第36話 1ヶ月の終わり。

1ヶ月はあっという間だった。

2週目から解体は兎、鶏、狐の順番でサイズアップをして、子供達は及第点レベルで解体できるようになる。


この頃にはミチトとエスカの仲も以前よりはマシになっていた。

子供達に言われてミチトが迎えにいくと嬉しそうに待っているエスカを見て「楽しみだったんですか?今回もよろしくお願いします」とミチトは言う。


それをトウテから見守るアクィ達は良かったと胸を撫で下ろす。



料理の腕もミチトとリナが仕込んだので基本はバッチリ出来る様になっていて貴族の子供達には十分すぎたし出来上がった簡単な炒め物にしても帰ってから振る舞われた親達は感動に打ち震えた。

余談だがロシー・モブロンは子供達に専用の調理器具を買い与えていた。

スイーツ作りは本人の性格に寄る所もあったが一番ヘタクソだったイイテーロとマエーノでもプリンが作れるようになっていた。


薬学にしても基礎はできていて他の貴族と会うときなんかに毒草に注意を促す姿は様になっていて頼もしいの一言だった。



戦闘訓練はミチトの求めた第一騎士団を蹴散らす実力は難しかった。


「1ヶ月じゃ無理かぁー」とミチトが肩を落としたがそれでも第一騎士団の騎士に一対一で勝てるまでは鍛えられたので十分すぎる内容だと言われた。

以前、派手な剣をミチトに頼んだイイテーロはその剣で苦しむ羽目になったが意地で使いこなせるようになる。


身体に合わせて専用の槍を作ってもらったフィップは祖父にお礼を頼むと言ったがミチトからは全力で拒否をされる。

圧を放って「お礼とかいらないからね。絶対だよ!」と言われたフィップは困惑の顔で「…はぁ…、な…なぜですか?」と言った。


ジェードの「それは俺達のパパがお礼言われるの苦手だからだって、やめてあげてよ」の言葉にフィップは「だがこんな素晴らしいものを貰ってお礼も出来ないなんて!」と言って何とかお礼をしたいとアピールする。


「お礼?それはいいんだ。だがね、一応言うけどうちの娘達に変な気はくれぐれも起こさないようにね。それさえ気をつけてくれれば槍のお礼なんて要らないからね」

この時のミチトの顔はとても怖いものだった。


だが正直メロ・スティエットを始めとするスティエット家の娘達は皆見目麗しい女性達で意識をするなという方が難しい。


メロは平民だと察せさせない仕草や教養を持ち、訓練の賜物か程よく引き締まった肉体の美貌を持っている。

年上だとしてもチャンスがあれば食事をしたいと思えてしまう。


ラミィ・スティエットもアクィ・スティエット譲りの力強い眼差し、卑屈さなど微塵もない貴い立ち振る舞い、そして真っ赤に燃えるロングヘアが魅力的な美少女。


フユィ・スティエットはラミィから力強さを程よく取り除いた優しい美少女でラミィとはまた別の魅力がある。


シア・スティエットは母、リナ・スティエットの優しさや穏やかな空気感を持っている少女で美しさで言えばラミィより一段は劣るというものもいると思うが完成度の高さは変わらない。特筆すべきは優しさで周りへの気遣いなんかは群を抜いている。


ベリル・スティエットは女帝ライブ・スティエットの美貌を受け継ぎつつ、闘神ににた穏やかな顔つきが魅力的な少女で間違いなく国を代表する美少女へと育つだろう。



フィップの心を読んでいたミチトは鬼の形相で「…なにうちの娘をそんな目で見てるの?」と言う。

心を読まれたと理解したフィップは「え!?一般的な感想です!美しいものを美しくないと嘘は付けません!」と必死になって説明をすると、アルマと一緒に来たジェードに「パパってフィップがラミィ達と何かあると思う?」と笑われる。


アルマが「闘神様、本当に何もありませんよ?」と言うとミチトは「それはそれでムカつく」と言う。


アルマは「えぇ…」と言いながら無茶苦茶だと思っているとジェードが「それよりフィップは年上の女の人が好みだから…」と言って指差すと「メロ!おはよー!」と現れたセルースの娘のテレアを見て「テレア嬢!」と色めき立つ。


フィップは五つの歳の差を指摘された時も「闘神様はリナ夫人と仲睦まじく過ごされています!」と言って問題ないと言う。


それこそシア達と同い年のセルースの2人目の娘トビエが居てもお構いなしで「テレア嬢、もし良ければジャックスのパーティーにメロ嬢といらして貰えませんか?」と熱烈に誘う。


「んー…行くだけなら良いけど、ウチのオヤジってアレだよ?よく誘う気になるよね。それにジャックスってラージポットの方だよね?遠くない?」


この言葉にフィップはナハトの後をついて回り、まだ若いのにセルースと酒を飲んで気に入られ、メロにも「何をお渡ししたらメロ嬢にテレア嬢の事を頼めましょうか?」と頼み込む。


ようは本気になっている。

メロは「ジャックス様にはサルバンもお世話になってるからいいよ」と言い、フィップは膝をついて礼を言う。


これを見てもラミィ達の心配を始めるミチト。



アルマも年齢的にラミィ達と仲良く話すがそれは「マアルと話すのが当たり前みたいになっているのにマアルがロゼと仲良くしてて話し相手が欲しいんです」とロゼとマアルが仲が良くて仕方なくということでミチトの怒りから逃げている。


だがまあベリルは妹が出来たみたいで可愛いと猫可愛がりして判断に困ったミチトはライブと話し合っていた。


ライブは笑って「何もないって、ベリルも1番はミチトだよ。アルマだって弱くはないけどコードに負けるんだから惚れられたりしないよ」と説明をすると、その言葉を信じてミチトは大人しくなっていた。



「かぁーっ、本当に親バカだね」

そう言って産バアが現れるとフィップとアルマ、イイテーロとマエーノが整列する。

この1ヶ月産バアの弟子として出産に関わったフィップ達は昼夜を問わずに連れて行かれて出産に立ち会ってヒール治療や火の術でお湯を作ったりした。


万事に優先されて生きてきた貴族の男の子だが出産を前にした時、産婦と赤ん坊が最優先になる世界で目が覚めた4人は必死に命を守ってきていた。


「守護者様よぉ、今日は難産だから宜しく頼むよ!自分のやった事なんだから責任持ってな」

「ええぇぇぇ…、俺の腕輪で双子ですか?」


かつてミチトが作った妊娠の腕輪は今も不妊夫婦の希望の星として活躍をしているが、やはり双子の出産は難度が高く産バアから呼び出しを喰らう事が多々ある。

産バアの「おうよ!それに高齢だから頼むぜ!」の言葉にミチトは覚悟を決めて「…行きますけど」と言う。


「サンちゃん!行くよ!」

「はい!産バア先生!マスター!今日はよろしくね!」

ミチトは可愛がっているサンフラワーに言われれば優しい顔で「サンフラワーに言われたら頑張るよ」と言って準備をする。


「ロゼ、俺たちもパパと行こうぜ。アルマ達は最後だからゆっくりしてなよ」

「うん。マアルも最後だからシア達とお茶してて」


ロゼとジェードを見てミチトは「…ロゼとジェードが来たら俺いらなくない?」と言うのだが産バアに首根っこ掴まれて「何出し惜しみしてんだよ、行くぞ」と言われてついて行く事になった。

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