第49話 ダンジョン3




「今日は3階へ降りる、各自準備は整ったか」


「「「「「はい」」」」」


2日目の今日は3階へ突入だ。


身体の順応は順調だ。

特に気分が悪くなる者も現れずに各々ストレッチをし準備を整える。


いよいよスライム以外の魔物との対面だ。

あの羽ウサギが居るんだよね。


倒すにはちょっと惜しいかもしれない、その時はそんなことを思った。


一応資料では5階までは罠が発見されてない。

だから魔物を倒せる力量があれば5階まではそんなに苦ではない。


「おい!! そっち行ったぞ」


「分かった!! 『隔絶の結界』」


羽ウサギが突進し、五十嵐がそれを避ける。

壁際に自ら飛び込んだ羽ウサギの回りを隔絶の結界で覆う。


「捕まえた」


羽ウサギの突進も、助走が付けられなければ大した脅威でもない。

その証拠に羽ばたきながら結界へ体当たりをするが壊れそうにない。


「これどうしよう」


「どうしようって結界といた後に倒せば良いんじゃないか?」


「それはそうなんだけど……」


近づいて羽ウサギを見ればやっぱり可愛い。

背中に羽が付いている。

どうやってついているのだろう?

後ろに回って羽の付け根を見る。

肩甲骨が発達して羽になったのか?


なにかの資料になるかもしれない。


「教官!! 討伐は写真を撮ってからでもいいですか?」


「……撮影班、羽ウサギの撮影を。 橘はそのまま結界維持」


「はい!!」


自衛隊の広報部隊が資料撮影の為前に出る。

私と五十嵐と葵はその周りで周囲の警戒をした。


「にしても遥の結界便利だな」


「でしょ。 五十嵐が褒めるなんて珍しいね」


「褒めて……まあ、褒めた」


言い淀んだがどう聞いても褒め言葉だ。


「遥の結界良い」


葵にも褒められる。


「葵の水魔法も良いよね」


葵の水魔法はイメージ力が試される。

本人がどう使うかをちゃんとイメージできればその通りに魔法が実行される。


鎌みたいになれというならちゃんと切り裂けるし、包めというならちゃんと包む。

ただ大きさや細かさ、距離によって消費MPが違うみたいだけど。


葵は水魔法が好きだからかなり細かく動かすことが出来る。

例えば……


「そっちに羽ウサギ出たぞ」


「うん」


――スパッ


五十嵐の声掛けで葵が振り向く。

視認した瞬間水魔法で胴体と泣き別れさせた。


「切れ味良いわね」


「でしょ」


自慢の魔法を褒められて葵は嬉しそうに笑った。

撮影が終わった羽ウサギは結界を解くと同時に処理をした。


「よし。 橘、五十嵐、皇は戻れ。 次の組前へ!!」




「「「はい」」」


こうして交代で魔物に慣れる。

幾度かの交戦の後、羽ウサギからは小さな石のようなものと羽と下級回復薬が落ちた。

体感的にスライムよりドロップ率が良さそうだ。

スライムが弱すぎるせいなのかな? ダンジョンの仕様? どうなんだろう。

もしかしてレアドロップとかもあるのかな。

あの小さな石はもしかして魔石? スライムから落ちなかったけど。


「こうしてみると私たちが虐殺してるみたいだね」


「……言うな」


一通り全員が羽ウサギとの交戦を終える。


3階に降りたのが8時だ。

現在の時刻が11時前。


「一旦2階に戻り昼休憩とする。 その後3階と4階に別れて訓練とする」


「「「「はい」」」」


昼休憩を取ると3階と4階に別れて訓練を開始した。

私たちは4階だ。


「訓練って言ってもやる事は昨日と同じだな」


自衛隊が作製した地図を片手に歩き回り細かな書きこみをし、蛍光塗料入りの目印を設置していく。


「まあね、五十嵐そっちに羽ウサギ!!」


「おう」


五十嵐はスキルを使わずに、支給されたナイフで、突進してきた羽ウサギを一刀両断した。


「切れ味良いね」


「身体能力のお陰もあると思うが……訓練の成果か?」


「魔法には負ける」


葵がふふんと胸を張る。 確かに水魔法の方が断面が綺麗だ。


2階には魔物部屋は無かった。

4階はどうかな?


というか仮に魔物が詰め込まれた魔物部屋みたいなのがあるとしよう。

この階で発生したらスライムが出るのか? それとも羽ウサギが出るのか?

羽ウサギ部屋だったらめちゃくちゃ可愛いだろうな。 と考えてたら出くわした。



「……可愛い!!!!」


「モフモフモフモフ!!」


「いや、キモい」


とある行き止まりの広場に入り込んだら、入る前に居なかった魔物が突如沸いた。

どこかに人感センサーみたいなのがあるのだろうか、足元を見ながらそんなことを考える。


羽ウサギが沸いた瞬間に私達と羽ウサギの間に隔絶の結界を張り部屋を観察する。

羽ウサギはキューキュー鳴きながらドゴンドゴンと音を立て結界に突進している。


「今みんなのレベルどんな感じ? 私は25」


「俺は19」


「私17」


「なら葵、結界越しに水魔法発動できる?」


「やってみる」


葵が結界越しに水魔法を発動させる。

発動した水魔法で次々と羽ウサギを刈り取っていく。


ものの数分でその場にいた羽ウサギは消滅した。


「葵、ありがとう。 レベルどうなった?」


「3上がった」


「ってことは20? 俺は19のままか」


「私は……1上がって26」


「戦闘貢献の差か? 俺参加してないし」


「なら私は結界張った分ってこと?」


「だと思う。 実際に倒した葵に経験値の大半が流れたんじゃないか?」


「ふーん、もう一度やってみたいね……今の時間が13時22分。 リポップ時間の確認しがてら挑戦するか」


「そうだな、一時間後に戻って来てみるか」


その前にドロップアイテムを回収する。

魔石が10個、下級回復薬が8本、羽ウサギの羽12枚、羽ウサギの毛皮が2枚、羽ウサギのしっぽが1つ、落ちていた。 

それと何故か羽ウサギの肉が3個浮いていた。


「なんか見たことないのまで落としたね」


「しっぽ可愛い」


「肉って……いや……肉って……なんで浮いてる?」


葵は羽ウサギのしっぽを手に持ち触り心地を確認してる。

その次に私にも渡してもらう、毛並みが柔らかくてフサフサしてる。 ずっと触ってたい。


「羽ウサギのしっぽやばい。 これずっとモフモフしていたくなる」


「同意」


羽ウサギのしっぽは葵が手に持つことになった。

羽ウサギの肉はビニール袋に仕舞う。 

浮いていたから土は付いていない。 

ありがたいけどなんで浮いた?


答えは無いので鞄に詰めた。

試しに一度広場から出てもう一度入りなおしてみる。

今度は魔物は沸かなかった。

やっぱりリポップ時間があるのだろうか? それとも一度きりの魔物部屋だったのだろうか。


アイテムを集め終えると来た道を引き返し、念のため壁にこの先魔物部屋有り、注意されたしと書きこんだ。




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