第98話 説教









「お父さんそこに座って。 正座だよ正座!!」


迎えに来た父を地べたに座らせる。


「ゆ……優奈? どうしたんだい?」


「いいからそこに座って!!」


私の勢いに押された父は言われたとおりに床に正座した。

それを見届けて私も目の前に正座する。


なぜかミーリアもメー爺も横に腰を下ろした。

ルヴァルダン君は面食らって私の後ろに立っている。


「まず、私は過去のお父さんの話を聞きました」


父はその言葉を聞くとルヴァルダン君を見た後に静かに私を見つめてきた。


「私はお父さんが何を考えてるのか分からない。 お父さんが何を考えて何がしたくてここに居るのかもわからない。 なんで何も説明しないの?」


ミーリアは私の怒気に戸惑いの表情を見せ私と父を交互に見やる。


「お母さんにもお姉ちゃんにも説明しないで私にも説明しないでただただ巻き込んで何がしたいの? 私に何をさせたいの?」


それでも父は口を開かずじっと私の話を聞いている。


「お父さんは何を知っているの? 巻き込むならちゃんとお父さんの口から説明してよ。 私だって頭から否定しないよ? 出来ることは手伝える、一人で抱え込まないで」


最初は怒りだったけど話しているうちに頼ってくれない事に対して悲しみが沸いてきた。


「……そうだな、すまない」


ぽつりと父が観念したように呟く。


「すまないと思うなら白状しなさい」


観念したならばと追撃する。


「すまない、本当にすまない……」


そう言って父は両手で顔を覆った。


「……ユースケ私手伝ってるだけだヨ。 ユースケ頼ったミーリアが悪イ」


責められている父を見てミーリアがボソリと呟く。


「……いや、俺が悪いんだ」


「どっちが悪くてもいいから話して!!」


「「はい……」」


「優奈様お強いメー……」


腕を組んで一喝すると二人に対して話をするよう促した。


そしたら父やミーリアから不安を吐露された。


父の口からあちらでの話をされる際トラウマを刺激されたのか様子がおかしい時が多々あった。


姉や母に知らせないのは、あちらの世界で甘い見通しで対応して魔族と不用意に関わった村々が王国によって焼き討ちされた、という件があったからだそうだ。


父自身がすでにミーリアと一緒の所を目撃されている。

下手に優奈の無事を知らせてしまうと、魔族との関わりが疑われてしまう。

魔族と関わらせたが為に粛清された村と同じように、魔族と関わったことがバレると母や姉が同じ目に合ってしまうかもしれない。

それを考えると居ても立っても居られないという理由で知らせなかったらしい。


なら姉も母もこちらに連れてくればいいのにと言えば、そうしたら次は私のおじいちゃんおばあちゃんに矛先が向く。


流石に祖父母をこちらに連れてくるには環境が変わり過ぎるだろうし、祖父母の次はだれに矛先が向くか分からない、そうなれば誰まで移動させればいいのか分からないという理由だそうだ。


だから私だけを連れて来て母と姉を妹を攫われた可哀想な親子にすることで非難を避けようとしたそうだ。


お母さんとお姉ちゃんの気持ちは無視かと追撃すると、分かっていたがそれが最善だと思った、自分勝手で申し訳ないと謝られた。


ならば私は何故連れてこられたのかと問えば、ミーリアと出会ってからは魔法でずっと見ていたそうだ。

錬金術というスキルを得たことは知っていた。 

最初は連れてくる気は無かったそうだ。


だがそうは言っていられない流れになった。


動画配信され、あちらの室長にも把握され、他の国にも知れ渡り始めた。

特に政府関係者の動きが不穏な物になりつつありあの家に置いておくにはまずいと判断したと言われた。


「まずいと言われてもなぁ……ん? 他の国にも知れ渡り始めた? なんだとう?! ……それは置いておいて、それで私は何をすればいいの? 私が家に帰るにはどうすればいい? 何かを作ればいいの? はい、答えて」


「単純に家に帰るだけならミーリアに運んでもらえばいい。 だが、その後も今まで通り暮らせるようにとなるなら難しい……スキルが邪魔だ」


「難しいって……ならこのままずっとこっちなの? それは嫌だよ学校行きたいもん!!」


「……まずは眠っている魔王を起こさないといけない。 今後の魔族の動向を把握しなくてはならない。 元の世界に帰るのかこちらに留まるのか。 ダンジョンはどうするのかスキルはどうなるのか。 あちらに戻るのであればスキルが無くなるから戻る手助けをすればいい。 優奈のスキルも消えるからな。 ただ、こちらに残ると言われれば上手く取りまとめて魔族の人権を確保しないと最悪人類と魔族の戦いが行われてしまいかねない。 そうなったらスキル有りのままでは平穏には暮らせない」


「むーよく分からない。 スキルがあったら平穏には暮らせないのは分かった。 どうなるのかは分からないけど取りあえず魔王を起こせばいいんだよね? どうすればいいの?」


父の話が小難しくなってきて頭が痛くなる。

駄目だよ。 私そんないっぺんに考えられないよ!!



「……優奈は魔道具の話は聞いたか?」


「ここで作ってるって話は聞いた、回復薬とか作ってるのは見せてもらったよ」


「そうか……」


「はい、抱え込まない、話する!!」


「……すまない。 メー爺が上級魔力回復薬を作れるかって聞いたことを覚えているか?」


「あーお父さんがメー爺苛めたやつね」


「……メー爺すまない」


「い、いいですメー、頭を上げてくださいメー」


メー爺に向きなおして頭を下げる父。

謝罪されるとは思っていなかったようでメー爺は狼狽えていた。

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