第4話 誕生日
高校の駐輪場に着くと急いで昇降口に向かう。泣きそうなつぐみが立っていた。
「ゴメン……」
つぐみはわたしの謝罪にうつむいたままだ。この友達の関係も、早かったが、もう、終わりかな……。
「来てくれてありがとう」
つぐみは嬉しそうに顔を上げる。その表情は歓喜であった。
「とにかく、教室に行こう、ショーホームルームが始まる」
二人で教室に向かってダッシュする、このエピソードは印象的であった。
そして、教室に入ると、嬉しそうな担任の琴崎先生は直ぐに席に着くように言う。何やらいい事でもあったのであろう。
結局、怒られることなく、ショーホームルームは続きていた。その後、つぐみと話す機会が得られた。
「わたし、誕生日が近いの……」
これはゲームで誕生日を設定する事でイベントを作るのに似ている。イヤ、イベントの為の誕生日そのものである。
わたしは困惑していると。
「今朝、遅刻したのに?」
「判った、考えておく」
その後、授業が普通に入りつまらない時間が流れていた。わたしは窓際から、ぼっーと、外を見ていた。
誕生日か……。
昼休み、わたしが菓子パンをスクールバックから取り出すと。つぐみがお弁当を用意していた。
「おがずだけだけと……」
わたしの母親が忙しくお弁当を作れないのを聞いたつぐみが作ってくれたのだ。
「あ、ありがと」
突然のサプライズに心から感謝を言う。
「えへへへ」
これは誕生日を真剣に考えねば。帰りに総合スーパーに行ってみよう。
さて、昼休みも残り少ない、スマホで小説の続きを読んでみよう。わたしはスマホを取り出して読み始める。おっと、つぐみが独りになってしまう。
「わたしはね、友達って特別な事をしなくてもいいと思うの」
そうか?
その言葉を信じてわたしは小説を読み始める。
すると、カシャ、カシャ……。
なんの音かと確認するとつぐみがスマホでわたしを撮影し始めるのであった。
「えへへへ」
今日、二度目の照れ笑いである。
「大切なのは思い出だよ」
いっけん、無意味そうなスマホでの撮影だがつぐみは必要だと言い切る。その後、昼休みの時間が終わりかけになって添付ファイル付きのメールが届く。先ほど撮影した写真である。
「大切なモノは分け合わないと」
そう言ってつぐみは席に着く。これが友達のいる日常か……。
晶子、なんで居なくなってしまったのだ。死んでしまった中学の時に一緒にソフトボールをした無き親友の事を思い出す。
わたしの心は少し寂しかった。
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