第9話 姉のスキル




今日は早起きできなかった。


日課になっていた草むしりはお休みして少し早めの朝ごはん。

トーストを焼きバターを塗ってもそもそと食べる。

テレビをぼーっと眺めると昨日のモニュメントに関するニュースをやっていた。


どうやらリポーターが現地に到着し野次馬にインタビューしているようだ。


……これダンジョンかもしれないんだよね。 誰か中に入ったのかな?

中ってどうなってるのかな? あれ? モニュメントの上になんか数字が……。


寝ぼけた頭が徐々にダンジョンに染まる。


モンスターってやっぱりいるのかな? アイテムって出るのかな? ダンジョンの中ってやっぱり洞窟? それともレンガ? 迷路っぽいのかな? それとも異空間っぽい? あー気になる!!


咀嚼を早め牛乳で流し込みスマホを取り出し検索をする。

モニュメント、中で検索を行う。


扉を開け入れた人は居ないようだ。


なんだ残念。


だったら鍵がいるのかな? あ、考察サイトが出来てる。 まとめサイトもある。 凸メンバー募集してる人もいるや。


どれもすごい速さで文字が流れる。

読むのが遅い私は付いて行くのがやっとだ。 目が滑る。


「優奈今日はゆっくりなのね。 お母さんそろそろ出勤するけど時間良いの?」


「えっ? うわ!! もうこんな時間だ!!」


スマホに夢中になっていたらいつの間にか時間が過ぎてしまっていた。 もう行かなきゃ。


「食器!! 洗わなきゃ」


「寄越して、私が洗うわよ」


「お母さんありがとう!!」


トーストを乗せていたお皿とコップを母に私て急いで準備を行った。



「おはようゆうゆう」


「優奈おはよう、今日はギリギリだね」


「何とかセーフ」


予鈴が鳴るギリギリに教室に飛び込めた。

自分の机に向かう途中で席についてた鈴と明日花に声を掛けられた。


「えへへ、テレビ見てたら時間すぎちゃった」


自分の席に着くと間もなく予鈴が鳴り先生が来た。


休み時間の間はもっぱらモニュメントの話題一色だった。

入った人を見たとか、中は暗闇になってるとか、幽霊が出てきたとかそんな話。

ただそれから数日たってもモニュメントの謎は解明することはなかった。



「お姉ちゃん、お帰り」


「ただいま」


今日はゴールデンウィークの前日。

夕方になり玄関が開く音が聞こえ、膝の上で寝ていたシロを抱えて姉を出迎えた。

前回帰って来た時は養子だの浮気だの不倫だのでゴタゴタしておりスキルについて話すことが出来なかった。

だから今回姉が帰ってきたら、職業に関して色々聞きたいことがあったので楽しみにしていた。


「荷物置いたら優奈の部屋で良い?」


「うん!!」


私の顔に出ていたのか、姉は私の顔を見ると、しょうがないなと言わんばかりの表情をして私の頭を撫でた。

姉がスーツケースを自室に置きに行く間にシロにご飯をあげて自室へと向かった。


「優奈お待たせ」


「待ってたよお姉ちゃん!!」


お菓子をテーブルの上に広げ、飲み物を用意し歓待の準備は万端だ。


それから今までの経緯をノートを見せながら説明した。

逆に姉がステータスを知ってから検証した内容を教えてもらった。


「優奈レベル12なの? 高くない?!」


「お姉ちゃんは3なの? なんで?」


「いや、私知ったのついこの間だよ。 比べないでって」


「そりゃそうか。 それでお姉ちゃんのスキルって何なの? どうやって使うの?」


「あー……見せた方が早いかな。 優奈どこか怪我してない?」


「怪我?」


そう言われ体のあちこちを見る。 ふくらはぎ辺りに切り傷があった。 ……そう言えば草むしり中に葉っぱで切ったな。

靴下を捲り足を姉に見せた。


「これでいいの?」


「うん。 丁度いいね」


私の傷を一目見て頷くと姉がスキル、治癒の結界と唱えた。

姉がそう唱えると傷の周りにシャボン玉のような膜が現れた。


「温かい」


傷の周りが陽だまりのような温かさに包まれる。

興味が惹かれじっと様子を見守ると、切り傷が早回しのように消えていった。

完全に消えるとシャボン玉のような膜も一緒に消えていった。


「傷が治った?!」


「そう。 まず一つ目のスキルが治癒の結界。 二つ目は成長の結界、今は夕暮れだから明日見せるね。 三つ目は隔絶の結界。 これは攻撃を通さなくなる結界なのかなーと思ってる。 以上三つだね」


「成長の結界? 何を成長させるの?」


「植物に試したら成長スピードが上がったよ。 豆苗めっちゃ伸びた」


「なにそれ便利」


姉の話では一つのスキルを発動するのにMPが5必要なんだとか。 治癒はかすり傷程度が治る、成長は5分間、隔絶は一回攻撃を受けると消えるらしい。

私は消費MPが全部1だからレベルが離れるのは当然か。


逆に私のスキルを説明したらうらやましがられた。


「ねぇねぇ、お姉ちゃん。 明日庭で手伝ってもらっていいかな? 私今植物育ててるんだ。 だけどよく分からなくて」


「いいよ。 あ、だけど午後からバイトが入ってるから午前中だけね」


「ありがとう」


久しぶりに一緒に同じベッドに入り眠りにつくまで話し込んだ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る