第3話 告げられた真実。
もうミチトも限界が近い。
泣く母を見ていたくない。
母は泣けば気が済む。
謝れば気が済む。
だがミチトは許していない以上消化不良が残る。
それを肌で感じたリナが真面目な顔で「アクィ、少しだけズルをしてくれない?」と言って手を出す。
アクィは秘密の話があると思ってリナの手を取って心を読むとすぐに頷いて「ええ、認識阻害とロリーさんにこの席には人が近づかないようにして貰うわ」と言って術を使う。
イブはアイリスの顔で子供達に「大切なお話をしますからこっちに来てはダメですよー」と指示を出す。
本気の顔のイブでロゼはすぐにトゥモに「見ようなんてしちゃダメだ」と言い、ラミィも「貴い者はそんな事はしないのよ」と言う。
このやり取りの中、ミチトは余裕が無くて「リナさん?アクィ?」と真意を伺う。
リナは「ねえミチト。いい機会だから少しだけ踏み込もう?お義母様もそっちの方が気持ちが楽だよ」と言いながらミチトの手を取るとアクィも「ええ、リナさんの考えは素晴らしいものよ。ミチト、前に進みましょう」と続ける。
そしてアイリスも「お義母様、辛くてもミチトさんの疑問には答えてあげてくれませんか?」と言った。
「イブ?リナさんと何か話したの?」
「ううん。もうずっと昔…私が歳をとった時にミチトさんのお陰で気が晴れた事をミチトさんにもして欲しいの。そう思ったらなんとなくだけどリナさんの言いたいこととかわかるから」
エスカは涙目だが「どうぞ言って」と言い、ミチトは困惑したがリナが「ミチト、前に一度…ジャスパーを倒した後で私に「なんでだろう?」って言ってたアレをお義母様に聞いてみなよ。答えが出れば一つスッキリする。答えて貰って信頼関係が築ければまた少しだけ変わるよ。ミチトはナハト君のお兄さんなんだからこれからも繋がりは残るよ」と言うと、ミチトは少し困った顔で「…あれ……ですか」と言った後で深呼吸をして「一つ、嘘偽りなく教えてください」と言いながらエスカを見る。
その瞬間に「ミチト、心眼術はやめなさい。信頼関係に術はいらないわ」とアクィが注意をする。
困り顔のミチトにライブが「またリナさんに心配性の虫って言われるよ。いいじゃん。私達も居る。私達が嘘が本当か判別する。私達を信じてくれるよね?」と言うとミチトは「ありがとうアクィ、ライブ」と言ってからもう一度エスカを見て「母さん。何故スティエット村の連中は散々俺を蔑み、見下し、馬鹿にして虐げてきたのに一度として父さんがオオキーニの人だと言わなかったか教えてください」と聞いた。
一瞬の沈黙の後でエスカは口を開いた。
「それは…、父さんの…あなたのお爺さんがした唯一絶対の命令。あの人は村長の立場でミチトを甘やかせないとして見守る事しか出来なかった。それでもかつて生まれたばかりの…マ・イード人とは少し違う目鼻立ち、探せば見つかるオオキーニ…ファルの痕跡を見つけて悪く言うマロ達に父さんは「戦争の禍根が残っていてオオキーニの血が入ったミチトを憎む気持ちは我慢する。だが決してミチトに罪はない。だからオオキーニの血が入っている事を告げる事だけは許さない。それを行ったものは誰であれ村から追い出す」と言ったわ」
「…お爺さんの…命令」
「ええ、あの人たちは「エスカの子だから」「ファルの子だから」「オオキーニの血が入っているのだから」と何かにつけて「だから」と言って自身を正当化した。だから父さんは唯一…戦争の禍根が残るこの国で1番のネックになる父がオオキーニ人と言う事をミチトに聞かせる事だけは止めたの」
「マロ達はそれに従った…」
「ええ、でもマロや数名は大人になったミチトにその現実を突きつけて絶望させてこの国に居られなくするか、村にしか居場所がないようにすると言って打ち明ける日を楽しみにしていた…」
メロの母、マロならやりかねない。
ミチトはそう思っていて顔はドンドン暗くなる。
アクィは話の内容を見かねて「それでお義母様たちはミチトを逃してあげたんですか?」と言うがそれは違う。
横でアイリスとライブが「あちゃー」という顔でアクィを見る。
「違うよアクィ。この人はそんな事…俺の事なんてどうでもよかったんだ」
そう言ったミチトの声は怖かった。
「ミトレさんと結婚をした自分、生まれてくるナハト…その事しか考えていない。俺を思うのなら戻ってきた時にキチンと告げるべきだったし、父さんに関してもミトレさんにキチンとハッキリ言うべきだった。アクィの言うように逃す気があったのなら全てを告げて逃げろと言えばいい。お腹の子が出来たから、あなたどうする?と察しろと言う空気をこの人は出したんだ」
誰も口を開けない中。ミチトは「ごめんなさい。席を外します」と言って立ち上がるとその場から消えた。
氷のような冷たい眼差しすら向けられなかった事で泣き崩れるエスカにリナとアイリスが付き添い、また甘い考えでミチトを傷つけたと愕然とするアクィにはメロが付き添う。
「ライブ、ミチトさんをお願い」
アイリスに言われたライブはミチトを追った。
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