第7話
お正月。
昨日は3時半に眠ったというのに、6時のアラームでちゃんと起きれたあたり、成長だろうと密かに思う。
寝起きは、元々本当に悪い。
時々、アラームが鳴っていても、そのまま眠っていることは少なくなかった。
実家にいると、親が起こしてくれるという期待があるからだろうと思う。
洗濯機も終わっているから、タオル類を干す。
お雑煮は簡素なものを作った。
具は、ニンジンの切れ端、しゃぶしゃぶ用の餅をくりぬいた物、三つ葉、わかめ、ネギだ。
そして、お煮しめとして作っておいた筑前煮を温める。
お茶に、安芸高田の特産品、えびす茶をいただく。
正月だが、私は出勤である。
だが、食事は正月を堪能した気分だ。
先輩には、朝をちゃんと食べられたかと聞かれた。
筑前煮とお雑煮を食べてきたと話すと、大層驚かれた。
「実家から冷凍で送ってもらったとか?」
「手作りです」
「しっかりしてるわ……」
呆れたように言われたが、元々料理は多少する。
厨房スタッフの方々が興味深そうに話を聞いているのを見た。
「ちなみに、筑前煮は昨日帰ってお風呂に入ってそれから作りました」
私は笑顔で言う。
ニンジンの飾り切りは久しぶりだったから、本当に苦戦した。
だが、やり始めると案外楽しい。
細かい作業自体は嫌いじゃない。
むしろ、そこそこ好きな方だ。
不器用なので、成果は良いとは言えないが。
それでも、自分が食べるだけだからまあいいか、と思っている。
中抜けで休憩には行かせてもらった。
だが、時間は二時間程度。
いつもの半分程度の時間だ。
私は大急ぎで部屋に戻り、エコバッグを取ってコンビニに急いだ。
買っておきたいものがあったからだ。
コンビニに着くまでものの数分だが、やはり思う。
実家の方面を今まで田舎と思っていたが、ここはそれ以上に何もない……。
「本屋さん行きたい……」
私はそっと周りを見渡す。
近場に本屋などなかった。
元々読書家な性分ではあるので、持ってきた小説の本はすぐ読み切ってしまいそうでまだ手を付けずにいる。
電子書籍を検討したが、正直あの紙のページをめくる感覚が大好きなので、電子書籍はネットで気になるマンガが出た時だけになることが、自分の中で確定した。
「新しい本も欲しい……。早く実家に帰りたい……」
実家からは、徒歩5分以内に大型書店が二軒ある。
何もない、と言ってはいたが、ライフラインは凄く充実していたな、と思い知った。
今度リゾート地で働くときは……。
近場で本屋さんとスーパーと百均と薬局があるか確認しよう。
それなら、ライフラインも充実していると思う。
私はひそかにそう思った。
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