第22話 モニュメントの撤去




「……それはそうと、そろそろじゃない?」


「そろそろって……あ、そうだね。 テレビつけよう!!」


二人揃って1階に降りてリビングへ行きテレビを付けた。


そこに映し出されたのは大勢のリポーターやカメラ、野次馬と警察官。


今日はモニュメントの撤去日だ。


本当に撤去できるのか、撤去されたら何が起こるのか、皆興味津々みたい。

色んなテレビ局で生中継されている。

テレビに映し出された場面にはすでにクレーンやトレーラーやユンボ、重機、作業員が待機している。


「作業の人達大勢いるね」


「そりゃ何があるか分からないんだもん。 官民どちらも大勢いるでしょ」


そのモニュメントが置かれた場所はどこかの駐車場みたいで一般の人が入れない様に20m程離れた場所に柵が設置されている。

リポーターは上空からヘリコプターを使用して中の様子を撮影しているみたいだ。


門の周りには錆びた鉄板が敷かれている。 

トレーラーの荷台にはスリングベルトや毛布、ガッチャ、ワイヤーなどの道具も散見される。

クレーンはユニックトラックについているクレーンではなく、建築現場で見られるような大きなクレーンが足を出して待機している。

それで釣り上げるのかな? 釣り上げられるの? どこに掛けるの? たーおれーるのー?


そのほかにも門の周りには工具が置かれている。

台座を破壊して持って行くのか。



「物々しいね」


「そうだね」


『あ、今作業員がモニュメントに近寄っていきます』


作業員が近寄り台座の下の方を確認している。

何してるんだろう?


「どうやって取り外すの? 安全上行けるの?」


「どうなんだろうね」


ヘルメットを着用したスーツ姿の人が呼ばれ人垣ができ何かを確認している。

作業員は首を振っている。


『どうしたんでしょう、何か話し合いがもたれているようです』


しばらく話し合いは続いたみたいだ。


「……まさかろくすっぽ調査しないでぶっつけ本番って事はないよね」


「まさかぁ、え? じゃああんなに色々用意して、検査して壊せませんってなったの? 嘘でしょ」


「じゃなかったら揉めてないんじゃないかな?」


スーツ姿の、あの中じゃ一番偉いっぽい人が作業員の一番偉い感じの人となにやら話している。


「なにか予想外のことがあったのかな?」


「例えば?」


「え? 例えば? えーっと……ひっかけるところがありません。 とか、あのアームみたいなものモニュメントが分厚くて挟めませんとか?」


「え? そんなことある?」


「なら強度が強すぎて既存の物で破壊しようとしたら道具の方が壊れかねないとか? 作業員に危険があるため許可できない……とか」


「安全上って事? んーまぁなくはないかなぁ」


腕を組みふふん、と頭をフル回転させながらそれっぽいことを言ってみる。


「優奈のそれは誰目線なの」


「ちょっと頭良く見えた?」


「むしろあほっぽく見えた」


姉は騙されなてくれなかった。


結局この日モニュメントの撤去作業は中断されてしまった。

理由については明かされなかった。 野党が追及してたけど答えは無かった。 私も知りたいぞ、野党頑張れって思った。



ネットには「第一回モニュメントVS作業員勝つのはどっちだ?!」 と言うスレが立っており、勝者はモニュメントとお祭り騒ぎになっていた。


他にもモニュメントの材質について考察するスレが出来てたり今後の予想をするスレなんかも立っていて大賑わいだった。


「にしてもモニュメントの上の数字増えてってる気がするなぁ」





「そしてこうなった……と」


モニュメントは結局撤去されなかった。


理由はついぞ説明されることはなかった。

ただ、そのままほったらかしという訳ではなく、モニュメントの周りに壁が出来た。

コンクリートで固められてしまった。


だがモニュメントの上の数字は90を超えており、コンクリートは間もなく壊されることになるのだった。







その日は日差しも幾分強まった6月の下旬、私は高校生活を満喫しつつ、花壇の世話や下級回復薬の作製、アルバイトに精を出していた。


栽培については姉だよりだけど。

姉のスキルなしで育てているのもあるが、2週間で芽が、1カ月でようやくいくつか葉がつくくらいだった。


ちなみにレベルが上がってもポイントは割り振らずにそのまま。

今の私には特に必要なかった。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る