第28話 報告会。

簡単に朝食を食べて片付けと掃除をしてトウテに帰ると子供達は「ダイモだよ!行かなきゃ!」「山婆ちゃんのところ行こうよ!」と言う。


「ええぇぇぇ?早く行って何するの?」

「いいから早く」


断るに断れないミチトは渋々ダイモに向かう。

珍しく渋い表情にたまたまミチトを見たルナスケは嬉しそうに「よう!器用貧乏」と声をかけてくる。ルナスケは子供達の根回しでミチトの母とその家族が居ても普通に接するようにしていた。



宿屋に着くと父母とナハトとナノカは立派なもてなしを受けていた。

昨日は串焼き屋で串焼きをコレでもかと食べていたと同席したシアが教えてくれる。


父母の前では秘密にしたかった守護者の呼ばれ方もシア達がいればそういう訳にも行かずに街ではお嬢様と呼ばれたところから守護者の話も伝わり申し訳ないと思う事になる。


「どうも、家を長くお借りしました」

「いや、皆から聞いたよ。冬支度と村の片付けまでして貰って申し訳ないよ」

「本当よミチト!ありがとう。助かったわ。ナハトは手が遅いから今度ミチトに教わりなさい」

「うん。そうするよ」



ミチトはそんな家族のカタチを見てバツの悪い顔のまま「夢にお爺さんが来てくれて手紙を教えてくれました」と言って手紙を取り出す。


「手紙?どこにあったの?」

「地下室です。地下室の端の石がダミーで退かすと中から湿気対策をした箱が出てきました」


エスカは手紙を読むとポロポロと泣き出す。

泣いたエスカを見てシアが「お父さん?」と聞き、ラミィが「あの手紙はなんですの?」と確認をする。ミチトは「俺も知らないんだ。開けずに持ってきたからね」と言った。


シアが「お婆ちゃん?大丈夫?」と声をかけるとエスカはシアの手を握って頷いて「ありがとう。大丈夫よ」と言った後でミチトに「父さんは私に怒っていたわ。そしてミチトがどんな目に遭ったか書かれていて、そんな中でも頑張って生きていると書かれていた。父さんの字を久しぶりに見たわ」と伝えた。


「父さんからもキチンとミチトに謝るように言われたわ。ごめんなさい」

「…いえ」


また良くない空気が流れるかとシア達が不安になったが「パパ、話って終わったよね?」とロゼが言う。


「ロゼ?」

「ナハトおじさんとナノカお姉さんは昨日サルバンから連れてきたからディヴァントはまだ詳しくないからこっち」


ロゼはジェードとナハトとナノカを連れてトウテに行くとセルースに「セルースおじさん!昨日お願いした話ね!ナハトおじさん!パパの弟だよ!凄く強いけどお酒とかダメそうだしヒノお姉さんが色々鍛えてくれてるからちょっと遊んであげててよ!」と声をかける。


「あぁ?コイツがミチトの弟?似てねぇじゃねぇか。とりあえず酒飲め。飲めるよな?」

セルースの圧にナハトが「え!?…えぇっと…」と言っているとジェードが「ナハトおじさん、パパはセルースさんとも飲めるぜ?」と横で言う。

ジェードの言葉にナハトがやる気になると「やっちゃって」と言ってセルースにナハトを渡す。


セルースは公然と朝から酒が飲めることに「よぉぉっし!飲むぞ!ポス!ツマミだ!」と声をかけるとセルースに言われていたポスも「あいよ」と言ってツマミを用意し始める。


「ナノカお姉さんはこっち、第三騎士団の皆のお家。ヒノお姉さんがヤオお姉さんと皆を育ててくれた孤児院。ナノカお姉さんもトウテの皆と仲良くなってよ」

「え?う…うん」


ロゼはそのままゾーエンやシャイニングを呼ぶと「パパの弟のナハトおじさんの彼女さん。今はサルバンだけど元々は第三騎師団に居るからシヅさん達の事とか聞いたりしてね」と説明をして「後よろしく」と言ってダイモに戻っていく。



戻ってきたロゼたちを見てミチトが「ロゼ?何がしたいの?」と聞くとロゼは「何が?」と言いながら横に居るトゥモに「簡単だよ。ね?トゥモ?」と言う。

トゥモも「ああ、本当簡単だよなコード?」と言ってコードも「うん!ベリル達もだよね」と言うとベリルも「うん!」と言う。


「君達?俺のいない間に何を決めたの?」

「にひひ。聞く前にまず行動だよ。パパ、俺達と山婆ちゃん達を山のお家まで案内してよ」


「ええぇぇぇ?」

ミチトは嫌々子供達に言われるがままミトレとエスカも連れてスティエット村まで転移をする。



「まぁ!?」

「これは凄い」

花に囲まれて雑草なんかのないスティエット村を見てミトレとエスカは素直に驚きを口にする。


両手を広げて「冬支度が完璧か一緒にチェックしてよ」と言うロゼにジェードが「完璧だろ?俺達とパパがやったんだぜ?」と言い、タシアが「ロゼは花係だから自信ないのかな?」と続ける。


「あー…違うよ。タシア、家でここまでお手伝いしたらパパはなんて言う?」

「お父さん?お父さんなら「ありがとう。こんなにやってくれたの?助かったよ」じゃないかな?」


欲しい言葉を引き出せたロゼは「だよね!だからさ屋根とか扉とかもそうだし、トゥモ達が仕込んだ漬けダレとか、藁とか見て貰って褒めてもらいたくて来たんだよ!」と言った。


ロゼが「山爺ちゃんと山婆ちゃん、ほら見てよ!」と言うとトゥモ、ジェードとコードはエスカとミトレの手を引いて村中を見て回る。


「え!?こんなに肉が用意されているのかい?」

「まあ!魚も!?」


「藁も完璧じゃないか」

「木の実も沢山」


「屋根も見てくれたのかい?」

「漬けダレの瓶が3つもあるわ!」


ミトレとエスカが喜ぶ度に子供達は胸を張って自分達がやったんだと言う。

そしてシアやラミィが「お婆ちゃん、でも1番働いたのはお父さんなんだよ」「パパは流石貴い者ですわ」とミチトを売り込む。


エスカはガットゥーで教わった事もあり「本当ありがとうミチト!」と最初に言ってから「お肉を捌いてくれたのシアちゃん?」「ラミィちゃんは漬けダレをしこんでくれたのね!」と言う。


村中を見た所でジェードが「山婆ちゃん、一個お願い聞いてよ」と言う。その横にはトゥモも居て「漬けダレ!自分達でやったから食べてみたいのにまだ早いってパパが言うんだ。だから出来たら食べさせてよ!」と言う。


エスカは優しく微笑むと「ええ、勿論よ。馴染むだけなら1週間だからもうすぐだけど…深みを持たせるなら3ヶ月だから冬になる頃に来てね」と言い、その顔と言い方にフユィが「パパと同じ顔で同じ事を言ってる!」と喜び、ベリルに「似てたよね!」と聞くとベリルも「うん!」と言って「パパとお婆ちゃんそっくり!お婆ちゃん!あのお肉美味しかったからまた食べたいよ!」と言いながらエスカに抱き付くとエスカは顔を真っ赤にして「いつでも来てね。それで足りなくなったら手伝ってくれる?」と言った。

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