第99話 頼み事


「それで上級魔力回復薬がどうしたの?」


「今眠っている奴らを起こすのに必要なんだ。 眠っている奴らは魔力が足りなくて寝ているからな」


「魔王も?」


「魔王も」


「なら今ある魔力回復薬を使ったらいいんじゃないの?」


「……もうすでに使った。 俺が保管していた分も、在庫はもうない」


「……え?」


「そもそも魔力回復薬は植物ダンジョンのダンジョンレベル3から出現する、低級魔力回復薬がレベル3のダンジョン、中級魔力回復薬がレベル4のダンジョン、上級魔力回復薬がレベル5のダンジョンだ」


「植物ダンジョン? は、置いておいて……素材とかは?」


何々? ダンジョンってそう言う感じで別れてるの?

植物ダンジョン? 他にも種類あるの?

興味を惹かれたが今はそれどころではない。


「素材もそれぞれのダンジョンでしか採取出来ないんだ。 回復薬も魔力回復薬以外の低級なら植物が生えているダンジョンならどこでも取れるが……魔力回復薬だけは別だ。 素材も温室で栽培してはいるが今採れる分は全部使ってしまった」


「……なるほど。 ならお父さんがダンジョンに潜ればいいんじゃないの? 無いの? レベル5のダンジョン」


「こちらではまだないんだ。 あちらの世界にはあったが」


「ん? ……こっちでダンジョンって何レベルまであるの?」


「地上にはレベル2まで、ここにはレベル4までのダンジョンコアが保管されている。 ミーリアの権限で動かせるのが4までだ。 レベル5は魔王管轄だから保管場所に入ることすら出来ない」


「なんてこった……ちなみに上級魔力回復薬を使用した時って何か反応あったの?」


「数本でミーリアが起きた。 他の者達はまだだ。 ミーリアが起きるのが確認されたから他の者も効果はあると思う。 だが何本で起きるのかは分からない。 上級魔力回復薬も魔力を全快する訳ではないからな」


「そうなの? なんかこう……パーって超回復する薬とかないの?」


「それは魔王の宝物庫にならあるかもしれんが……入れない」


「作製方法とかは? 私材料あったら作れるよ? 」


「優奈で作れるなら城の錬金術師達が作ってるさ」


「……ならなんで私呼ばれたのもう」


「危険もそうだが……スキルの『上位交換』 を使用してくれないか?」


「『上位交換』 ? ああ!! そうだね。 分かったよ」


「レベル4のダンジョンなら中級魔力回復薬が出る。 父さんがダンジョンに潜って来るからそれで上級魔力回復薬を作ってくれ、出来るか? もしかしたら宝箱から他の薬も出るかもしれないが……期待は出来ないと思う。 神がかりな効果が期待できる魔道具は色んな要素が混じりあってできる。 それに相応の時間もかかるからな、出来て日の浅いダンジョンは単純な物しか出ない」


「……そうなんだ。 ダンジョンって面白いね」


がぜんダンジョンに興味が沸く。


「あぁ」


「ねぇお父さん。 私もダンジョン行きたい」


「優奈も?」


「ならミーリアも行くヨ、護衛したげるヨ」


「いや、危険だ。 俺だけで行ってくる」


「その場で作った方が良くない? 私のレベルが上がったらそれだけ身を守る力も身に着けられるよ? 家に戻ってからも身を守れるよ!!」


二人から見つめられた父はしぶしぶ頷いた。


「やったー!!」


「ただし、装備品は用意した物を必ず身に着けるように。 分かったな、必ずだぞ!! お父さんと約束だぞ!!」


初ダンジョンだ!! やったね。



その日はお城で夕食を食べると滞在する部屋を案内された。


私に与えられた部屋はミーリアの隣の部屋だ。

人が使っていないとは思えないほど清潔に保たれていた。


天蓋付きのベッドに座り心地の良いソファー、大理石っぽいテーブルやふかふかの絨毯も敷いてある。


靴そのままだけどいいのかな? とちょっと戸惑ったよ。


修学旅行で行ったホテルよりもずっと高級な感じ。

私の部屋よりもずっと広くて落ち着かない。

お風呂は大浴場があるらしい。

ミーリアが後で案内するって言ってた、楽しみ。


でもそれまでまだ時間がある。


手持無沙汰になった私はウロウロと部屋の中を歩き回った。


あ、バルコニーまである。


簡単な鍵を外して窓を開け外に出てみる。


「うわーっ!! すごーい!!」


バルコニーからは昼間歩いた道が見え、錬金塔も見えた。

家に居た時よりも空がずっと広くて、光が少ないからか星が大きくはっきりと綺麗に見えた。

風も澄んでいて気持ちいい。


明日は待ちに待ったダンジョン。

どんなところなんだろう


その後は部屋に迎えに来たミーリアと一緒にお風呂に入り、早めに就寝した。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る