第12話 王太子の親友たちの来訪5

 父上がこの2人で100人を相手にできると言ったのは、誇張ではなかったのだ。実際、伝令が呼びに向かったはずの千人隊は到着していない。それほど短時間で全てが終わっておった。


「あなたって、ねえ。半分は残してくれないと。そう約束してなかった? もう、イジワル」


 そう低音の裏声が聞こえた。


「お嬢様。おケガはありませんか?」


 と女性に聞きまごうほどの高音の声が問うた。


「ひゃ~い」


 私にそれ以上の返事はできなかった。ただ次のことは問わずにはいられなかった。


「ほ・・・・・・ほろひたのですは?」


(殺したのですか? と私は聞きたかったのだ。ただそんな発音でも、こちらの意は伝わったらしく)


「はい。公爵様からは既にお許しをいただいております。また我ら2名は、これが何よりエリザベト様の御心みこころに沿うものであると、そう考えております」


 とチイねえ。


「当たり前ですわ。お嬢様を集団で犯そうとするなんて。女の私から見たら、絶対許せません。もし私を同じ目にあわそうとする者がいたら、やはり殺しますもの」


 とゴリねえ。


 私は相手を捕らえてくれれば良い。何となく、その程度に想っておったのだが。結局、ことが未遂に終わったからいいものの、実際なされておったら、これほど悲惨なことはない。


 そう想うと、父上やお二人の対応の方が正しいのだろう。


 それに、もし私に娘がおったら、やはり殺したいほどに相手を憎むだろう。


(実際になされておったら? 私は乙女ゲームの知識があったから、これを防ぐを得た。でもエリザベトなら、防ぎようもない)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る