第62話 2回目のダンジョンアタック3



もう一組はダンジョン探索者に応募していない、大学生のスカウト組。

こちらも男性3人組だ。


今は一応探索者として登録しているが、卒業後の進路については迷い中らしい。

目標があって大学に行ったのなら迷うのも当然か。


名前は長谷部さんと宇田川さんと菊池さん。

長谷部さんは一つ年上、将来について迷っていて院に進もうか悩んでいるそうだ。

今後の情勢次第では職持ちのアドバンテージが就職に有利に働きそうだからね。


宇田川さんと菊池さんは私と同い年。

宇田川さんはなんだかのんびりした男性だ。

友達の勧めで動画に出たらバズってスカウトの目に留まったらしい。

最初に羽ウサギに止めを刺す際狼狽えながら止めを刺していたのが印象的だ。


菊池さんは口数が少なめ。

ジムでトレーニングしていたところをトレーナーに撮影されたそうだ。

動画に興味はなく、ジムの方から年間パスの替わりに宣伝に使わせてもらえないかと交渉が持ち掛けられ、許可したらスカウトされたらしい。


純粋にお金のために探索者をやっているそうだ。



今4階で護衛に当たっている組の中に女性だけの組も居る。

ダンジョンという危険で特殊なところに入りたい女性なのでサバサバしていて私とも気が合う。

女性でまとめればいいとも思うが、上の意向でわけられてしまった。


まぁ大方女性はか弱いというイメージなんでしょうがね。


でもダンジョンに潜る職持ちの印象は皆話しやすい。

意識がダンジョンに向いているので恋愛感情よりも同士という意識が強くなる。


だから居心地がとても良い。

それに上司に当たる攻略室の人たちも私たちの意向を組もうと努力している様子が伺える。

特に亘理さんは良く社会人組の口から話題に上る。

主にあの人はいつか倒れそうだと。


私から見たらいつも目の下に隈を作って不健康そうな見た目で、電話を切ると毒を吐いているイメージだ。

後、三波さんからよく仕事を詰め込まれているイメージだ。

文句を言いつつ、独り言を盛大に言いつつこなしているのを見ると、信用は出来そうな人だけどちょっと変わっている人かな、と思う。


ちなみに三波さんはいつも冷静だが、私達にも自衛隊の人たちにも丁寧に接してくれて良い印象だ。



「うわーうわうわうわー歯えげつなー」


青い顔しながらでかいネズミのしっぽを切り落とし、上から押さえつける宇田川さん。

切り落とされたしっぽはビタンビタンと動いている。

デカネズミは暴れて歯をガチンガチンと鳴らしている。


「なにやってんだ宇田川、切り落とせ」


「分かったー」


長谷部さんの声で宇田川さんがネズミの息の根を止めた。

ネズミは光になって消え、後にはアイテムが残った。


「デカネズミ怖ー」


「お前のその行動が怖いわ。 なんで首根っこ捉えてんの。 どっから捕まえてきたの」


「気配があったから見に行ったら居たんだよー」


それからデカいネズミが現れるたびに一人ずつ戦闘を行くことになった。


一通り罠にもネズミにも慣れたところで時間になったので拠点に戻ることにした。


回収したアイテムを教官に渡し、報告を行う。


「橘さん達はこちらを使用してください」


女性の自衛隊員の指示に従って使用するテントへ葵と共に向かった。



3日目


「今日は拠点前で野営用のテントを張る練習と護衛ね」


テントを張ること自体慣れていない私と葵。

少し手馴れている五十嵐。

目標は一人で張れるようになること。

一応自衛隊の駐屯地で訓練は摘んできた。

だからゆっくりだが自力で張ることはできる。


……と自負していた。


さっそく今までの復習がてら、各々自衛隊の人が付き、テントを組み立てることになった。

ちなみに組み立てるテント自体はキャンプ用に売られているテントだ。



「? 骨組み? これどこ? 杭?」


手順書を見ながら格闘する葵の声が聞こえる。


イラスト付きだろうが難しい。

私もテント用の布に骨組みを通さないで先に組み立ててしまい、最初からやり直すことになってしまった。


意外とテントを張るのは難しい。


ここで復習していて良かった、ぶっつけ本番でやらなくて良かったと思うくらいに、テントが完成する頃には私と葵は疲労困憊していた。

何度もやり直す作業は地味に辛かった。

分かりにくいんだよ、もう。


後はこれを撤去し仕舞う。

その後にもう一度組み立てを行い反復し、テントを張る作業になれる。


ちゃんと手順を理解できるようになったら次は料理を作る作業。

火は携帯用ミニコンロでガス式だ。


小さなテーブルを組み立て、携帯用ミニコンロを置く。

その上でお湯を沸かしレトルト食品を温める。

料理と言ったら微妙だけど保存は効くし便利だよね。


「私達の組は葵が居るから水には困らないね」


「水魔法凄い」


私が褒めると葵は胸を張り微かに頬を緩めた。


「水係、これに水入れてくれ」


五十嵐が鞄から畳まれたウォータータンクを鞄から取り出す。

言い終わる前に葵が開けてもいないウォータータンクの中に水魔法を発動させた。

0から満タンまで、急に重さが加わりバランスを崩すかと思いきや五十嵐は耐えた。


耐えたことに対して葵少しムッとした表情を浮かべた。


「ありがとう」


「……どう致しまして」


五十嵐はいやがらせとも思っていないようで素直に礼を言った。

葵は口をへの字にし、ふてくされたように返事をしていた。


お湯が沸きレトルトを温めると食事にする。

途中で鈴が鳴り羽ウサギが通路に現れたりもした。


教官からの指示で何匹かは途中で捕まえて自衛隊員の訓練に宛がわれたりした。

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