遥斗と義父は、神職の装束のまま二手に分かれ、顔色を変え梛様を探し神社を出て町に走った。

まだ時間は朝の6時代で人通りは少ないし、長く大きな商店街や周辺の店々もまだ開いていない。

（何考えてんだ！あんな目立つ見た目で目立つ格好で！）

遥斗は、不遜だと思いながらも、梛様に対して呆れと微かな怒りを覚えた。

しかし、遥斗が探して5分で梛様は見つかった。

しかも、この辺りでも老舗の喫茶店のおばあちゃんと話しをしていて、遥斗は血の気が引いた。

「梛様！梛様！見付けましたよ！さぁ、神社へ帰りましょう！」

遥斗はそう言いながら、慌てながら梛様の狩衣の袖を引っ張った。

「おお！やっと来たか、遥斗！」

梛様は、一切悪びれもしない。

すると、店前を箒で掃いていた喫茶店のおばあちゃんが、ニコニコして言った。

「あら…遥斗ちゃん、おはよう。てっきりこのキレイなお兄さん観光の外人さんだと思って、グッドモーニング！って言ったら違ってたのよ。三五八さん所のお知り合い？」

「はっ、はい…そのぉ…ちか…いや、遠い親戚でして…今ちょっと神社に滞在中でして…」

遥斗は、なんとか誤魔化そうと必死で続けて、又梛様の袖を引っ張った。

「梛様！さぁ、帰りましょう！」

しかし、梛様はシレっと言った。

「いや…これからここで、モーニングとやらを食べる。モーニングとやらが美味しいと今聞いた」

「はぁ？！何をおっしゃってるんですか？さぁ、お店が開くまでまだ時間ありますから帰りますよ！」

遥斗の額から、冷や汗が滲む。

それなのに、何も事情を知らないおばあちゃんは親切だった。

「いいのよ、ちょっと早いけど、特別に二人に今すぐモーニングの用意するから

、遥斗ちゃんも、もう夏休みでしょ？二人一緒に食べて行きなさいな」

「えっ！それは！」

遥斗が断ろうとしたら、梛様が遮った。

「よし！遥斗。モーニングとやらを食べるぞ！絶対に食べる。食べるまで絶対に帰らん！」

（何？何なん？この神様？）

遥斗は、実の父が大阪出身だったので教わった大阪弁で突っ込み、断崖絶壁から下に突き落とされた気分だった。

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