第7話帝国三大派閥
大将軍府、それは帝国軍部三大派閥の1つである大将軍が、住んでいる館である。
本来なら、仕事が終われば家に帰るのが普通だが、三大派閥はそういうわけにはいかない。
いつ、何が起こるかわからない為に備え彼等はそれぞれに居を構えて住んでいる。加えて、一緒にたくさんの兵士とも住んでいる為、有事の際は最速で軍事行動が起こせるわけだ。
帝の信任により、大将軍府の兵数は五千、総督府は三千五百、近衛府は二千五百である。
一番兵数が、少ない近衛だがその実兵の質は精鋭揃いで、たとえ、倍の兵数でも押し返せるほどの力量はあるとの事。
この三大派閥に入るには、兵士の中でも優秀でなければならないが、身分は問わない為大体の人は昇進するより、派閥に入るほうをえらんでいる。
一般の足軽や侍大将が入るには一応許可が必要になっている、どの府も帝直々に、任が下されためでもあり、勅命などの機密が漏れないようにするためであるのであって、アポなしで入るのはもってもほかなのであり、最悪門前払いされてしまう。
「(今、自分達がやろうとしていることなのだが、門前払いされてさっさとかえりたいのに…。)」
普通なら、そうなる筈なのだが、大将軍府にいた衛兵は、引きずられる自分と引きずっている志帆を交互に見ながら。
「これは、志帆様に昌月様、また何かしでかしたのですかな?」
白髪混じりの衛兵がどこか懐かしむ様に言うに対して、志帆はどこか恥ずかしそうにしながら頬を指でかいていた。
「い、いや〜、別にそんな、子供の時みたいな事はしてないわ。」
今日、高虎に言われたことに、後ろめたさがあるのか、歯切れが悪いもの言いになってしまうが、彼には見透かされていた様だった。
「余り、ご無理はなさいますな。近頃、高虎様の顔色が優れていませんでしたので、余り心配させてはなりませんぞ、お元気なのは嬉しいですが、余りお転婆が過ぎますと。」
「わかっているわよ、全く父様と同じことを言わないで、末虎あなたは、前から思っていたけど、なんで私達の侍従の癖してなんで大将軍府で働いているのよ?」
説教された事に、イラついたのか、志帆は短く毒づくが、末虎と呼ばれた老兵はたじろがず、その場で短く息を吐いた。
「それは、あなたの父上のせいですよ、そもそも私が大将軍府に移ったのは、なかなか総督府に帰らない為ですから、お忘れなく。」
「そ、その件に関しては、本当にすまないとおもっているわ、でその父上なんだけどいるよね?」
末虎の、圧に押されながらも志帆は、短く用件を伝えてる。
ここで、説教と一緒に愚痴を聞くわけにはいかないの思いをあったのだろう。
「毎度のことながら、いつもの面子で、話し合いと言う口実の宴会をされておられます。場所はおわかりでしたよね。では、どうぞお入り下さい。」
「大丈夫なの?、調べたりしないの?」
志帆が、疑問に思い尋ねると、末虎は自分達の肩に手を置き。
「この、私があなた達を間違える訳がありませんよ、もし間違えていたらあなた達はここに立ってはいませんぞ。はっはっはっは!」
物騒な事を言いながらもう一度肩を叩かれて、自分達は大将軍府の門をくぐった。
「ったく、久しぶりにきたな全く。」
目の前に広がる豪華な扉の前で悪態をつく。数年ぶりにここにくるのだが妙に落ち着かない無いのはあちこちが黄金、作られていて反射の光が目に入り痛むためだ。
志帆は慣れているのか、無言で扉の取っ手ににふれている。
そして、そのまま勢いよく、扉を開く。
「(相変わらず、こっちには相談無しか〜、心の準備があるってのによ。)」
止める暇も無く、開け放たれた世界が否が応でも目に入ってしまう。
そこは、煌びやかに広がる黄金の広場であった、人が軽く二十人いや、それ以上入れそうなくらいに大きく、ところかしこに散りばめられている黄金に圧倒されてしまう。
その広場の中心に見覚えのある、四人が盃を片手に持ち地べたに座り飲んでいたのだ。その中に高虎も一緒になって飲んでいたのだ。
「おーい、お前達きていたのか、早くこっちにこいよ!」
赤ら顔で、もうすでに出来上がりかけている、今回の式典の黒幕が陽気に声をかけてくるが、自分達は何も答えず、彼らのいる所まで向かう。
それに合わせ、残りの三人は自分達の方に向き直り立ち上げる。
ほんの数秒程緊張が走るが、最初に口火を切ったのは志帆からだ。
「父様、兄上、叔父様方、今回昇進の件で、挨拶しにきました。」
そういうと、志帆は深々と頭を下げた。自分も一緒になって頭を下げる。
「そうか!、そうだったな、だがそこまで律儀にしなくても良いのだ志帆よ。もう式典で、挨拶している様なものだから、それに家族なのに、家で言えば良いのに…。」
志帆に対して、三人の壮年の男の中で一番左端にいる男が答えた。
「いや、父上、志帆の事です。この挨拶は形だけで、本当は父上に会いたかったからなのですよ。全くいつまでたっても子離れガッ!!」
高虎さんが言い終わる前に、志帆の拳が懐に入り哀れな兄は、そのまま崩れて落ちていった。
「そうか!、それならば、そうと言ってくれれば良いものを、よくやった志帆よ!流石自慢の娘であるな〜!」
言いながら。志帆の父親は、志帆の頭をなでまわしている、志帆は、何も言わなかったが。顔を赤らめながら一身にうけていた。
余り、見つめているとそこに転がっている、哀れなものと一緒になりたく無いため。視線を逸らす。
「なんだ、昌月、お前もいたのか、側に来い、立派になったんだ、もう少し、顔を見せてくれ。」
「はい。」
容赦のない鉄拳が飛んでくるかもしれないため、少し距離をとりながら近くまでいく。
「やっぱり、近くで見ると凛々しくなって、昌景からも何か、いったらどうだ?」
呼ばれた名前に、少しだけ身構えてしまう、一体どう言われるのか、だが。
「某からは、特には。だが、余り急かなくても良い。」
元々、期待していなかったが、予想よりも遥かに下であった。自分は、何も言わずに、顔を上げずにいた。
「相変わらずだな、もう少し褒めるとかしたらどうなんだ?自分の息子だろうに!?」
「貴殿の様には、できない。某には某のやり方があるゆえに。わかってくれるか?直孝殿。」
「良さないか、二人とも、今日はこの二人の祝いの為に開いたささやかながらの宴会だろ、いつもの教育討論はさせねぇぞ、さぁ二人とも!のもうじゃあないの!」
あわや、口論になりかけた二人をとめたのが真ん中にいる、老人だ。この人物が、帝国の大将軍を務めておられる、狼弦、その人である。
かの老将の、左にいるのが志帆と高虎さんの父親で、帝国総督直孝、別名迅雷の直孝で。
右にいるのが、自分の父親であり、帝国近衛大将昌景、別名武臣、昌景と呼ばれている、帝国最強の武人である。
彼等三人は、ほぼ同期みたいな間柄で、よく三人で飲んでいることが多い。
昔はよく、帝国一の義兄弟として有名でもあり、三派閥が、仲が良い理由の一つとして帝国の民たちにとって常識になりつつある。
「まずは、あらためてだな。さっきあったぶりだが、あらためて言わせてもらおう。二人共昇進おめでとう!」
狼玄は、言い終わると同時に盃にあった酒を一気に飲み干し、まだうずくまっている男の方を、見てから、短く息を吐いていた。
「それと、すまんなこんな大事になってしまってな、何しろ帝国で誰も知らないものがいない二人の子供が、揃って昇進するんだからな、簡素なものには、出来なんだ。まぁ、ほとんどはそこのこやつのせいなのだがな。」
殺気でも感じたのか、うずくまって唸っていた高虎さんがむくりと起き上がっていたのだ。
「天下の、大将軍閣下にお褒めに預かるとは、光栄の限りです。」
「ぬかせ!?、俺達と陛下がどれだけうごいたか、
よりにもよってあの頭でっかちの左大臣殿まで動かすとは…、お陰でこんな大層な式典聞いたことがないわ!」
なんの悪びれもせずに、高虎さんはにこやかにお辞儀をし、その態度に頭を抱えてしまう狼玄さん。
実をいうと高虎さんは、帝国では珍しい文武両道の方で、軍人として侍大将の地位に属し、はたまた文官の方では、大納言のという帝国の政治の中枢にいる、珍しい人物なのである。
その為今回の件で、自分が持っている人脈を最大限に使ったらしく、自分らの昇進が大事になってしまったのだ。
「まぁ、終わった事だからよしとするしかないのだがな、本来なら止めるべき父親が…。」
チラッと、狼玄さんは直孝さんに非難の視線を向けるのだが。
「流石、俺の息子だ。これくらいの事をしてくれないと困るというものだ。」
ベタ褒めするだけで、咎める事はしない、むしろもっとやれの精神なのだ。
「昌景…」
たまらず、もう一人の同僚である、自分の親父にも助けを求めるが、何も言わずに、ただ酒を飲むだけであった。元々、助ける気がないらしいようだ。
親父の態度を見た、狼玄さんはガックリ、肩を落としてげっそりした顔で。
「すまないが、少しだけワシの愚痴だけでも聞いてはくれないか?」
断ることも出来ず、自分達はこの帝国重鎮から愚痴を聞く、名誉を賜ったのだ。
そのまま、数時間年寄りの話を聞くハメになったのはいうまでもない。
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