第2話 麦体験。
麦体験はスカロも参加をした。
スカロは気が触れたのか天空島から直滑降に落ちて行き、見ていられないメロが「メロが行く!」と言って追いかけてしまう勢いだった。
追いついて心配するメロにスカロは「ガットゥーの麦が高品質でマドレーヌの出来も今までのケンストンから買っていたものと段違いで是非ともこの手で触れたくてな」と言って麦畑に降りるなり手で触れて感動している。
ミチトと言えば今回はイイーンダを連れ立って降りていてイイーンダは「ありがとうございます!素晴らしい景色です!」と喜んでイイテーロ達に感動を伝えて「お父様、本当に自然派ですね」と言われていた。
今回もロゼとマアルはセットで落下をしていて、「怖くない?」「大丈夫です!ロゼくんを信じています!」とやっている。
アルマはジェードと落ちていて「マアルって家でどんな感じ?」と聞き「ずっとロゼのくれた指輪を眺めてるよ」とアルマが返す。
「あー…、じゃあそろそろ満足そうな指輪が出来てたから見せてこいって言うわ」
「ありがとう。ジェードは来ないの?」
「久しぶりに訓練するか?」
「是非とも!」
2人は景色も楽しむが会話は訓練内容の事で盛り上がっている。
トゥモはミチトから「思いやりと制御が甘いから訓練だよ。浮遊術の嫌な人たちはトゥモにくっ付いてね。怪我をさせないでね」と言われて術適正のない全員分の浮遊術をやる事になる。
それはまだ真式の自分なら貴い者の仕事として嫌ではないが「ごめん!ごめんねトゥモ君!」と言ってナハトがベッタリとくっ付いている。そして、そのナハトにナノカもくっついていて邪魔で仕方がない。
トゥモが「ナハトおじさん…邪魔すぎ。俺なら離れてても浮遊術の範囲にできるよ?」と声をかけても「離れる!?ここで!?ダメだよ!死んじゃうって!」と言ってナハトは余計くっついてくる。
もういい加減にして欲しいトゥモが「タシアー、剥がしてよ」と言うとタシアも「んー…まあいいかな」と言ってナハトに手を伸ばしてしまう。
「ダメだよ!ダメだってタシア君!」
「ナハトおじさん。ヒノお姉さんがナハトがワガママ言ったら教えてって言ってたよ?」
ナハトはヒノの姿を思い出すと身震いをして「…離れるよ」と言う。
そしてナハトはトゥモから手を離すと「ナノカ!ナノカ!僕を離さないで!」と言って必死にナノカに抱きついている。
シアやタシアも術は嫌いだが浮遊術や身体強化、滑走術は気に入っていて自分で使う。
今も空中遊泳を楽しんでいる。
この姿がミチトには「やはり天空島からの落下訓練は間違っていない」と思わせていた。
麦体験は主に四つに分けられた。
一つ目は麦ふみ。これはまだ幼いシーナやヨンゴに大好評で楽しんでいる。
二つ目は刈り取り。これは刃物を使える子供達に大好評でスカロも「ふむ。シア、刃先を真っ直ぐにする訓練につながるぞ。しかもこの鎌というのがいい。全く別の道具でもやり切れるようになるんだ」と言うとシアは熱心に取り組んだ。
三つ目は麦わら帽子は難しいので麦のコースターを作る体験。ここで真価を発揮したのはミチトの母エスカだった。
「大丈夫、お婆ちゃんが軌道修正してあげますからね」と言うと困るコードやベリルを助けてしまい、他の子供達も我先にと殺到する。
ミチトもこれには驚いて「やれるんですね」と言うと「あら、やれるわよ。知らなかっ…知らないわよね。ごめんなさい」と言って泣き始めてしまい、リナとイブから注意を受けていた。
四つ目のパンケーキ作りはスカロの独壇場で「当主!レシピが違う!この麦にその分量では粉が死ぬ!」と言い出して即時に最適解を用意する。
それは素人目にも全く違うものでロリーは「サルバンさん、このレシピで麦体験をしても?」と聞くとスイーツをこよなく愛するスカロは「当然だ!毎年初出しの粉をサルバンに持ってくるがいい!レシピを返す!毎年変わるから必ずだ!怠ってはならない!」と言い、ロリーはサルバン監修のパンケーキが作れる麦体験にしようとホクホクになった。
晩餐。
アプラクサスとシックがいる同じ場になぜか居るミトレとエスカ。
本来なら平民とは席どころか部屋も分けるべきなのだがナハトが出場選手でアプラクサスは激励を贈りたい所にシア達がお婆ちゃん達も一緒がいいと言い出してしまい同じ場になる。
一通り食べ終わるとナハトとイイヒート、ナノカとアメジストはアプラクサスの元に呼ばれて激励を贈られる。
子供達はエスカ達と食べると言ったのに、食べ終わるとさっさと子供達の集まりを作ると和気藹々と盛り上がる。会話の内容は主に情報交換で、イイテーロとロワがアルマからカラーガについて聞いたりタシアからディヴァントについて聞いている。
結果、ミチトはこの場で両親を見捨てるわけにもいかずにミチト達夫婦5人にミトレとエスカを合わせた7人で座っていて、近くではスカロはイイーンダに麦の出来を感謝し、イイーンダは自分が良かれと思った事でスカロに喜んでもらえて嬉しいと返す。
そう、ガットゥーの麦が高品質になったのはイイーンダの才能に由来していた。
メロはパテラとサンクタ、ナイワ、ノルアとお茶をしてウシローノ達はアプラクサス達の代わりに大会の運営としてミスは許されないと再度4人で集まって確認をしている。
めいめいの時間の中、ミチトは子として親に向き合い、リナ達は妻としてその横にいた。
「ミチト、今日も会えて嬉しいわ。本当にナハトが巣立ってから会う機会が増えて嬉しい」
「まあ、シア達と仲良くしてくれてありがとうございます」
「本当、沢山の孫に会えて嬉しい」
「それは良かったです」
なんとも言えない塩対応の会話。
アクィはローサやソリード、ティナから2人のやり取りを見せるように言われていたがこれはとても見せられたものではない。
見かねたライブが「ミチトから聞いたけど将来はズメサに降りるんですよね?」と会話を切り出す。
「ええ、ナハトがミチトから教えてもらったって、きちんと責任者の方とも話をしたって教えてくれたわ」
ここでミトレが「そうだミチト君、マロの事なんだがなんとかならないかな?」と言う。
「ミトレさん?なんとか?いくらマロでも殺すのは嫌ですよ」
ミチトの嫌そうな顔。
困り顔のミトレは「いやいや、それではないよ。前にミチト君がマロに村から出たいと思わないようにしたと言ったよね。話したら麓のズメサすら嫌がってね」と言う。
「ああ、確かに。ちょっと待ってくださいね………はい。もう直しました。今度はミトレさんと母さんの言う事は聞いて自分から都会を目指したいと思わない、言い出さないようにして、ズメサの人達とは絶対にトラブルを起こさないように命じました」
簡単にやってしまった事の説明をするミチト。
「え?…今やったのかい?」
「ええ、別に行って何とかするほどでもありません」
これにエスカは「本当にミチトは凄くなったわね」と驚いた後で涙を流して、慌てて涙を拭うと「ごめんなさい」と謝る。そして「全部に理由がある事に気づくの。だからどれだけ謝っても許されないわよね」と言いながら更に泣く。
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