第23話 早めの帰宅




「今日はアルバイトと」


家から徒歩10分位の場所にある喫茶店でのアルバイト。

年配の夫婦が営んでおり、手の必要な時間帯だけの接客のアルバイト。

近くに他にも時給が高くアルバイト出来そうな場所は有ったがお店の雰囲気を見てここに決めた。

だって優しそうな夫婦にゆったりとした雰囲気でレトロで可愛い喫茶店。 

むしろアルバイトさせて貰えてありがとうございます、と言う感じだ。


レベルアップによる効果で身体能力が強化され今の私は強力な助っ人だ。 

ふふんと胸を張って駆け足で向かった。


お皿だって割らないし何ならお客様の間を縫って素早く動けちゃう。 注文だって聞き逃さないしちゃんと伝えられる。

……あれ? もしかしてレベル関係ない? 


ん? と思いながら喫茶店にたどり着いた。


「お疲れ様です」


「優奈ちゃん、お疲れさま。 今日も頼むわね」


店の裏口から入り靴を履き替える。 ロッカーにあるエプロンを付け、帽子をかぶる。


「はーい」


16時になりフロアの方へと出て行った。


同時刻ネットでは騒ぎが起こっていた。


『スライム発見』


『なんか動いてるんだけど、これ何』


『スライムの大群発見』


スマホの電源を落としロッカーに仕舞い、アルバイトに精を出す優奈の預かり知らぬところで起こった。




「優奈ちゃん、今日はそろそろ店じまいにしようか」


「え? もうそんな時間ですか?」


店内にいた最後のお客様のテーブルの後片付けをしていたら、流しで食器を洗っていたマスターの奥さんに話しかけられる。


時計を見ると時刻はまだ19時を回ったところだ。


「そうだな、今日はお客さんも少ないし閉めるとするか」


「分かりました」


いつもならこの時間お客様で賑わっている時間帯だ。

マスターの得意料理のビーフシチューがひっきりなしに注文が入る時間。


まぁ、こんな日もあるのかなくらいに思ってロッカーにエプロンと帽子を仕舞う。


早上がりは、その分お給料が低くなってしまう。 ただ、早めに来た時は早めに打刻させてくれる。 なので、たまにだしいいかと靴を履き替えた。

こう言う緩さも私的に好きな所だ。


「お疲れさまでした」


「優奈ちゃん、お疲れさま。 いつもありがとうね」


そして私は家路についた。

家は暗いままだった。


「あれ? お母さんまだなのかな?」


アルバイトを始めてから私の方が帰りが遅くなった。

いつもなら19時には母が帰宅するからだ。


不思議に思いながらも鍵を開け家の中に入った。

暗い家の中の明りを付けシロにご飯を上げる。


夜ご飯を食べようと冷凍ご飯を解凍し、冷蔵庫にあるおかずを温めてリビングに持って行く。


「今日のご飯はチャーシュー丼~」


アルバイトの日はお腹が空いてしょうがない。 ガッツリ系のご飯にウキウキしながらテレビを付けて頂きますと言った。



『こちらの今の状況をお伝えします』


『現在こちらには謎の物体が多数現れており……』


口の周りにご飯粒を付けながら咀嚼をする。

味を堪能しているとニュースの音が耳に入った。



ふと顔を上げるとそこは生中継の駅前の様子が映されていた。


「この時間になんで生中継? バラエティ番組は?」


ん? と思いながらリモコンを操作し番組表を見る。

そこには緊急特番と言う文字が各局の欄に表示されていた。






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