第14話 フォースロット。

場外で大泣きのシーナとヨンゴ。まだよくわからないシローとヨンシーを見て顔をしかめたミチトはシーシーを起こして「まったく、無茶しすぎだ。術だって空っぽに近かったよ?」と微笑みかける。


シーシーは困り笑顔で「うん。でもね。私達もマスターを助けたいの。マスターは大変な思いをしたからそれは自分だけで良いって言うけど辛いんだよ」と言う。


「だからシヤに付き合ったの?」

「うん。シヤはもうすぐトウテに住むからトウテに住んだらマスターの代わりをしたいって」


「バカだなぁ、シヤはヤァホィさんのお手伝いなのにね」

「でも、私達は幸せだから恩返ししたいんだよ」


シーシーもシヤも芯は強い。きっと一晩中沢山話をしたのだろう。

それを察して「ありがとうシーシー、シーナ達が泣いてるからあやしてあげて」とミチトは言った。


シーシーは場外で泣いている4人の子供達をみて「うん」と言ってからミチトに「でもその前にマスター、私もマスターの娘?」と聞く。ミチトは優しく微笑んで「うん。当たり前だろ?」と言った。


「じゃあメロ達にするみたいにギュッとしてよ」

「え?いいよ?」


ミチトがシーシーを抱きしめると「お父さん、私達はお父さんが優しいのも大変なのも知ってるから助けさせてね」とシーシーが言った。


「シーシー?」

「いいの。シヤを起こしてね」


シーシーは場外に出て「ごめんねアメジスト」と言いながらシーナとヨンゴの元に向かうと2人はギャン泣きでシーシーに抱き付く。

珍しくシーシーでも泣き止まないシーナ達にシーシーが驚いて「あれ?お父さんが心配かな?マスターが起こしてくれるよ?起きてってやろうか?」と言って再度コロシアムに降りてくる。


ミチトはシヤに術を送りながら成長の程を見極めていた。

見た感じあれだけの戦いをしたのにシヤはそれほど成長をしていなかった。


安心しながら「ほらシヤ、シーナ達が来たから起きるんだ」と言って起こすと目を覚ましたシヤは状況を見て「くっ…、負けた?」と言った。


「当たり前だろ?シヤの気持ちは貰ったよ。ありがとう」

「俺も手伝うから言って」


「…まったく、ヤァホィさんのお手伝いをして仕事を覚える方が先だよ。ほら、珍しくシーナとヨンゴが泣き止まないんだよ。起きて抱っこしてあげなよ」


シヤは声の方を見て「何?シーナ?ヨンゴ?どうした?」と言ってしゃがんで泣きながら歩いてくる2人を抱こうとした時、「待ってシヤ!」と泣きながら言ったシーナがシヤではなくミチトの足に抱きついて「マスター、神様でも疲れちゃうから皆に任せて?」と子供らしからぬ言葉を発した。


ミチトが驚いて「シーナ?」と聞くと後からきたヨンゴが「本当だよマスター、シヤは俺たちの1番なんだからもっとコキ使って平気だよ」と言う。


「神様」と言ったのはかつてのシーナが使った言葉、ジャスパー・ワーティスの受肉術と反魂術で蘇ったシーナが死ぬまでの間にミチトと会った時に使った言葉。

「1番」と言う言葉はかつてシヤと一緒にエグゼ・バグに攫われて術人間にされたヨンゴがよく使った言葉。


「ヨンゴ?え?君達…まさか…」

「本当、夢みたい。また会えたねマスター」


「シーナ…君、生まれ変わって…」

「本当…シヤって凄い、どんな約束も守ってくれる。ヨンゴもそっくり、シローとヨンシーもそっくり、私もきっとそっくりだよねマスター」


事態が読めない周囲を無視して、シーナがシヤを見て「ありがとうシヤ。やっぱりシヤが1番だね。大好きよシヤ」と言う。


その微笑みは子供のシーナの微笑みではない。

かつてシヤが殺してしまった、あのシーナの微笑みだった。


それに気付いたシヤは「シーナ?」と聞き返したあとで「シーナ!」と言って前に出るとシーナは自分の手を見ながら「うん。なんでだろう?急に気が付いたらマスターとシヤとシーシーが戦っててマスターに何があったのか見えてきて助けたくて困って泣いちゃったよ」と言い、ヨンゴも「本当、お前いくら俺たちの1番だからってマスターに挑むか?まあそれくらいマスターの役に立ちたいよな」と言って明るく笑った。

その顔もシヤの息子の笑顔ではなくかつてのヨンゴの笑顔だった。


シヤは「ヨンゴ!ヨンゴなんだな!」と言って泣きながらシーナとヨンゴを抱きしめて「連れてきた…2人をマスターの元に連れてきた」と言う。



周囲は呆然とそれを眺め、事態を察した者は大騒ぎだった。

「うそ…生まれ変わり?そっくりだけど…」

「シヤ君の力はミチトさんとも真式さんとも違うけど…」

「シーナとヨンゴが帰ってきたの!?」

皆が驚きを口にする。


泣いているシヤの頭を撫でたシーナと背中を叩くヨンゴはミチトを見て「マスター、私達も力を貸すから1人で背負いこんじゃダメ」「本当だぜ、ヤキモキしちゃうよな」と言った後でシーシーを見て「ありがとう産んでくれて」「シーシーも大人になったよな」と言って笑う。


シーシーは「揃ったね。フォースロットが揃った。ここにシイ達が居ないけど皆揃ったね」と喜んでシヤと一緒に2人を抱きしめる。

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