第5話 総合スーパー
つぐみの誕生日が近いので、わたしは総合スーパーの可愛い系の雑貨店にいた。少し子供っぽいかもしれないが、この店に決めたのだ。キラキラのヘアーゴムにアクセサリ、女の子が好みそうな物が沢山ある。
うん?
コアラのマグカップを見つける。予算的でも丁度いい価格であった。わたしはマグカップをレジに持って行く。
なんで、こんなに恥ずかしいのだ?
ぎこちない、わたしは、まるで不審者である。
わたしは『売っているモノを買ってなにが悪い』と自分に言い聞かせ歩くのであった。
「いらっしゃいませ」
「ぷぷ、プレゼントラッピングできますか?」
「はい、少々お待ち下さい」
い、言えた、わたしは一つ大人になったのだ。そして、綺麗にラッピングされたマグカップを買うのであった。
あー緊張した、普段、こんな女子の店など来ないからな。
おっと、二階のティーン向けファッションショップにも寄っていこう。
なんだ!このデニムの短パンは!ファッションは子供向けの方が大胆である。せっかくの夏だ、わたしは薄い長袖を買う。
時々、ファッションって何だろうと思うことがある。住宅街で見かける女性は宗教衣装の様に顔から頭を隠して歩いている人がいる。隠すならシミができても関係ないと思うのであった。
さて、あの極短いデニムの短パンのサイズを見てみる。
まるで、勇者一人で魔王の城に乗り込む気分だ。
数日後。
わたしはまた総合スーパーに来ていた。つぐみの誕生日を過ごす為だ。先ずはWバーガーでランチだ。塩辛いポテトを食べながら、誕生日プレゼントを渡すタイミングを長考していた。
「じゃ、わたし次はカプセルトイのコーナーに行きたい」
つぐみは食べ終わると次の目的地を言う。ダメだ、誕生日プレゼントを渡せるタイミングは今だ!わたしはブルブル震えながらプレゼントラッピングされたコアラのマグカップを渡す。
「えー嬉しい、中身はなにかな?」
つぐみはプレゼントラッピングを開ける。
「うぁー、コアラだよ」
ふーう、よかった、コアラのマグカップを喜んでいる。内心はかなり自虐的になっていた。その思いは簡単には言い表すことが難しいほどだ。
「は~あ」
わたしは人生で一番大きな安堵のため息を吐く。とにかく、カプセルトイのコーナーに向かう。
「わたしの欲しいのは、『考えるネコ』だよ」
それは、今、話題の芸術ネコシリーズである。その『考えるネコ』はネコが考えるポーズをしたものであり。
レアネコの中に入る。
つぐみは小銭を持って芸術ネコの前に行くとガチャリと回す。
「『ムンクなネコ』だよ」と言い、また、ガチャリと回す
「また、『ムンクなネコ』だと!」
「もう一回、『ムンクなネコ』だよ」が出てくる。
そう、ネコがヒィーしているだけの『ムンクなネコ』であった。
「どれ、わたしが回そう」
ガチャリ。
出てきたのは『考えるネコ』であった。
「欲しい?」
つぐみに聞くと静かに頷く。
「なら、『ムンクなネコ』と交換だ」
「それでもいいけど、わたし、撫子とおそろいがいい」
要は『考えるネコ』がもう一つ欲しいらしい。つぐみは千円を崩そうとしている。わたしは止めに入り。
「これが最後だ」と言い、小銭をだす。
ガチャリ。
出たのは、ゴッホなネコであった。ゴッホの有名な自画像がネコの姿のキーホルダーである。
「これはシークレットレアだよ!」
つぐみは興奮して言うのであった。
「よし、この『ゴッホなネコ』はつくみに『考えるネコ』はわたしが貰おう」
「うん、大切にする」
シークレットレアを手に入れたつぐみはご機嫌であった。
わたしが言うのも何だが最高の誕生日になったと考察するのであった。
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