第5話式典式
気を落としながら、式典会場へと向かい、控え室で少し待つ事になった。
若干顔に出ていたのか、式典会場の受付さんに本気で心配されてしまった。
「で、これからどうするんだ?志帆さんよ。」
「うーん、別にどうとしないかな?」
これからどうやっていくか相談したつもりだったのだが…、あまり深刻そうでなかった。
「いや、どうとしないって、わかるだろメンタルが崩壊したお前さんの兄貴は、これからこき使う気だぞ?、一体どんな厄介ごとを任されるやら…。」
「(大方、今までの腹いせでしこたま無理難題を、ふっかけてくるかもしれんと思うと、うっ背中に寒気が。)」
寒気を感じながら、不安いっぱいな目でしほを見ると、彼女は呆れたように短く息を吐く。
「大丈夫だとおもうわ、仮に無理難題だったとしても、そう見えるだけでギリギリ私達ができる範囲にするつもりだと思うわ。まぁ、そこは癪だけど流石と言わざるえないわ。」
不安に感じる自分と違って、志帆は諦めたていたのか、ヤレヤレと首を振りながら少し不機嫌そうにいう。
「まぁ、そこが、あの人が若手のホープって言われる。所以だからな、凄いよお前の兄貴は。」
「あの、兄貴を今頃褒めても何もでないと思うけど、それにあの兄貴はひとつだけミスをおかしているわ。」
そっけなく彼女は言うと悪魔のような笑みをこちらにむけてくる。
「ミスとは、なんだ?」
「(またよからむ事を考えているなと思ったが、無視するわけにはいかない、これから自分の副官になるのだ。話だけでもきいとかねば。あと、本当によからぬ事なら全力でとめねば!)」
「それは、私に部下を与えたことよ、今まで一人でなんとかしようとしたからバレてしまったのよ!
でもこれからは、部下を持てる!だから今まで手が回らなかったことにも回るようになる!結果バレることはないわ!」
自信満々に言うに彼女に対して自分は、完結的につげてやる。
「それをやろうとして、何人ことわられたと思っているんだ。」
「 ハッ!?そうだったわ!?、部下だからといってなんでも聞いてくれるんじゃあないのだった!?」
なにやら、致命的なことに気づいて頭を抱えてはじめる我が副官殿に、こっちまで頭が痛くなる。
「(ハァー、とりあえず少しの間は無茶をせずにやっていくしかないということかな。」
そんな、中身のあるようでない様な会話をしていると、控え室の扉がゆっくりと開く。
「今、式典が始まりました。まもなく呼ばれると思いますので、どうぞ。」
「わかりました。」
さっきまで頭抱えていた残念な奴とは、思えないくらい、冷静さを取り戻し、静かに立ち上がる。
「では、行こうではないか、昌月殿。」
「わかりましたよ。」
苦笑を浮かべつつ、彼女の後ろについてく。
控え室から出て、少し歩いていくと大きな扉の前で足を止める。
同時に式典の進行役であろう、少し興奮気味の声がこの扉を越えて聞こえてきた。
「さぁ!!、皆さん!!待ちに待ったこの時がきました!、では御登場してもらいましょう!我等が期待している、次世代の英雄たる方々を!」
捲し立てる様にいう、彼の言葉に熱がこもっていたのがここからでもわかる。
同時にタイミングでもわかっていたのだろうか、門の近くにいた門兵が扉をゆっくりと開け、中に入る様に促す。
「(ハァー、なんでこんなにも盛大にやるのか。)」
あらためて、感じる温度差に少しだけ嫌気がさすが、すぐにそんな考えを振り切り扉の向こうに広がる自分の晴れ舞台になるであろう場所へと足を進める。
そこに広がっていた光景に自分は唖然としてしまう。
まず、最初にでむかえたのは、左右に並ぶ、同僚達、それだけならまだよかったが奥へと向かうほどに帝国の重鎮や、街の人達の歓声が自分の耳へと叩きつけられた。
「(嫌な、予感はしていたがこうもここまでとは、流石にやりすぎだろう。)」
思わず耳を塞ぎそうになりそうになるのを堪え、笑顔で手を振りながら、早歩きになりながらさっさと通り過ぎることにする。
途中、同僚陣から何か囃し立てる様な声が聞こえたのたが、この祭りの様な活気のある歓声にかき消えて全く聞こえないのだが、志帆は自分と違って、この状況になれているのか、彼らの方に近づき談笑していたのだが、偶然にも耳に入ったらしくかおを真っ赤にして同僚に飛びかかろうとしていたのを首ねっこを掴んで強引にもでも引っぺがし、さっきより早足で、高虎がいるであろう場所までむかう。
「では、これより授与式を始めるのだが、双方大丈夫か?何か疲れきってはいないか?」
さっきの進行役とは変わって、いかにも厳しめな壮年の男性が心配そうにこちらをみている。
「あ、あぁ大丈夫です。少しこの熱気に当てられただけかもしれません。」
呼吸を整えながら、息を切られせる原因を作った奴を、疲れた目で睨む。
睨まれたとうの本人は何も言わずにそっぽを向いていた。
「(この狂人は一体何にキレていたのか、まったくわからん。あの後も何回か飛びかかろうとしていたのを止めに入ったりしていたのがだがな。)」
そんな副官の狂人ぶりについて考えていたがすぐにやめることになる。
ドン!、ドン!と、どこかに用意してあったのであろう、太鼓の音が響くと今まで騒がしかった歓声が一気に静まり返り、皆式典の方へむきをなおしている。
それは乱れることは無く、ここに並んでいたすべての人々が一斉にだ。ここにいる町人達も現役の軍人にも負けない動きであった。まるでひとつの生き物の様に見える、そんな気がするほど見事なものを目の当たりにした。
空気が、変わったことに気づき、自分達に緊張が走る。
「では、これより授与式をおこなう皇帝陛下自ら授与なされる。二人共、まえへ!」
「「はっ!」」
言われるままに、自分達は、緊張して強張った身体を奮い立たせてゆっくりと前へ歩みをすすめた。
しばらくすると、また太鼓の音が聞こえ初めてきたが、今の太鼓は少し違い叩く間隔が段々はやくなってきた。
太鼓の音に合わせて人の老人が入ってくる、後ろから三人の共がついてくる。
自分達は後ろいる三人をいや、この帝国全土のものなら誰でも知っている。もちろんこの三人を従えている老人が誰だがなんて子供でもわかることである事だろう。
ドドン!と太鼓なり、それ以上太鼓の音が続くことはなかった、代わりに老人が前にでる。
「うむ、では双方前へ、余の元まで来るのだ。」
質素な着物着ているこの老人から、皇帝としての偉大さは、かんじないが声はあまりにも威厳が満ち溢れていた、言葉のひとつひとつに重みがあるそんなふうに思えてならなかった。
二人並んで陛下の元まで向かうと、まじまじと自分達を顔を見て。
「二人共、見事に成長したな流石だ、二人の子だけあるな。余も嬉しくおもうぞ。」
「もったいないお言葉です」
陛下のお言葉に、嬉しさ噛み締めながら深く頭をさげる。」
「だがな昌月よ、あまり急いではならぬぞ。話を聞く限り相当無茶をしているようだな。」
「な、何故それを陛下が?」
「(どうなっている、なんで陛下が知っているのか?、まさか高虎さんが喋って、いやそれならもっと早くに。)」
動揺している自分に陛下はイタズラを見通した親の目つきで控えている高虎を見ていた。
高虎は離れている為、会話の内容まではわかっていない為、陛下に対して頭を下げているだけだ。
「若手のホープだと言われているがまだ若いでな、すぐに顔に出るからの、おかしいと思ったらなまったく血は争えんな。」
チラッと、陛下は左に控えている部下に視線を向けるが、部下は表情は変えず陛下からの視線から逃れるように逸らす。
それを見た志帆は、笑いを堪えようと必死に耐えていた。
「まぁ、そういう訳でな。余り無茶をするでないぞ、これからはお前達の時代になる。これからの帝国を担っていくのだ、わかっておろうな。」
陛下は、肩に手を置き、慈しみのめをむけて、自分に確認を求めてくる。
「はい、わかっております。」
陛下の視線に負け、短く伝える。
「よし、ではこの話はおわりにする。あぁそれと志帆よ?」
「はい、陛下。」
陛下に声をかけられた、志帆は丁寧に頭を下げ返事をする。
「おぬしは、昌月をよく助けってやってくれ。多分お前の事だ、平時であればいいブレーキ役になってくれるであろう。ただ…。」
そこで陛下は言い淀んでしまうが、声を落として聞こえるか聞こえない声で。
「一緒になりたいのは分かるが、夜中に我等に直談判するのはやめてくれ、また、窓からというより勝手に隠し通路作るのは勘弁してくれ。」
詳しく聞き取れなかったが、その後志帆はなにをいったかわからなかったが、あのあと陛下を含めて震えていた三人の姿を忘れることはないであろう。
とりあえず式典は滞りなく終わることができたが、この日、帝国の名将と皇帝がひとりの女性に恐怖していたことが式典の中で自分が一番印象に残ることになってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます