第26話 山での暮らし5日目。
翌朝、イブ達が一応最後だからと朝から煮込みを仕込んでおいてトウテへと迎えにいく。
トウテではマアルが少し寂しそうにしていたが、シア達が戻って「女子会しよう!」と誘っていて、更に何故かライブも女子会に参加する事になって「私?私はもうおばさんだよ?」と言っている。
アルマはブレないカラーガの男としてコードの帰還を待っていて「訓練を頼めないかな?」と声をかける。「僕?いいよ!」と喜ぶコードにジェードが「飛びかかりと下からの強襲を頼むぜ」と指示を出す。
それを見ながらミチトは「イブ、ロゼ、良いかな?」と聞くと「はい!待ってました!」「俺も楽しみにしてたけど冬支度は残ってないだろうってジェードが言ってたから別の事をするよ」と言っていた。
スティエット村に着いたイブはまず煮込みの匂いに気づいて喜ぶ。
ミチトはイブではなくアイリスとして「ふふ。流石だねアイリス」と言って笑うと「折角だから作ったから夜に食べようね」と言う。
「え!?お昼じゃないんですか!?」
「煮込み時間が足りないよ」
アイリスは困り顔で「そこは器用貧乏で頼みます!術でやってください!」とミチトに抱き着いて甘えるように言うとここでロゼが「あ、そうそう。術で思い出した。俺一個知りたい術があったから昨日ママに聞いたんだ」と言う。
「ロゼ?」
「とりあえずこの村も寂しいし、ライブママに聞いたらパパが廃屋を消し去ったって言うからさ、これを買ってきたんだよね」
ロゼが見せたのは花の種だった。
「種?」
「うん。花で綺麗にしたいんだー。だからママから成長促進術を聞いたから今日は俺たちで村を綺麗にしようよ!」
確かにミチトには花の種に成長促進術をかける考えはなかったのでロゼに感謝をしつつ土の術での耕し方を説明する。
ミチトはここからはとても楽しい時間を過ごすことになる。
最初は家を出て最初に見える廃屋の跡地に種を蒔いて促進術をかけると赤青黄の花が咲く。
ミチトの手際を見たロゼは「くっそー、パパうまいなぁ」と漏らすとアイリスを見て「ママ、俺達も負けてられないよ!」と声をかける。
アイリスも「はい!やりますよ!」と言って村中を回る。
あっという間に2軒目の跡地にも花が咲くと、ここでロゼが「花で花の絵を描く」と言って土の術で花を動かして上から見ると赤い花に見える絵を描いた。
ミチトは「それは俺には無理だな。センスがない」と言いながら祖父母の墓の周りを花でこれでもかと綺麗にした。
綺麗になった墓を見て「そう言えば死の淵には父さんは一度来たけどお爺さん達は出てこないな」と呟くと横に居たアイリスが「ふふ。会いたいんですか?」と聞くと、ミチトは「いや」と言った後で「俺の事が嫌で出てこないのかなって」と言う。
アイリスは甘えるような呆れるような態度で「もう、またそんな悪い考え。嫌なんじゃなくて守れなかったから申し訳ないなんですよ」と説明をする。
「申し訳ない?」
「アクィさんから聞きましたよ?ミチトさんだってシキョウのご飯屋さんに申し訳ないからって顔が出せなかったんですよね?」
確かに自分も同じだった事に気付いたミチトは「あ…確かに」と言う。
「それにミチトさんはお父様もウブツンさんもフォルさんも皆一回でシューザさんだけが何回も来てくれるって言ってるから助言とか無いと来ないのかもよ?それになんとなく私の勘だけどミチトさんが会いたいって強く願わないといけないか、助言が必要で来てくれるかじゃないかな?」
「あ…確かにそうかも、父さんも師匠もウブツン先生もシューザさんも事情は違うけど会いたかった人達だ」
父ファルとはキチンと話をしたかった。
師フォルにはまだまだ訓練を頼みたかった。
ウブツンにはマンテローに燃やされた手紙の事で謝りたかったし、ラージポットで古代語と古代神聖語が身を助けてくれたことに感謝を告げたかった。
シューザには無限術人間に関しての意見交換をしたいと思っていた。
ミチトとアイリスが話している間にロゼは次々にスティエット村を花の国に変えていて「まだお墓に居た。俺全部やって種足りないから頂戴」と言ってアイリスの種を貰うとまた撒きに行く。
最終的にとてもメルヘンチックな村になり、仮に全ての家が無くなってここに寺院の廟が建っても寂しくない。そんな土地になった。
ミチトは村中を3人で歩きながら「この場所でこんなに安らいだのは初めてだよ」と言ってからアイリスとロゼを見て「ありがとうアイリス、ロゼ」とお礼を言った。
「いいんだよ。最後の特権だもん」
「冬支度は興味あったけど終わっちゃってるからまた今度ね」
このまま村でのんびり過ごすのも良かったが、ミチトの中で少しだけ別の未来を見てみたくなっていた。
「アイリス、ロゼ、少し散歩しない?」
「ミチトさん?」
「まあ家でする事なければいいけど」
ミチトは火の始末だけするとさっさとズメサに降りてソリードの所に顔を出す。
「あら、今日も来たの?今日は何が欲しいの?」と言うソリードに「お昼までのんびりさせてください」と言ったミチトはライブと話をした術人間ではないミチト・スティエットとアイリスがフォームの街なんかで出会って結ばれた時、ライブとはスティエット村が似合っていてアイリスとはズメサが似合うと思う話をした。
アイリスを見て「そうね。アイリスさんはご近所付き合いが得意だからきっと人気者ね」というソリードにミチトは「そう言うわけでお邪魔しました。母さん」と言う。
ミチトは言いながら照れて真っ赤になるとソリードは「もう、ようやく呼んだわね?」と喜んでお茶の用意をするとアイリスも「お母様、私がやります」と言って手伝う。
母と子と呼びたいソリードとミチトとアイリス、そしてロゼの4人の時間。
お茶を飲むとロゼが「パパ、ズメサいいね。ズメサにも別荘作ってよ。俺、ここで冬支度の勉強したい」と言い出した。
ミチトはロゼの顔を見て「マジか。なんか皆が色々言うよな」と言って子供達の要望を思い出していた。
お茶を飲んで平和なズメサを満喫していると窓からミチトが見えたと言って村人が殺到する。
要約すると「毎年なんて頼まないから今日だけでも助けてくれ」と言うもので、ソリードが渋い顔をしている中、アイリスが「大変なものだけならお手伝いします。お母様も来てください」と言って立ち上がる。
「ママ?何するの?」
「村のお手伝いだよ。でも今日しかお手伝いしないから全部はやらないし大変なものだけだよ」
「じゃあパパとママチームで、俺とソリード婆ちゃんチームね」
ロゼはさっさと二手に分かれて村人の頼みを聞いていく。
畑を耕す事や溜池を大きくする事は出来たが馬の不調や農道の整備はミチト任せになるのでミチトを呼ぶ。
乗り気では無かったミチトでも牛馬の調子は気になるので可能な限り面倒を見る。
2時間であらかた終わったミチト達が帰ろうとすると「食べてけ」と言って皆が差し入れを持ってくる。
そこには煮込みシチューもあるのでアイリスは目を輝かせて「やりました!ありがとうございます!」と喜んでどの煮込みシチューも味が違うと喜んで食べた。
ロゼもズメサのチキンソテーの味に「うわ、美味しい」と喜んでいて村人達からは「御礼だよ!お腹いっぱい食べておくれ!」と歓迎されていた。
食後にロゼが「ソリード婆ちゃん」と声をかける。
ソリードはロゼたちを見て申し訳なさそうに「ごめんなさいね。皆にはキチンと言っておくわ」と返事をするがロゼは違っていた。
「皆が働かなくなるのはダメだけど本当に困ってたらまた皆で来るよ。それで山婆ちゃん達が来やすくするよ」
ロゼの前向きさにソリードは感謝をしながら「ロゼくん」と言うとロゼは「そんで今度の冬は冬支度を教えてよ!俺だけ教わってないんだよ!」と言った。
「あらあら、そうね。でもまだズメサは冬支度をしてないのよ?やる?」
「いいの!やりたい!」
「ミチト君?」
「まあズメサと村だと少し違うけど、お邪魔してもいいですか?」
「私は勿論よ。ロゼくんは?」
「俺も問題なし!」
ミチトはソリードの家の冬支度を始める。
「ロゼ、ソリードさんと木の実を集めてきて。俺は干し肉が足りないから鹿を獲ってくる。アイリスは木の周りに藁を巻いておいて」
ミチト主導で冬支度を始めるとあっという間に終わりソリードは「助かっちゃったわ」と笑い、ロゼは鹿の解体に難色を示したが無事にやり切っていた。
普段なら美味しくなるまで熟成させるのだが昨日までの経験から「…まだ早いけど食べてみる?」と聞き、鹿肉を串に刺して塩を振っただけだがロゼは「いただきます」と言って食べて「おいしい。ありがとう鹿」と言っていた。
アイリスは夜ご飯の煮込みシチューと串焼き肉に感動をしていて、あれだけ食べたのに全て食べ尽くすとアクィが持たせてくれたアップルパイまで食べてしまっていた。
風呂に入り寝床の話になったとき、ロゼがとんでもない事を言う。
「俺、1人でパパの使った部屋で寝るよ」
突然の言葉にミチトは「ロゼ?」と聞き返し、アイリスが「何でですか?」と確認をするとジト目のロゼは「また朝になってなんか術覚えてたら嫌だもん」と言った。
ミチトは前回の事を思い出して「あ…」と言っている横でアイリスが「あはは、あれはママがやりました」と言ってもジト目をやめないロゼに「照れるなぁ」と言って誤魔化していた。
だが案の定アイリスは「この家で誰ともしてないよね?私はしたいな…」とミチトに迫りミチトは難色を示したが最後にはアイリスを受け入れていた。
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