこに染まりきれないのだった。いつの間にか心理的な距離を感じるようになり、必ず浮きあがってしまうのだった。
何処にいても何をしても、そこを自分の居場所だと感じられない違和感。異物感。疎外感。
帰属意識が希薄なのか。やはり、幼いころのあの〝癖〟が遠因なのか。
誰からも話しかけられず、こちらから話しかけても会話は弾まない。実際に疎外されてるわけではないのだろうが、いや、そう思いたいのだが、僕の眼の前のグラスはさっきからずっと空っぽのままで誰も
ドンドコドンドコ、ドンドコ……。
手持ちぶさたを誤魔化すのも限界がきてしまった。
もう、帰りたくなっていた。
だが、先に座を抜ける、適当な理由が思いつかなかった。
ビールを急ピッチで飲んだためか、強い尿意を覚えていた。隣席の大学生風の青年に、小声でトイレへ行く旨を伝えて席を立つ。用を足しながら、上手い言いわけを考えよう。
「愉しんでますか?」
洗った手をハンカチで拭きつつトイレから出てきた時、いきなり声をかけられた。結局、上手い言いわけが思いつかず、どうしたものかと頭を悩ましていたところだったので、ちょっと虚を突かれてしまった。
声の主は――一人の若い女性だった。
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