席替え

 席替えと言えば、学生時代のドキドキイベント。


 メスガキが隣になるとこうなる、たぶん。



「うっわ! あんたが隣とかちょ~受ける!w」

「いや、意味わかんねぇし」


 俺はそのメスガキのことが実は少し好きだった。いや、だいぶ好きだった。いつも明るく、一緒にいて楽しいからだ。


 席替えをしてから、「となり同士でペア組んで」の授業が待ち遠しくて仕方なかった。


 メスガキも楽しそうに笑っており俺はそれが嬉しかった。


 だが、ある日の休憩時間、事件は起こった。


 メスガキの友達――派手なヤツら――が二人、メスガキの席に遊びに来てこう言うのだ。


「ユイ最近さぁ、コイツとデキてるってウワサになってんだけど、ちょ~ウケるw」


 メスガキ――ユイは一瞬固まると、直ぐ様素に戻った。いや――


「あり得ないって! こんなクソ雑魚となんて! 流石にわたしにも選ぶ権利くらいあるしぃ」


 ユイが笑いながら横目で俺を見てくる。


「………………」

――ガタッ


「うわ、マジ陰キャ」

「空気よくなってね?w」


 無言で席を外す俺。


「…………ぁ」


 とユイのもらすか細い声に後ろ髪を引かれつつも俺は黙って教室を出ていった。



 放課後、あれから一日中不機嫌だった俺は、部活に行こうと黙って席を立った。なぜかユイもついてくる。


「…………なんだよ?」


 俺がそれだけ聞くと、どことなく泣きそうになっているユイが、いつもの明るさからは想像もつかない震えた声を出す。


「――本気じゃ、ないから」


 それだけ言うと、顔を赤くしプイとそっぽを向く。ユイは小走りで教室を出ていった。



――もちろん、翌日からまたイチャイチャしたさ。


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