第3話平和な朝
日差しが顔に差し込み、ゆっくりと起き上がる。
昨日の疲れが残っているのか、まだ少し体が重いがそうはいってはいられなかった。
「(確か今日は、昇進の簡易的な式典があるんだったな。)」
ゆっくりと立ち上がり、自室から出て、居間で軽く朝食食べてから着替えて仕事場へと向かう。
幸い、そこまで距離はない為、急ぐ必要はないがなにぶん形式だけではあるのだが大事な式典であるらしい為いつもより早く家から出なければならなかったのだ。
「(まぁ、遅れでもしたらうるさいのがいるから仕方ないからなぁ。)」
少し心の中で愚痴を呟きながら、自分はいつもの仕事場に着く。
巨大な城門に守衛が二人立っていて、こちらを見つけると気さくに話しかけてきた。
「昌坊、こんな朝早くからどうかしたのでして、あまり根を詰め過ぎると体にさわるぞ。」
「昌坊は、よしてくれよ。今日は昇進の式典があるからな、遅れるわけにはいかないんだよ。」
同じ様に気さくに言葉を返すと、守衛はこちらの肩に手をポンと置いてきた。
「まさか、昇進するのは昌坊お前なのか?」
「そうだけど?」
「そうか!、それなら安心だ!」
守衛は思い切り肩を叩きながら笑顔をこちらに向けてくる、叩かれた肩をさすりながら少しだけ距離を取ることにした。
「っと、すまない、いやなこの時期に昇進とかあるとなどうも勘繰ってしまうんだよー、またコネや、親のチカラでな、昔に比べてそういうことが多くなってしまったしな。」
守衛の話を聞いていたもう一人の守衛が慌ててこちらに近づいてきて。
「バカ、流石にそれは失礼だろうが!。」
無理矢理もう一人の守衛の頭を掴みこちらに向けて下げさせていた。
「いや、別にそこまで気にしてないので。」
「いえ、あのお方のご子息に向かって失礼な振る舞いを。」
「お前は、真面目すぎるんだよ、昌坊がいいって言うんだからいいんだよ!」
「お前!、仲がよくても、少しは立場をだな!」
二人が、面倒ごとにならない様になだめつつ、自分はその場を後にする。
「(コネとか、か…。)」
さっきの守衛が言っていた言葉が少しだけ自分にも言われている気がした。
もちろん、長いこと知っている気心が知れているだけに意味が無いいつもの軽口だと思うのだが。
「(今までがむしゅらに頑張っていたからあまり考えてなかったにしても、自分は彼等より上の立場になるからな。)」
彼等は、自分より年上であり、何年も勤めているベテランである。そんな彼等より後に入ってきて昇進するのだから、何も感じないわけではないのであろう。
先程の彼の言葉に少しだけ棘がある様に聞こえた様な気がしたが、すぐに元の気さくな感じに戻っていたので、よかった。だがもし昇進するのが自分でなかったら、彼はどういう態度をとってしまうのか?
少しだけ気がかりに思う。
「(昔から、知っている自分だから昇進することに受け入れてもらったのはよかったが…。)」
もう一人の守衛が言っていた事の方が重大で、少しだけ顔をしかめてしまうが、悩んでいても仕方がない。
自分はとりあえず式典が行われる場所である、帝国軍内部にある、広場へと向かう。
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