第4話

朝。

起きて早々、パンを解凍して焼いた。

パンは、職場で少しいただいたものだ。

バターと一緒に食べると、やはり美味しい!


「サラダが無くなっちゃったから、買い足しておかないと」

コールスローサラダと牛乳が冷蔵庫にない。

卵はあと数日分ある。


「今日の仕事の休憩中に買いに行っておかないと」

休憩は、いわゆる中抜け。

たっぷりと4時間ほどあるから、その間に家事、買い出しをするようにしている。


寒いから、とコーンポタージュの粉末を溶かして飲む。

「コンソメも欲しいな……。さすがに毎日コンポタ一択は飽きる……」

我儘だな、と思いながらも私は苦笑いする。

たまねぎは肉じゃがで一つ使ったが、まだ二つばかり残っている。

オニオンコンソメスープ程度なら、案外すぐにできる。

たまねぎの薄切りも、冷凍しておかねば。

朝の仕事前にそんなことを思った。


中抜け休憩中。

実家の親から電話がかかってきた。

元気でやっているのか?

うまくやっていけそうか?

電話越しで両親の声を聞く。

それだけで、より一層実家に帰りたくなった。


離れてわかる。

両親の事、ケンカばっかりだったけど本当はとっても大好きだったんだと。

電話でも、声に安堵してつい涙が出た。

『もう、泣かないの! 自分で決めたことでしょう? 契機が終わったらいつだって帰ってきたって良いから、今は頑張りなさい』

母に電話越しで注意される。

二月末になれば、進退を問われる。

進むと答えれば、このまま今の自宅から仕事をすることになる。

退くと答えれば、実家に帰ることになる。


進むと決めたら、両親を招待するという夢はある。

仕事があるから、生活もできる。

だが、家族と友人、誰にも会うことができない。

そして何より、実家は遠方で帰宅も一日がかりだから、簡単には帰省できない。


退くと決めたら、両親と暮らすこともできるし、友人にもたくさん会える。

仕事は探さなくてはならないが……。

もし薬局であれば、経験を生かして仕事することもできるだろう。


まだまだ進退を問われるのは先だけど……。

私は退く方向を前向きに考え始めた。

また一人暮らしをしたいというのなら、今度は実家から近い場所にしよう。

いつでも顔を出せるように。

私は心からそう思った。

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