第8話
今日は引っ越してきた翌日以来の休み。
アラームをかけていなかったから、起きたのは十時前だった。
ゆっくり眠れたから、少し頭もしゃっきりしている。
普段、夜中に少し寝ている程度の生活だからだという自覚はある。
思い切って二回洗濯をし、洗濯物を干す。
しかし……、二回目の洗濯の時は、ハンガーが足りない。
後で百均に行こう……。
私は内心苦笑いした。
それから、部屋の中をフローリング用のモップをかける。
タオルの糸くずというか、毛羽だってしまったくずみたいなものがポトポトと床に落ちているから、一掃できてすっきりした。
ハウスダストアレルギーがあるから、日課として一日一階はモップをかけるようにはしているのだが、どうしても取り切れない部分は否めない。
だが、やらないよりはマシだと思う。
その後、着替えて買い出しに行く。
徒歩数分のスーパーに行くのも、散歩気分になるから気分転換になっていた。
今度の休みには、本屋まで行ってみたいと思う。
だが、一時間近くかかる……、そんなに時間をかけたくないとも思ってしまう。
実家から前職の工場まで、徒歩で30分前後、市立図書館でも40分程度。
前職の工場のある場所を曲がらずに、直線の延長線上に図書館があった。
時折、定時退勤できたときには図書館に立ち寄っている日々だった。
もっとも、退職間際には定時で帰れる日はなく、12時間拘束であったが。
それよりも距離的に少し遠いのである。
「本当、もう少し近かったら良いのに……。まあ、良いんだけど」
実は、二月で寮を出ることは自分と家族の間では確定事項だ。
というのも、二月の終わりに故郷の岐阜に帰ることを確定した。
元々少々人間不信気味だったのだが、上司にはクレームになる前に相談してと言われ、相談したら結局突っぱねられるかたらい回し、不意なボディタッチが何度もあって、3度目までなら我慢できる自信はあったが、それ以上にやられるのだから信用できないし、岐阜に帰って、次へと態勢を整えておきたいと心底思う。
あとは、派遣会社に申し立てをし、二月半ばにいくつかに分けて、荷物を実家に返送すれば良い。
私は、買い物をしながら小さくため息が出る。
やはり年始、物価が高い……。
だが、ささやかな贅沢に「花びら餅」を買った。
あとは、なるべく安い料理の材料を買い、調味料をいくつか買った。
めんつゆに、すき焼きのたれ、ごま油にナツメグ……。
めんつゆはかなり使えるし、母がすき焼きのたれを使って作る簡単料理をいくつか教えてくれている。
ごま油は和風料理に仕えるし、ナツメグは冷凍しているミンチを使う時に使う。
だから必要だと自分でも判断できた。
しかし、会計は過去最高額だった……。
まあ、得ようと思うのだから仕方ない。
牛すじが安ければ、買えばよかった……。
私はひそかに後悔した。
冷凍しておけば、好きな時に牛すじカレーが作れるからだ。
だが、少し働けば次の休日。
牛筋を茹でるのは半日以上かかるから、次の休みにしよう。
密かにそう思った。
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