第21話 アルバイト
「中間テストも無事に終わった」
時間は過ぎて6月頭、モニュメントの撤去が決まって数日経過した。
5月末に帰るという父は5月末になっても、6月に入っても帰ってくる様子はない。
それどころか電話しても繋がることもなく実質行方不明になっていた。
母曰く、
『昔は心配していたけどよくある事だから今は気にしてないわ』
とのことだ。 思い返せば確かに結構な頻度で行方不明になっていた。
どうやら政府の方は、『落とし主が誰も名乗り出ない前提』 で動きを進めてたみたい。
期日が過ぎてすぐに、モニュメントの周りの道路に工事用の看板が設置され、道路の通行止めまで決まり、近隣住民への撤去に関するお知らせなんてチラシも入ったりしていた。
ネットではいたずら電話で落とし主を名乗り出た人もいたらしい。
だけど、警察官から証拠の提示を要求されたり、公共施設に置かれたものについては、連日人が押し寄せた結果、警備費用やネットの設営に関する費用請求までされたようなことが書かれていた。
本当か嘘か分からないけど。
週末などまとまった時間が取れる時は一緒になって草の栽培をしたり、適応について検証したりしていた。
姉の財力頼みである。
その結果、薬シリーズの結果が色々揃ってきていた。
まず、この間適応した風邪薬。
これ1錠だけ適応しようとした。 結果は出来なかった。 一粒づつ増やし、どこから変えられるか試したところ、一瓶もしくは一箱丸々必要だった。 開封は可能、量の減量はできなかった。
次に、何錠入り、がいくつか分かれている物。 例えば鎮痛薬、12錠入りや24錠入りとか種類がある。
これは12錠入りでも24錠入りでも出来る物は変わらなかった。 完成品一つに対し一つって認識みたい。
他にも風邪薬の他に、整腸剤や目薬、胃薬、栄養剤、湿布なんかも適応してみた。
結果は全て下級快復薬になった。 胃薬や整腸剤はともかく、目薬や湿布も同じなんだとびっくりした。
ばんそうこうや包帯は布に変わった。 単価安いから下級回復薬になったらいいなと思ったけどそうはいかなかった。 残念。
薬効成分の有無なのかな? よく分からない。
解毒薬はウコンとかも下級解毒薬になった。 この値段なら私も手を出しやすくてありがたい。
どれにしてもお金が無いとダメだけどね。
「アルバイト……アルバイトかぁ」
「優奈アルバイト探しているの?」
周末帰って来てた姉が私の独り言に反応する。
今日は土曜日の朝8時。 珍しく姉も起きていた。
「だって回復薬の類を変えるにも、他の物を試すにしてもお金が必要じゃない。 薬代だって現状お姉ちゃんに頼りっぱなしだったし」
「まぁ、そこらへんに落ちてるものを試すのだって限度があるもんね」
そこらへんに落ちている物を試した結果石は、石。 お肉はなんか名前のついてた謎肉。 パンは硬いパン。 スープは水。 他の料理は料理は変えられなかった。
服はボロボロの布の服だった。
「なんだったらこれ売れないかな? 匿名のフリマアプリとかで……」
「止めなさい。 飲食物がそもそもいいのかもわからないし、それ売れて購入した人になんかあったら責任とれるの? 取れないでしょ。 それにそれが広まって何かに巻き込まれたらどうするの? お母さんにも迷惑掛かるでしょ」
そこに父を含めないのか。 基本居ないもんね。
「ぐっ……そうだよね」
「高校生も雇ってくれるところ地道に探しなさい。 飲食店とかコンビニとかよく見れば求人貼ってるからそれ見て応募すればいいよ」
「分かった、探してみる」
そうして後日見つかったのは近所の喫茶店だ。
時給1080円で週に2~3回、夕方4時間のアルバイトが決まった。
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