第11話 剣術大会。

剣術大会は大盛り上がりだった。

前日のミチトとナハト、パテラの訓練を見ていた様子見だった剣士達は賞品がミチトの作る剣と聞いてこぞって参加をした。


当初の予定していた人数を超えていて、パテラ、ノルア、シヤ、シーシーが予選の係として名乗り出て一定時間を切り合って実力ありと判断をしたら予選通過、ダメな時は少しだけ実力を引き上げて倒す。


この段階で達人は居たがパテラやシヤ達の敵ではなかった。


これによりナハトとイイヒートの決勝戦は決まってしまっていた。


前日のミチトとの訓練によりナハトはガラッと変わっていた。

イイヒートはエンターテイメント性を気にして相手を立てながら華麗に倒して「ありがとうございました」と言うが、ナハトは相手の鼻っ柱を容赦なくへし折って「ありがとうございました」とだけ言う。


中にはナハトを闘神の七光りと馬鹿にして化けの皮を剥がそうと参加をした奴らも居たが逆にナハトの恐ろしさを見て、更にそのナハトをコレでもかと痛めつけたミチトに対してさらに畏怖の念を向ける事になる。



決勝戦。

「レイカー、一晩で変わったな。あの相手の剣に合わせながらも叩き折る剣技は見事だ」

「ありがとうございます副団長。僕は昨日生まれ変わりました。あの恐怖の後では怖さも何もありませんでした」


周りの声援を気にせず睨みあうでもなく向かい合うイイヒートとナハト。


「そうみたいだな。やるか?」

「はい。今日は勝ちを貰います。父と母とナノカ…後は兄が見ています」


「俺も兄さん達が見ている。女神も見てくれている。引けないな」

「では正々堂々、よろしくお願いします」


こうして始まった決勝戦。

イイヒートは決して手を抜かなかった。一進一退の攻防の中、最後の最後、死に臨んだ回数の差でナハトに負けた。



大歓声の中、大きく喜ぶことなく「ありがとうございました」と礼を言うナハト。


「くそっ、強いな」

「これまで副団長達が鍛えてくれたおかげです」


ナハトとイイヒートが握手を交わして表彰式になる。


だが、ナハトもイイヒートもミチトから剣は貰っていたのでナハトは四つ腕魔神の剣を貰い、即日換金をして両親と分ける。

イイヒートは貴族の息子らしく賞金も賞品も辞退をした。


結果、3位になった男がミチトに剣を作ってもらう事になる。

この男はジャックス領に住んでいる男で領主への紹介状も貰えて感謝をしていた。



表彰式が終わり、撤収作業の中、アメジストが「負けちゃったねイイヒート」と声をかける。イイヒートが申し訳無さそうに「すみませんアメジストさん!」、「ですが!」と続けたところでアメジストは「知ってる。本気だったから許してあげる」と言って微笑んだ。


その直後、イタズラの顔になって「本当は優勝したらマスターが作る剣を私が渡してあげながらキスしてあげようと思ったけど残念だったねー」と言う。



一瞬の間の後でイイヒートは「え!!?キ…キキキ…キス!?」と聞き返す。

殴られ過ぎて自分の耳がおかしくなった事を疑ったがすぐにイタズラの顔をしたアメジストは「うん。優勝だったら唇だったのになぁ〜」と言って笑う。


イイヒートは目の色を変えて「お待ちください!今すぐレイカーを蹴散らして参ります!せめて!せめて頬にお願いします!」と言うと走り出した。


そのままコロシアムにナハトを連れ込んで圧倒をする。

それはイイヒートとナハト双方の手抜きを疑われるほどの差であったが、賞品に目の眩んだイイヒートはナハトの本気の剣すら「甘い!お前の剣は見切った!」と言って攻撃の全てを身体を使って封殺し、ボロボロになりながらも圧倒をした。


「勝ちました!」と言ってニコニコ笑顔だがボロボロになったイイヒートを見てサンフラワーが「アメジスト〜、仕事増やさないでよ」とボヤくが、アメジストは「イイヒートには私がヒールするから大丈夫だよ」と言う。


「大怪我だよ?1人じゃ大変だって」

「大丈夫、マアルちゃんにもヒールを教える約束だったからやるし、ベリルー、手伝ってー」


アメジストはマアルとベリルを呼んで3人がかりでイイヒートを治すと「もう…勝てたじゃん」と呆れる。


イイヒートは清々しい表情で「すみません!アメジストさんが関わらないと入れない領域があるんです!」と言って謝る。



アメジストはイタズラの顔で「ベリル、それってどう思う?」と聞く。

これがローサならアメジストに合わせてくれるがベリルは素直に「イイヒートお兄ちゃんはアメジストお姉ちゃんが大好きなんだよ!」と言う。


アメジストは想像の流れと違った事に「うぅ…そう来たか」と言って照れると、今度はマアルに「マアルちゃんはどう思う?」と確認をとる。


「好きな方の為に本気になれるというのはよくわかります。ですのでご褒美をあげてください!」

「うぇ?そっち?…うぅ」


照れて焦ったアメジストにイイヒートが畳みかけるように「よろしくお願いします。アメジストさん!」と言って前に出る。


アメジストは真っ赤に照れながら「お疲れ様イイヒート、次はストレートに優勝してよね?」と言ってイイヒートの唇にキスをした。


イイヒートは直立不動のまま涙を流して気絶をした。

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