第6話 ゲームは親友の中に入りますか

 わたしの名前は佐藤つぐみ、引きこもりの中二の女子だ。


 今は高校生をしている。そう、完全ヒューマノイドをVRゴーグルで操作して高校生になったのだ。


 家に一年くらいの引きこもり生活でネットの海で完全ヒューマノイドの搭乗者の募集を見てゲーム感覚で応募したのだ。このVRゴーグルは脳内パレスがどうのこうので完全ヒューマノイドを操作するのだ。


 とにかく、完全ヒューマノイドは動くのであった。


 そう、友情度を上げるのはとかく難しい。親友候補の撫子さんは時々すごく寂しそうな眼をする。そういう時はそっとしておくのか、甘えるのか迷うのである。今日も近づくなオーラを出して、撫子さんは自分の席から外を見ている。


「えへへへ、仲間に入れて」


 一瞬の殺気の後、撫子さんはあたふたする。


「あ、ぁ、一緒に空を見るのだな」

「一階の中庭のベンチから見ようよ」


 階段を降る途中で沈黙が続く。こんな雰囲気の時は自分が中学生の引きこもりであることを打ち明けたくなる。


「あ、あの……。歩くスピードが速いよ」


 この言葉に撫子さんは顔が青くなり。


「ゴ、ゴメン……」


 そう、撫子さんはドMなのである。わたしはそんな撫子さんの首筋を舐めたくなる。でも、撫子さんは百合の趣味は無いらしい。


 わたしは撫子さんならと頬を赤らめる。この妄想もキスが限界で、それ以上はなしかな。そんな事を思いながら一緒に歩くのであった。


 中庭のベンチに着くと二人で空を見る。わたしはスマホ取り出して今を残す。撫子さんは首を傾げている。


「わたしはね、今を残したいの……」


 そして、わたしは撫子さんに今の写真を送る。撫子さんは納得した様子でわたしの空を受け取る。何時もこんな調子で撫子さんとの時間が過ぎる。


 おっと、数学の課題が解からないのであった。基本、独学で高校生の授業の内容を覚えたが、やはり、教えて貰った方が覚えやすい。


「ねえ、図書室に移動して勉強を教えて貰いたいな」


 撫子さんはデレた様子で快諾する。きっと、わたしは甘えるのが得意なのであろう。わたしは中庭のベンチから高い空の雲を掴もうとする。


「つぐみには勝てない。あの空を見ても昔の事ばかりで、つぐみは今を生きている、わたしは友達失格だ」


 そう言うと撫子さんはベンチから立ち上がる。わたしは今度の選択は沈黙を選んでみた。


「ひ、ひ、ひ、否定してくれないの?」


 やはり、沈黙で正解であった。


 ホント、友達って難しい。それでいて撫子さんはドMときている。子供の様に純粋とも考えられるが、バカとさえ言える。


「友達って自然なモノでしょ」


 色々迷ったがこの言葉にしてみた。わたしは立ち上がり、撫子さんの手を掴む。


「今は、勉強を教えて欲しいな」

「あ、ぁ……」


 それは何処から見ても普通の友達であった。

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