第31話 天啓を得たミチト。
宴会は無茶苦茶だった。セルースはナハトを気に入りナハトもセルースにこれからもよろしくお願いしますと挨拶をした。
ナノカも孤児院とうまくやれていて増え続ける孤児達を助けるヤオ達に感動していた。
宴会で言えばリナ達は宴会の為にご馳走を作り続けていてアクィはケーキを店売りレベルで作り続けていた。
ミチトは自分のナワバリにエスカ達がいる事で面白くないのだが子供達の根回しでエクシィ達がかつての遺恨もなくエスカ達を受け入れるので受け入れざるをえない。
不服そうなミチトの元に来たローサが「ふふ。ミチトさん、天空島は素敵よね」と声をかける。
「ローサさん?ああ、ナハト達ですか?仲良くなりましたよね」
「ロゼくんとマアルさん、後はアメジストさんとイイヒートさんもよ」
ロゼは甲斐甲斐しくマアルの世話を焼きマアルも甘えるようなフリをしながらもロゼと楽しく過ごす。
それを見てジェードとフユィが何事かと聞きに行くと「俺がマアルのお兄ちゃんだからね」とドヤ顔で言うロゼとロゼの見てないところで「よ・け・い・な・こ・と・を・い・わ・な・い・で」と口を動かすマアルもロゼが見ている時は「ロゼくんは厳しい父上の代わりに私に優しくしてくれるんです」と言う。
状況を察したイブが「ロゼちゃん!やりましたね!沢山お兄ちゃんしてあげるんですよ!」と援護射撃をしてマアルにも「双子のお兄さんには甘えにくいですよね。ロゼちゃんを存分にお兄ちゃんにしていいですからね」と言う。
イイヒートとアメジストに関してはライブがシャイニング達に良い雰囲気を邪魔しないように指示を出す。
2人は通常運転のつもりだがラブラブ空気は溢れていて、あのアメジストがイイヒートに「気絶するかのチェックね」と言いながらベッタリくっ付いて「はいアーン」とやる。イイヒートはシヤとシーシーに「すまない。後でヒールを頼む!」と言うと宴会前にエクシィから折れた剣の破片を貰っていて気絶しそうになるとポケットの中で破片を使って太ももに傷をつけて堪え続ける。
ちなみにアメジストはとっくに見破っていてそれすらも愛おしく感じていて「凄いね。気絶しないからじゃあお酒飲ませてあげるね」と言って酒を飲ませたりしている。
そんな中にサンフラワーと戻ったアルマはロゼに甘えるマアルを見て、ジェードに何があったかを聞きサンクタのように頭を押さえて「マアル、ダメだよ。僕はサンフラワーさんと産婆さんのお陰で未来の領主としてやる事がわかったんだ!今すぐカラーガに帰ろう!」と言うが「やだ。帰らない。勝手に帰って」と一蹴されてしまう。
そんなアルマだったがジェードに「落ち着けって、まず何をしたいか言ってみろって」と言われて「僕は領民全員と話をしてどんな人達なのか、どうしたら幸せなのか、どうしたらカラーガが良くなるかを知りたいんだ」と説明をしたがジェードと共に聞いていたシアから「んー…?とりあえず美味しいの食べて落ち着いたらローサお婆ちゃんと話しなよ。なんか空回りしてるよ?」と言われながら唐揚げを渡された。
シアはリナがするような呆れ笑顔で「ほら赤ちゃん産まれるお手伝いで気が立って疲れてるんだよ。ジュース飲みな?お茶がいい?お肉は?お母さんのローストビーフ美味しいよ?」と世話をすると離れて見ていたミチトがブチギレだす。
メロが慌てて「パパ!あれはシアの優しさだよ!お母さんそっくりで優しいからだよ!」と話しかけて機嫌を取ろうとしているとベリルとフユィが「パパも唐揚げ?ベリルが食べさせてあげるね!」「私がジュース飲ませてあげるね」と言って世話をしてくれる。
フユィとベリルの手でお世話をされたミチトはニコニコと目尻を下げながらもアルマをボコボコにしなければと思っている。そこにラミィと手を繋いだエスカが「ミチト?ラミィちゃんが教えてくれたけどヤキモチ妬いているの?」と話しかけてきた。
ミチトは苦手な母のはずなのに天空島からの落下で若干打ち解けた上にシアの事で苦手意識なんてなく「ヤキモチではないですよ。ただシアは優しい子だから変な虫が付かないか心配しているんです」と説明をする。
「あら、ラミィちゃんとフユィちゃんとベリルちゃんは?」
「ラミィとフユィはアクィによく似て貴い者として相手ができるからまだ安心です」
この説明にフユィは嬉しそうに照れて、ラミィは気品溢れる仕草で「当然ですわ!お婆ちゃん!後でアルマの結婚式を盛り立てたラミィの勇姿をママに見せてもらってください!」と自慢する。
「ベリルも心配ですがライブとジェードを見る限りキチンと嫌と言えます。でもシアは優しいから我慢をしてしまわないか心配です。勘違いをしたアルマがシアに迫らないように俺がなんとかします」
ミチトもドヤ顔で説明をするとエスカは母の顔でため息をついて「私のせいだけど…」と言い出す。
「は?」
「失敗も貴重な経験なのよ?失敗をせずに生きてミチトのいないところで困ったらどうするの?」
「俺は一年中子供達を見守り続けて遠く離れた場所でもなんとかしてみせますよ」
「…そうじゃないのよ。さっき空の上でシアちゃんから獣の解体を習いたいって言ってもらったわ。それと一緒。初めては失敗するでしょ?だからシアちゃんは殺して食べる獣の為にも上手くなりたいって言ったのよ。男性とのお付き合いも同じよ?友達を沢山作って経験を積ませてあげなさい。それこそ取り返しのつかない失敗になる前にミチトが助けてあげれば良いのよ」
横で聞いていたメロが「それ!それです!」とエスカに賛同する。
「ふふ、メロもそう思う?」
「はい!ピンチに現れてくれるパパを見たらシアだって喜ぶしもっとパパが好きになります!」
メロの言葉にミチトが「は?」と聞き返すとメロが「普段からパパが何でもしてたらメロならまだ一人前って思われてないって思っちゃうし、それにサンクタ様みたいに普段は見守っていてこれ以上はダメって時に声をかけた方がいいと思うよ?ロゼとマアルちゃんを見てみなよ」と言う。
確かにマアルがシアでロゼがアルマならアルマは既にこの世に居ない。
だが色々面倒なので1万歩譲って改竄術を使って不埒なマネが出来ないようにする。
確かにそれで行けばサンクタも父なのでロゼに殺意の一つを抱いてもおかしくない。
だがそれでもサンクタは乗り込んでこない。
ここでラミィが「わかりますわ!ラミィはアルマを任された時にその気持ちでしたしパパが見守ってくれているとわかっているので普段も安心出来ています!」と言い、フユィが「うん。シアもフユィはパパに信用されてるけどシアはまだみたいって言ってたよ」と続ける。
これに衝撃を受けたミチトは力なく項垂れると「そ…そんな…なんて事をしてしまっていたんだ?シアはそんなに傷ついていたなんて…」と真っ青な顔になる。
これはマズいスイッチが入るとメロが慌てたところでエスカが「ミチト、今気づけて良かったじゃない。私みたいにお婆ちゃんになってから気付くより取り返しがまだつくわよ。シアちゃんはミチトを嫌っていないわ」と諭すと「…母さん」と言って救われた顔をするミチト。
このやり取りを遠くで見て察したリナがシアを連れて「どうしたの?」とやってくる。
「リナさん…、俺…シアの人生を台無しにしてました」
メロが横で「まだしてない!まだ間に合うよパパ!」と声をかける。
話を聞いたリナは「お義母様の言う通りよミチト。気づけて良かったじゃない?まだ間に合うわよ」と言ってからエスカに「ありがとうございます」とお礼を言う。
そしてシアに「シアも、もしアルマくんに襲われてもキチンと嫌がれるよね?」と聞く。
「うん。平気だよ。最初はキチンと言葉で嫌がってダメなら倒すよ。お父さん?私はタシアには勝てないけど術無しならトゥモにも勝てるからね?」
ここでエスカがメロに「シアちゃんは強いの?」と聞くとメロが「8歳の強さじゃありません。訓練なら王都の騎士団を1人で壊滅できます」と説明をする。
「え?騎士団って大人の?」
「はい」
「ナハトは?」
「今のナハトは強くなったけど、ガットゥーに行く前のナハトならどうやっても勝てません」
「…それなのにミチトは心配しているの?」
「はい…」
エスカは呆れながらも前に出て「ミチト、単純にシアちゃんはどのくらい強いの?」とわざと聞く。
「俺とリナさんの娘ですよ?弱いわけないですよ。簡単に説明すれば王都に1人で攻め込んでエーライさんを討ち取れるくらいです」
ミチトは冗談は言うが嘘はつかない。
エスカは以前会った国王をシアが討ち取れると聞いて本当にシアが強いと理解をした。
「それなのに男の子が心配なの?」
「そうですよ!あの愛らしい笑顔を見て勘違いする男がどんな卑劣な手に出るか!」
そう言いながら殺気はアルマに向かいアルマは急な悪寒に襲われて身震いをして、状況を察したジェードが「逃げるぞアルマ、向こうで食べよう」と言って逃す。
エスカはなんだかんだ言っても親なのだろう。
ミチトの扱いがうまい。
「なら満足いくまで鍛えてあげなさい。どんな手にって眠り薬とかなら薬学を教えてあげて打ち破り方も教えてあげればいいのよ」
「…いや、俺はそもそも戦闘力なんて求めてなくて娘達にはリナさんみたいな料理の腕やアクィみたいなケーキ作りの腕、後はマナーを教えてあげたいんです」
ここでエスカは普段の雑魚メンタルは演技なのではないかという仕草で「ミチトはダメね」と言った。
「は?」
「あなた考え方が父さんに似ている癖に変な所がファルに似てるわ」
「何を?」
「ファルは優しすぎたけど父さんなら全部やり切ったわ。やれないの?」
「え?何を?」
「だから安心して送り出せるまで鍛えてあげなさい。リナさん達にも頼んで完璧にするの。そうじゃないとミチトは何かあった時に責任を感じて落ち込むでしょ?自己嫌悪に陥るでしょ?やれないの?」
「…全部…やる?…戦いも…料理も…マナーも…」
「そうよ。私もシアちゃん達に獣の解体を教えてあげるから任せなさい。知らないところで獣の解体とか聞いたら心配でしょ?」
この言葉にミチトは「それはそうだ。刃物なんて以ての外だ」と思っている。
そして数秒後に目覚めてしまった。
「…それだ!それですよ!俺は器用貧乏ですからぜんぶ教えてあげれば良いんです!リナさん!シア達に料理を教えてあげましょう!メロ!メロもやろうね!アクィ!アクィ?どこ行ったんだろう…もうアクィは決定でいいや。マナーはローサさん!よろしくお願いします!」
リナはニコニコと「ミチト、お義母様に解体の事をキチンとお願いしなさいな、ミチトの解体はどっちかと言うと食べるより魔物の解体に近いって自分で言ってたんだからさ」と提案をするとミチトはエスカを見て「そうですね!」と言う。
そして「母さん!とりあえずうちの子達をよろしくお願いします!」と言われたエスカは突然の圧に「え…ええ!任せなさい」と言った。
結局テンションの上がったミチトはそのままソリードに寝込みを襲われた時の撃退法なんかを仕込んでもらえるように頼み、ケーキを持ってきたアクィにスイーツ作りを仕込むように頼む。
「あ!酔っ払いのあしらい方とかは実験台にセルースさんかな…、後は臭い人のあしらい方の実験台はパテラさんで…」
暴走し始めたミチトにリナが「それはやめてあげようよ」と言うと横のエスカも「基本的な事でいいのよ」と続ける。
「母さん?」
「もう、それはファル似ね。さじ加減は奥さん達にお願いしなさい」
「わかりました!」
機嫌が良くなったミチトはナハトにせがまれるままに共に酒を飲み交わしていた。
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