第37話
少し時はさかのぼる。私が皇子と婚約し、軍事同盟を締結した次の日のこと。アンドラーシュのご両親に会いに行っておった。その2件を正式なものと認めてもらうためである。
私が認めていただけるであろうかと、不安を口にすると、
「心配ない」
とアンドラーシュは請け負った。
「そなたは
我が聞かされるグチといえば、『なぜ、我が娘エリザベトがお前に嫁がぬのか?』
顔を会わせる度にそれ。
『我がマガツ国は、オーゼンシュタイン国に比べて、国土では引けを取らぬ。更に言えば、公爵領をのぞけば、我が方が上回るは明らか。よほどにお前に魅力が無いのだろう』
と我が心を知ってか知らずか、そこまでおっしゃる。婚約の話を聞かせれば、それこそ
「そう。でも、お
「うむ。
この国では王のことをカン、女王のことをカトンと呼ぶとのことだった。
やがてのこと、1メートルくらいだろうか、盛り上がった基台の上に、巨大な天幕が立っているのが見えた。体育館くらい? その回りを多くの護衛が囲む。
その間を少しばかり抜けた後――とはいえ、天幕の入り口まではまだ7、80メートルは離れているところで、アンドラーシュは馬を下り、やはり私にも、そうするべくうながす。天幕の入り口まで馬で行けるのは、ご両親のみとのことだった。
すぐに護衛の一人が走って来て、ひざまずく。アンドラーシュは立つように告げ、馬を頼むとして、2頭の手綱を渡す。手慣れたものであった。
それから歩く。
寒風が吹きすぎる。
私は鼻水が垂れておらぬか気になり、何度も鼻の下をこする。きっと既に赤くなっておるに違いない。でも『はな垂れ小僧』よりずい分とましなはず。ご両親に気に入られたいと願うこそであった。
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