第8話 解決?


姉は妹の私から見ても美人だ。

のんびりしている私と違って行動力があり、頼りになるお姉ちゃん。


「お帰り!!」


「ただいま。 じゃあお母さんを待つか」


「う…うん。 もう少しで帰ってくると思うよ」


そして間もなくして母が帰宅した。




「ただいま」


「お帰りなさい」


「お帰り」


「……あら?」


玄関からこちらに来る足音が聞こえリビングのドアが開いた。


「遥帰って来てたの? 一人暮らしは大丈夫? ちゃんと掃除してる?」


「大丈夫、ちょっとお母さんに聞きたいことがあってさ」


「聞きたい事? 何かしら。 ちょっと待ってね荷物置くから」


にこりと微笑む母。 こちらに来ようとして肩に掛かった荷物が揺れいったん荷物を置いてくる旨を伝えてきた。


「ならリビングで待ってるね」


今から家族仲に亀裂が入るかもしれないのに平然とテレビ見ながらいつも通りにに過ごす姉。


私もテレビを見ていたが、さっきまであんなに興味惹かれていたニュースも今は頭に入ってこない。


そして荷物を置き終えた母がリビングへとやって来た。


「それで……聞きたいことって何かしら?」


穏やかな表情で姉に尋ねる母。


「お母さん。 ラヴァルザードって知ってる?」


「ラヴァルザード? なんだか聞き覚えが……あぁ、知ってるわよ? お父さんの親友よね? ん? なんで名前知ってるの? お父さんから聞いたの?」


お母さんの知ってる人だった。


「お母さんお父さんの親友と何かあったの?!」


「なにかって何? 名前は知ってるけど……会ったことないわよ?」


「会ったことないの?」


「えぇ、なになに? どうしたの? ラヴァルザードさんがどうしたの?」


親友なのに孫? どういうこと?

私と姉が顔を見合わせる。


「あぁ……ラヴァルザードさん関連で何かあったのね」


私と姉の様子を見て何かを察したのか母がそう言った。


……お母さんは何か知ってるの?



「母さんはラヴァルザードさんについて何を知ってるの?」


「お父さんの……紛らわしいわね。 優奈たちの父で私の夫の親友。 お父さんは異世界で出会った魔術師の親友って言ってたわ。 知ってる? お父さんって勇者だったらしいのよ」


ふふっと可笑しそうに笑う母。


「勇者?」


「そう」


「勇者?!」


まって、情報が追い付かないよ?


「ふん……そう」


「お姉ちゃんは納得したの?」


「まぁ……納得はしてないけど状況が状況だし、お母さんとお父さん、おじいちゃんおばあちゃんが私の血のつながった家族ならそれでいいよ。 優奈だって今よく分からないことだらけでしょ?」


「うん!!」


「魔術師なら……魔法使えるんでしょ? なら私が考えても分からないじゃん。 今考えても分からないことを考えてもしょうがないよ。 だから私はそれでいいと思う。 じゃあ私アパートに帰るね。 あ、そうだお父さん次いつ帰ってくるの? 今電話してもいいかな?」


「うーん……次は5月の末頃って言ってたわね……まっててね、今電話してみるから。 出るかしらね」


そう言って母がスマホで電話をしたがどうやら留守電に切り替わったらしい。 留守電に折り返しを願う旨吹き込んで通話終了ボタンを押したみたい。


「……駄目ね。 出ないわ」


「そっか、じゃあ帰って来た時で良いや」


「え? お姉ちゃん帰っちゃうの?」


「当たり前でしょ? このためだけに帰って来たんだもん。 なに? 優奈寂しくなっちゃった?」


「あら遥帰っちゃうの? 今日は泊まって行ったら?」


「明日1限目から授業あるんだ。 ごめんね母さん」


「聞きたい事あったのに」


現状ステータスの事を理解できるのは姉しかいない。 出来ればもうちょっと話をしたかった。


「大丈夫よ、GWには帰ってくるからその時に話そう。 優奈も色々混乱してるだろうから落ち着きな」


そう言って姉は一人暮らしのアパートに帰ってしまった。


母と一緒に夕飯を食べ、自室に戻りベッドの上に寝転がると母と姉の会話を思い出す。


父が勇者でラヴァルザードは魔術師でお父さんの親友? そしてステータスと霧とモニュメント。


「取りあえずラヴァルザードさんがこの件に絡んでそうなのは分かった」


なら今私がするべきことは錬金術をマスターする事かな?

あの後母にステータスオープンと言ってもらったが特に何も出なかったみたい。

私と姉が出たのだから母も出ておかしくないのになと少し残念に思った。


だけれどもこれでみんなが出るわけではないと分かった。


「父が勇者だとしたらあのモニュメントってもしかしてダンジョン?」


ダンジョン。 なんとも甘美な響き。


「私も入れないかな? 近くにないかな?」


そんなことを考えてたらいつの間にか寝入ってしまっていた。





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