第9話 ロゼの意地。
掌を見ながら思案したロゼは「んー…?パパ、どうしよう?」と質問をしてミチトは「どうしたのロゼ?」と聞き返す。
「右手で魔水晶に術を流して左手でネックレスに術を流してくっ付けるよね?」
「うん。それがいいよね。自分の思ったものなら片手でもいいけど人の希望に沿うときは片手でやるには無理がある作業だね」
「どうすればいいかなぁ?」
「考えてご覧。なんでもパパに聞くとジェードに笑われるよ?」
ここで合わせるように「まあ、ロゼはここら辺かもな。天才のトゥモさんならやれたりしてー」とジェードが挑発をする。正直以前までのロゼなら「そうだね。俺には無理だー」と笑って投げていたが今は真式の自覚もある。同じ真式のトゥモに負けたくないという意地もある。
「俺はロゼ・スティエット!パパの息子だからやれる!ジェードは黙って見てて!」
傍目にキレたロゼはミチトを彷彿させる顔でライブは「あ、ロゼがキレた。どうなるかな?楽しみ!」と喜ぶ。
「マアル!ごめん!我慢して!」
「え!?はい!」
「左手でネックレスに術を流して魔水晶を受け止める用意!右手は魔水晶に術を流してマアルの好みの色を着ける!それでマアルがまだ遠い!ごめんマアル!貴族の女の子なのに許して!」
ロゼはそう言って真剣な目でマアルに顔を近づけるとおでことおでこをくっ付けて「見えた!マアルの欲しい色と形!ごめんもう少しこのまま!流して合わせる!」と言ってネックレスを完成させた。
見本は球体だったが出来上がった宝石はダイヤモンドカットをされていて見本よりも濃く深いピンク色だった。
「出来たー、疲れたー。ごめんねマアル。近すぎたよね」
「いえ、ありがとうございます!」
ニコニコと嬉しそうなマアルを見てホッとしたロゼは「はい。あげるね」と言うが、ジェードから「バーカ、着けてやれって」と言われると、ロゼは「あ、そうか」と言ってマアルが膝の上にいる事を気にもせずにネックレスをつける。
サンクタはいよいよ震えてしまうが「父上、瞑想がオススメです。見ないで済みますよ」とアルマに言われてしまう。
「どうかな?」
「ピッタリです!」
「うん。似合ってる。見本の淡いピンクも可愛いけど濃いピンクも似合ってるよ」
「似合ってますか!?」
ここでジェードがニヤリと笑うと「ロゼ、随分見覚えのあるピンクだよな」と話しかける。
ロゼが「え?」と言って濃いピンクを見ているとハッとなって「あぁ!!俺の髪色!?」と慌て、マアルはジェードに余計な真似をするなと睨み付ける。
「マアルごめん!本当にこの色でよかったの?もしかして俺が近かったせいで欲しい色が乱れたとかない?」
ロゼは勘繰る事なく心配してマアルを見る。
マアルは未だにロゼの膝の上で距離が近い。
「いえ、私の欲しかった色と形です。これはロゼくんが作ってくれた記念のネックレス。なのでその恩を忘れないためにもロゼくんの髪色にして貰いました」
「そうなの?マアルって真面目だよね。本当は何色が好きなの?」
「忘れました。欲しい色があればそれは父上に買ってもらいます。今の私はこの色が好きなんです」
聞きようによっては告白に聞こえてしまうがロゼもマアルも気付かない。
ジェードはいい感じになってくれたのでひやかしで口を挟まずに「ロゼ、マアルに一個頼めって」と言う。
「ジェード?」
「お前、それで終わらせたらあとが怖いぞ?良いのか?」
周囲を見回して「あ…確かにそうだ」と言って青くなったロゼは「マアルごめん!婆ちゃん達に見せるから付き合って!」とお願いする。
「構いませんが…」と言うとマアルを抱っこしてエスカの前に行って「山婆ちゃん!見てた!俺パパの真似してネックレス作ったよ!どう?」と言うとマアルが「山の…お婆様…?」と言った後で以前ティナに頼まれていた事を思い出して「お婆様、はじめまして。マアル・カラーガと申します。ロゼくんとは訓練をする仲です。こうしてネックレスや指輪を作ってくれて私の弓の訓練にも付き合ってくれています」と挨拶をするとずっと泣きっぱなしのエスカはまた泣いて「はじめまして。エスカ・レイカーです。ロゼくんの…お婆…」と言いかけて止まるとロゼが「婆ちゃんだよ!何照れてんの?シア!山婆ちゃん照れてる!」と言ってエスカの手を持つ。
それを見たティナは「これよ…、コレが怖いのよね」と言い、ローサは「今は強味よね」と相槌を打つ。ソリードは「流石はイブさんの息子よ」と褒める。
横に来たシアも「お婆ちゃん?なんで照れるの?お婆ちゃんでしょ?私達のお婆ちゃんだからネックレス付けてるんだからね!」と言ってお揃いのネックレスを見せる。
エスカは「そう…、そうよね。ありがとうシアちゃん、ロゼくん」と言った後で「マアルさん。ロゼくん達のお婆ちゃんです。ロゼくんをいつもありがとう。今も抱っこされてて恥ずかしいのに我慢してくれてごめんなさいね」と挨拶をするとロゼが「あ!慌ててて抱っこしてた。ごめんねマアル!」と言って下ろすとマアルも抱かさるのが当たり前になっていたことに気付いて赤くなる。
その後でローサ、ティナ、ソリードにもネックレスを見せて「褒めていいよ!」と珍しくアピールするロゼを3人が褒める。
ロゼはそのままマアルと手を繋いだまま「パパ!出来たよ!見て!」と言って見せに行く。
ロゼの周りにはリナ達も居て「凄いね。本当にロゼは凄い」とミチトは褒める。
ちなみにトゥモはミチトの足元にいて早速指輪と銀塊を渡されて思案している。
「へへ。トゥモ、後で教えてあげるよ。トゥモならもっとやれるって」
「まだ参ってないからいらない」
「ロゼは将来はアクセサリー屋さんでもやる?」
「ふふ、魔水晶を使った魔術師専用のアクセサリー屋さんとか大人気だわ」
「えぇ?トウテならいいけど遠くでやるのはつまんないよ」
「ロゼは好きな事をコレから探すからリナさん達は変なこと言っちゃダメですよー」
イブの一言にリナ達も「確かに」と言う。
イブはニコニコと「マアルちゃん。難しいネックレスを選んでくれてありがとうございます。ライブとも訓練してるんですよね?今度はイブとも訓練しましょうねー」と言うとマアルは「はい!ありがとうございます!」と喜ぶ。
「うわ、ライブママの訓練は本当に強くなる訓練なんだけど、ママの訓練は気付かない間に仕込まれるからなぁ」
「お母様達の訓練は楽しみです!リナお母様からはお料理を、アクィお母様からはマナーを教わってメロお姉ちゃんからはスイーツです!」
それならとロゼが「じゃあ今度アルマとトウテに泊まりにくれば?」と聞けば勿論「はい!是非!」とマアルは言う。
ここでアクィが「ふふ、それはいいけどサンクタ様もネックレスが見たそうだから行ってきなさい」と声をかけるとローサが「ロゼちゃん、他所行きでやってね。ローサお婆ちゃんのお願いよ」と注文をつける。
「うげ」と言ったロゼは姿勢を正すとキチンとサンクタとナイワの前で頭を下げて「サンクタ様、奥様、お嬢様と訓練をさせていただきました。つい夢中になってしまうと周りが見えなくなり、お嬢様を抱きかかえてしまいました。申し訳ございません」と謝ればサンクタは「いや、訓練ならば仕方ない。見させてもらった。腕を上げたようで何より、だが娘が嫌がった時は自重してくれ」と言い、ナイワは「ありがとうロゼくん。マアルもステキなネックレスを貰えて喜んでいます。これからも遠慮なくカラーガにいらしてくださいね」と言葉を送る。
サンクタはヤキモチを妬いていた。
だからこそ普段なら絶対にしない「見えない」と言いながらマアルを抱き上げて「よく見せてくれ」と言ってネックレスを見ていた。
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