第100話 初ダンジョン




「優奈、これを着るように」


「これ?」


朝食を済ませ部屋に戻ると父とミーリアがやって来た。


その手には荷物などは無く、これとは何ぞと私は首を傾げた。


ミーリアは「にひひ」 と笑いテーブルの傍までふよふよ浮いていた。

腰に付けた小さな鞄からおもむろに、その鞄の質量に見合わない量の服を出していった。


呆気にとられた私は我に返るとテーブルに近寄りミーリアの鞄と服の山を見比べた。


「え? どうなってるの? 今鞄から出したよね? え? どういうこと?」


「まだまだあるぞ」


父もテーブルに近づくとミーリアと同じように腰に付けた鞄から服を次々に出していった。


「ぇえ?!」


「さぁ優奈選んでくれ」


ミーリアも父もにこやかだ。

私が驚いたのに満足したらしい。


恐る恐るテーブルの上の服の山に手を伸ばし服を広げて見てみる。


その服は……


「普通の服? 鎧とかそう言うの想像してたんだけど」


意外とシンプルだった。

華美な装飾などは無く動きやすそうな運動着っぽい物が多い。

さして言うなら手触りが微妙に違うくらい?

つやつやしてたり手触りが滑らかだったり、とても柔らかかったり。


「これはドワーフ製の服だ。 鎧もあるが動きやすいこちらが良いと思ったんだが……鎧の方が良かったか?」



「ううん、動きやすいから私はこれでいいよ。 でもこれ防御力無さそうだね」


普通の運動着だったら転んだら破れそうだなと思った。

動きやすそうだけどちょっと心配だな。 

……いや、私はアスファルトを砕く女。

ちょっとやそこらじゃやられないもんね。 

武器を武器を寄越せい!!


「これはダンジョン産の魔物で作られた物だから丈夫だヨ」


「へ?」


「魔物に触れさせる訳ないだろ。 そっち選んだらお守り選んでもらうからな」


「へ?!」


今度はお父さんの鞄から綺麗なアクセサリーがずらりと出てきた。

……待って、それお守り? 見覚えがあるんだけど!!


「武器はどれにしようカ、ナイフか剣か弓カ?」


ミーリアが別の鞄をごそごそしている。

それに武器が入っているの? 服入ってたよね、さっきまで。 素手でごそごそしたら手が危なくない?!


「取りあえずナイフを。 適正についてはダンジョンで試していこう」



「わ、分かった」


取りあえず着る服を一着選ぶ。

すると一着じゃ足りない、数着選んで、気に入ったら予備を作ろうという話になった。


「ナイフな、分かっタ」


ミーリアは鞄からナイフを取り出しテーブルに置こうとした。

だが、テーブルの上は一杯だった。

ミーリアは唇を尖らせ余分な服をもとの鞄に雑に仕舞った。



「……ダンジョン何回も行っていいの?」


「……あぁ、だがお父さんが一緒じゃないとダメだからな。 一人では絶対にダメだぞ!!」


「ミーリアも!! ミーリアも行くゾ!!」


はいはーいとミーリアは元気よく挙手をした。


そして父たちと準備をし出来たのがこんな感じだ。

上はタートルネックのインナーに長袖のTシャツ、皮で作られたベスト。

手には柔らかい革で作られたグローブをはめた。

下は踝まであるレギンスにハーフパンツ、足元の靴は軽くて丈夫で柔らかい革で作られた靴を履き、そして父から貰ったウエストポーチを腰に着けた。

ウエストポーチの中には下級回復薬、下級魔力回復薬と先ほど貰ったナイフに変えの着替え、タオル、お守り、その他使い方が不明の物もいくつか入っている。

使い方が分からない物はダンジョンで都度説明してくれるらしい。 楽しみだ。


髪の毛はそんなに長くないのでハーフアップにした。

長くなくても顔にかかったら邪魔だもんね。

そしてなぜだかバンダナを付けさせられた。

帽子でもいいらしいがツバが邪魔らしい。


そんでもってお守り。

顔にはゴーグルとマスク、耳にはイヤーカーフ型、首にはチョーカー型とネックレス型、両腕にはブレスレット、指には指輪、足首にもブレスレットを装着させられた。

お守りは魔道具とはちょっと違うらしい、よく分からないけど。


動きにくくなるかと思いきや意外と邪魔にはならなかった。


準備が出来るとお城の地下へと移動する。


階段を下りるといくつか部屋があった。


一番奥の部屋に入るとそこには門が設置されていた。


街で見た門よりも幾分小ぶりだ。

小ぶりな分デザインがスタイリッシュになっている。


「ぉお……!!」


思わず感嘆の声が漏れた。


ダンジョンダンジョン!!


まず父が中に足を踏み入れ、続いて私が歩みを進めた。

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