一 迷子と勅命①
まず口火を切るのは一家の主である父、
「今日は朝から
朝食の最中も
「ククク……、
次に、母の
「わたくしはいつもどおり、
「
続いた静容の言葉に、
「え、俺っすか。楊様って、このまえのお金持ちのおばさまっすよね」
ぞんざいな口調の彼は周家の数少ない使用人である。道を歩けば誰もが振り返り
「おばさまではなく、おねえさまとお呼びなさい。おまえのことをお気に
「ええー。いかがわしい仕事なら
「何を
「お友達のご婦人方を呼ぶので茶会に
「仕方ないっすね……。まあ褒美が出るんならいくらでもしゃべり
「うむ、それでこそ周家の使用人である!」
「あ、でもそうなるとお
思い出したように隼が言い、父と母の視線が向く。
「そういえばやけに静かね、
「腹でも
口々に言われ、翠鈴は
下町で細々と営む商家に生まれ、広く商いの手を
全員がお金大好き、仕事も
「寝るなんてとんでもない! お
商売道具である
「さっき占ったんだけど、今日の
「戴様って、あの大金持ちの?」
「そういえば……ご子息が家出をなさったとか小耳に
隼と母が何気なさそうに言ったとたん、父の顔が輝いた。
「ほう! さりげなく街一番の
いきなり金目当て扱いされ、翠鈴は
「失礼ね! わたしはそんな不純な動機で仕事しないわ。そりゃ確かにお金は大事よ。でも世の中それだけじゃないでしょ。相手がお金持ちでもそうでなくても関係ないわ」
「わかっておるわかっておる。情けは人のためならず。助けた
「搾り取りません! なんてことを言うのよ。情けは人の
人でなし発言を連発する父に、翠鈴はますます目をむいた。
「戴様のご子息のことはわたしも聞いたわ。お母君はとてもお
「なっ……、わしの娘ともあろう者が、なんという甘えん
「わたしはお金儲けのために占いをしてるんじゃありません! そもそも商人じゃないし」
「ゆくゆくは大豪商になる予定の周家の
「それは、まだやるとは決まってないし……。わ、わたしは今困っている人を助けたいの。悲しんだり苦しんだりしてる人がいるって聞いただけで夜も
「出た。善行の
ぼそりと言った隼を、熱弁していた翠鈴は、きっ、と見る。
「権化じゃないわ。一日一回は善行を積まないと気が済まないだけ。せいぜい善行の虫よ」
「はいはい。そんじゃ善行の虫のお嬢様」
軽くいなしつつも、隼が
「今日は俺、護衛につけないっすよ。一人じゃ危ないし別の日にしたらどうっすか?」
使用人とはいえ、生まれた時から知っている彼は幼なじみのようなものだ。
「
「いや……、あんたが気づいてないだけで世の中悪者だらけなんすよ……」
隼はなおも気になる様子でぼやいたが、やる気になっていた翠鈴は
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