一章 運命の日④
「いちかばちかで飛び出してみたけど、外が森だなんてツイてるわ!」
ニーナは雪の積もった針葉樹の森を枝から枝へと飛び渡り、真っ
冷気に肺がしめつけられる。
(あの
ニーナが住んでいた森からはるか東へ行った場所に、白の
ここに来るまでの道中、一度だけ、輿の進行が止まったことがあった。続いて、重い
同時に、逃げるための行動を開始した。森での生活に適した
この扉の外に出たら、そこがどんな場所でも構わない。けっして足を止めることなく進むのだ。
巣から飛び立つ
──行こう、と勢いよく扉を
目の前に広がっていたのは、巨大な針葉樹の森だった。
柱のように
これならいける。
絶対に逃げ切れる。
森の中で、ニーナに
──そして、現状、見事に
(それにしても、あの人達は本当に獣人だったのかしら? 服に
ニーナを
〝獣人〟──美しい人間の姿をしながらも、獣の耳と
自分は今、そんな怪物が実在し、
(
深呼吸をひとつ。息を整えて、ふたたび枝の上を走り出す。相手は
(今なら、
しかし、ニーナが次の枝に飛び渡ったとき、予期していなかったことが起きた。
唐突に、森の景色が途切れ、視界が開けたのだ。
「……っ! こ、こは……」
──それは、ニーナが長い間ずっと夢に見ていた、森の外の世界にしかない光景だった。
「凄いわ、なんて、
思わず、その美しさに吸い寄せられた。高鳴る
こんな雪原に足を
けれど、生まれてずっと
あの場所へ行ってみたい。
子どもの
「あ……っ!?」
だが、雪原に
雪原と同じ白銀の毛並みをした、信じられないほど巨大な
その堂々たる姿に、何度も
白銀の狼に身を変じ、逃げる少女を
想像上のものでしかなかった存在に、目の前の巨狼がぴったりと重なった
光は狼を包み込み、
「な、に……?」
金糸の
人に似て非なるもの。
この青年は、
彼は光る瞳でニーナを見つめ、形の良い
「──私は、獣人の国ウルズガンドの王、ヴォルガ・フェンルズ・ウルズガンド。美しき人間の
彼がそうなのかと
自分を喰らおうとしている相手と、
「──ふざけないで!! なにが歓迎よ、
ザッ、と背後の茂みが大きく揺れる。
「今だ、捕らえろ!」
しまったと思ったときにはすでに
「は、放して……放してよっ!!」
長年の夢が叶ったことで、
それでもまだ、最後の希望を信じて抗う。
「放してって言ってるじゃないっ!!」
結んでいた髪がほどけるほど、なりふり構わず暴れるニーナの側にヴォルガが
「
「やれるものなら、やってみなさいよ! ここまで必死に追ってくるんだもの、貴方には私が必要なんでしょう!? そんなことをしたら、今度こそ谷に飛び込んで死んでやるから!! ──ぐっ!!」
雪の地面に無理矢理に頭を押さえつけられ、
ブーツが
──あんまりじゃないか。
どんなに
そんな運命、受け入れてたまるものか。
「私は、絶対に諦めないわ! たとえ脚を失っても、必ず逃げ切ってみせる……っ!!」
ひたり、と
ガチャン、と金属音が
──
恐怖と
「……連れていけ」
放心した頭で見つめる先で、ヴォルガは
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