第29話 終わらない報告会。

これで終われると思ったミチトだったが甘かった。

ロゼは「さあ次だよパパ!」と言い村を出る。


「えぇ?まさかズメサ?」

「そうだよ!俺はパパとママと村のお手伝いをしたから褒めてもらうんだ!」


ズメサにミトレとエスカを連れて行く事を考えて肩を落として「やめようよ」とミチトは言うが無敵の人であるロゼには通じない。


ロゼは「やだよ。パパももう少し褒められなれなよ。アプラクサスおじさんのお礼とかちゃんと聞けないとダメだよ?」と言うとさっさと先頭を歩いてエスカとミトレに「爺ちゃん婆ちゃんはベリルとフユィと手を繋いであげてよね」と言った後でジェードに「こっちはやれなかったけどソリード婆ちゃんの家は俺が冬支度手伝ったんだぜ」と言いながら楽しそうに山を下る。


途中からコードを含めた5人は山下りを競走のように始めて「負けられるか!タシアに勝つぞ!」「おう!身体強化!」「軽身術!」「滑走術!」と言って4人の誰かがタシアに勝てればいいと言い出して走り出していく。


タシアは呆れながらも長兄として負けられないと本気で駆け降りていく。

それでも走り出す時に「お父さん!ごめんね!皆の事を見ておいて!」と言う気遣いはタシアらしい。


呆れるラミィとシアは「まったく、子供ですわ」「本当だね」と言っている。

ミチトは「ラミィ?シア?2人も行くと思ったけど…」と聞いてみるがラミィは「行きませんわ!」と言い、シアは「行かないよ。また帰ったら暫く会えないから今はのんびりとお婆ちゃん達と歩くの」と言って繋ぐ手に力を込めた。


「成る程。それは…あ、タシアが勝った」

タシアは術が嫌いでも使い方はうまい。遠視術と心眼術を駆使して身体強化で木々を蹴りながら加速して山を下る。

あっという間に到着したタシアは「ソリード婆ちゃんこんにちは!」と挨拶をして今からミチト達がくる事を説明していた。



ロゼは村に着くと村人達から「この前はありがとう」と感謝をされる。


「ううん!全部は手伝えないけど本当に困るやつなら平気だよ!俺こそご馳走様でした!」


この言葉に村人達も喜ぶと少ししてミチト達が下山し終える。

そこにはエスカとミトレも居るのでロゼは「山に住んでる爺ちゃん婆ちゃん」と村人達に紹介する。


村人達はミチトの両親に挨拶をしながらミチトにも先日の感謝を口にする。そして9人の子供達を見て賑やかだと歓迎をした。


ロゼ無双は止まる事なくエスカとミトレ、そしてソリードを連れて自分が手伝った場所を練り歩いて村人達にアピールをしていく。


「爺ちゃん婆ちゃんはそのうちズメサに住むんだ。そしたら俺達ソリード婆ちゃんの所にも来るからよろしくね」

「おう、楽しみに待ってるよ。クラシ君も帰ってきたらズメサは賑やかになるな」


ロゼは「クラシ兄ちゃんには言っておくよ」と言うとジェードが「バカ、やめてやれよ。この前も「疲れた…ズメサ…帰りたい」って言ってただろ?」と釘を刺す。

この話に村人が「ミチトに頼めないのか?」と聞くとタシアが「お父さんも息抜きに行く?って聞いて居るんだけどクラシお兄さんって「ダメです。今ズメサに帰ると間違いなく王都に戻れなくなります」って言うんです」と説明する。


村人は「クラシ君らしいな」と喜ぶと農作業に戻っていく。



ミチトはここでマアルとアルマの事を気にすると「マアルなら今日はローサ婆ちゃんが仲良くお茶会だってさ。ティナ婆ちゃんも呼んで楽しく話すんだって」とジェードが教える。


「うわ…」

「アルマの奴は産婆ちゃんに捕まって「領主になるってんなら領民の顔を見な!生まれてくる赤ん坊を見て自分の領地の人を数じゃなくて人で覚えな!特別に連れて行ってやるからサンちゃんの後ろで手伝いな!」って言われて連れて行かれたよ」


「アルマって真面目だから「はい!わかりました!」って言って張り切ってたよね」

「マジかよ」

ミチトはサミアでアルマを探すと運悪く産気づいた妊婦に出くわしてしまい目を白黒させてお湯を作れと言われて桶を抱えて火の術で温めながら産みの偉大さを見せつけられていた。



ズメサでの話が終わるとロゼはソリードを誘ってトウテへと連れて行く。


トウテは既に宴会ムードで、そこにはアクィが連れてきたクラシとシンジュ一家、シヤとシーシー一家、そしてイイヒートが待っていた。


ミチトは宴会ムードに驚き「なにこれ?」と言うとロゼは「歓迎会だよ!山婆ちゃん達はパパがどんな所で暮らしてるかわからないから心配なんだよ。だからナハトおじさんや山婆ちゃん達の歓迎会!」と言った。


「ええぇぇぇ?何それ」

「パパ、それだけじゃないよ!」


もうミチトはロゼが怖い。

恐る恐る「まだ何か考えたの?」と聞くとドヤ顔のロゼは「山婆ちゃんと山爺ちゃん、ナハトおじさんとセルースおじさんを天空島から海底都市に落としてから帰ってきていいよ!」と言う。


ミチトは目を輝かせて「それはやろう!」と言い切った。

エスカとミトレは前もってロゼ達から「トウテを見てもらいたいけど照れてゴネるパパを言い聞かせるために天空島からは落ちて欲しいんだよね」と言われていて母としてエスカは受けると言い、ミトレはエスカの夫として受けいた


ミチトは案の定ウキウキとナハトとクラシに絡んでいるセルースを捕まえると「さあ!天空島ですよ!」と言って天空島に連れて行こうとする。

だがここで待ったをかけたのはイブで「ミチトさん、アルマ君は今も産婆さんの所でお仕事中ですけどマアルちゃんは落ちれますし海の底は珍しいから連れて行ってあげてください」と言うと「お父さん、私も行きたい。お婆ちゃん達を私が守ってもいいかな?」とシアが言い、ラミィも「ラミィもやりますわ!」と言う。


そこにはローサも来ていて「うふふ。私もラミィちゃんにお願いするわ」と立候補をする。


ミチトは熱い視線をソリードとリナに送ったが2人は目すら合わせてくれない。ティナに至っては「コッチミンナ」と言って睨んできていた。


しょんぼりするミチトにシヤが「マスター、俺とシーシーと子供達も追加で、後はイイヒートがアメジストと降りる。海の底は是非経験させたい」と言うとミチトの機嫌はガラッと直り、結局はミチトの家の子供達は全員参加になり、皆でウキウキと天空島まで行く。


ナハトの怖がりはミトレ譲りで「タシア君!手を離さないでくれないかな?」とやっていてエスカは「わぁぁ…凄い景色。ありがとうミチト!誘ってくれてありがとうロゼ君」と喜んでいた。

素直なエスカの喜びにミチトは気をよくして「そんなに喜びます?まあ喜んでもらえて良かったです」と言うと遠くで見ていたシアとジェードがハイタッチで喜ぶ。


今回も気が気ではないのはシーシーやアメジストだ。

しかも今回はシローとヨンシーまでいるのでミスは許されない。

確かにシヤの考えはわかる。海底都市に降りれる経験なんてミチトが居ないと出来ないが、シヤが金色に聞いていた「海底都市に向かうまで大量の水が押し潰してくる」を防がねばならない事が不安でたまらなかった。


アメジストは海底はいい、だが高い場所はダメだ。それこそ睨み一つで回避できたティナが羨ましい。無視して逃げ切ったリナとソリードが妬ましい。

そんなアメジストの不安を察して「大丈夫ですよアメジストさん!俺がお守りします!」と明るく声をかけるイイヒート。


「…術を使うの私だもん」

「すみません。俺の命を術に変えて差し出せれば良いのですが出来ずに申し訳ありません」


本当に申し訳なさそうなイイヒートを見て気が晴れたアメジストは「いいよ。でもお魚追加ね」と言って笑った。


「ラミィ、ローサさんを完璧に守りつつ周りに気を張ってね」

「はい!ラミィはやり切りますわ!」


「トゥモ、全員のフォローだよ。シヤのところは人数が多いからね」

「フォロー?全部でもできるよ」


「それだと皆の訓練にならないだろ?それにトゥモはフォローが苦手だから丁度いいよね。トゥモの訓練だよ」

フォローが苦手なトゥモは「バレてる」と言った。


「後は」と言うミチトにジェードが「パパ、マアルはロゼで良いよね?」と聞く。


「どうしたの?」

「ロゼの奴タシアが格好いいからマアルはタシアのが良くないとか言い出して山爺ちゃんを自分で見ようとすんだよ」


ミチトは呆れながらに「ロゼ、それでも良いけど指輪作りが後退すると思うよ?」と声をかけるとロゼは慌てて「ダメだマアル。ごめん!タシアはまた今度!指輪がちゃんと作れたらにして!」と言う。


セルースは肩を落として「なんで…酒飲んで楽しくて…クラシには久々に会えたし、ナハトの奴が面白いから気持ちよかったのに、なんでここにいんだよ」とブツブツ言っていてナハトはよくわかってない。酔っぱらいながら「セルースさん。もっと話をしてくださいよぉ、美人局ってなんですかぁ?」と言いながらヘラヘラして居る。

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