第10話

 証言が敵国からの帰付者によるものであれ、王太子がこの件に何も関わっていないとは想えない。


 恐らく王太子自身が、これを証言させたのではないか。この者が帰附を申し出た際に、王太子側がそれを許す・許さぬで脅しつけるなり、何とでもやりようがあると想われた。


 また父上によれば、現在隣国とは敵対しておることを理由に、王府が、隣国との交易や通行さえ禁じておるとのこと。ゆえに、公爵家に外交ルートのあろうはずもない。


 無論のこと、そもそも私は密通しておらぬのだから、敵国の皇子とつながりなどは無い。


 反証を得られるつながりは、現在、無かった。


 それゆえであろう。


 間諜からの急報の翌日のこと。


 父上が、その反証を得るために、敵国に急使を送ろうと考えておるが、どう想うか、と私に尋ねてきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る