序 太子の初恋
かつて地上には、
天界を治める
神仙界に上った者たちは伝説となり、
神仙は山に
それでも、境界を
里へ下りて人を助ける者。その逆に悪さをする者。
『おまえ、
貴人の
しかし境界を越えるのは神仙ばかりではなかった。
神を
そんな人間たちが王朝の運命を左右し、皇宮を
● ● ●
──太子が乱心した。
その発言を聞いた時、朝議の場にいた
「……た、太子よ。それは……もちろん、
そう思った筆頭であろう
彼だけではない。皇后も、居並ぶ
やがて、紗幕
「本気で申しております。私には忘れられない初恋の人がいるのです。ですから
二度目となる宣言に、その場はいよいよざわめいた。やはり聞き違いではなかったと判明したのである。
「お、
「そ、そうだぞ。そなたもこの国の太子なら定めをわかっておろう。先日公主との
さらに動揺した
どんな答えが返ってくるかと、一同は
皇帝の
その思いが届いたのかどうか。くぐもった声がため息まじりに返ってきた。
「……わかりました。采国のためです。縁談はお受けします」
ぱあっと一同の顔が
「ただし条件があります。それが
ぎょっと一同の顔が引きつった。
「条件とな? 一体、何をせよというのだ?」
皇帝の問いに、待ってましたとばかりに答えがあった。
「彼女に──初恋の人にどうしても会いたいのです。一目でいい。それさえ叶えば心残りはありません。何も言わずに煌の公主と
「……わ、わかった。そこまで言うならば叶えてやろう。して、その
「それはわかりません。
あっさりとかわされ、皇帝はがくりと
「太子よ……。乱心するのも
さすがに皇帝は
空気が張り
「──忘れてはおりません。皇帝陛下」
ふいに、さっと紗幕が引かれた。
休んでいたはずの太子が
そして──全員があんぐりと口を開けた。
「彼女と……
「たたたたた太子よ、そなた、その顔は……っ」
そこにいたのはいつもの
いや、太子なのだろう。……顔が
やけに声がくぐもっていたのはこのせいか──と
やはり乱心としか思えないいでたちを見て舌も回らぬ父に、太子が
「私は正気です、皇帝陛下」
ふーっ、と皇后が失神した。
やっと事の重大さに気づいた彼は、ただちに
「さ……捜せっ、捜すのだ! 草の根分けてもその萌春とやらを見つけてまいれーっ!!」
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