第9話 王太子の親友たちの来訪2

  風もも、終日、優しかったその日の夕刻間近。王太子の親友たちはやって来た。ただ12人もいた。

 

 父上の策が決まった後、こちらは精一杯歓待しますとの返信を出しておった。 すると、それに対して、到着日を報せる手紙が来て、5人で訪れますということだったけど。

 

 ずい分、増えた訳だ。とはいえ、そのこと自体は、なじるべき事柄ではなかった。ただ相手が猟を楽しむためだけに来たのならば。




 そして日が沈みきらぬうちに、客の申し出のままに、夕のうたげが始まった。


 ただ、こちらも条件を一つ付ける。せっかく、この離れで宴をするなら、この燭台しょくだいのロウソクだけでしましょうよと。後は月明かりがおぎなってくれるわと。


 これはお二人の提案によるものだった。その際、ゴリねえは次の如く付け加えた。


「私たち2人は夜目よめきますので、エリザベト様はどうぞご安心ください」と。


 無論、私は反対しなかった。

 正直、全ておまかせであった。


 それに加えて、お二人が私に注意したのは2点。

 この席に留まること。

 テーブルの下は触らないこと。

 前者はよく分かるが、後者は?

 でも聞いたら聞いたで恐そうなので、ただうなずいた。



 相手は、ワインをたくさん持って来ておった。自らもがぶ飲みしながら、私にもすすめてくる。


 断る訳にも行かないが、無論、飲む気もない。グラスに唇を付け、舌を湿らすのみで、ごまかす。


 相手は徐々に下卑げびた動きに出た。ただ私にではない。チイねえに対してであった。


 チイねえは、給仕としてこちらが用意した料理と飲み物を配るために、どうしても客の間近を通らなければならなかった。

 

 最初は「ねえちゃん。男は知っているのか?」


 やがて「どうだい。今夜、俺と」


 そしてついには、なにかとチイねえの尻を触る。胸の方は、チイねえがガッチリ腕でガードしておった。ただこれは男であることがバレないようにとの、用心ゆえと私には想われた。


 なにせ、結構、尻の方はさわられ放題であった。さすが、父上に選ばれるだけの者。まったく気にしていない


 ・・・・・・なんてことはなかったと、この後すぐに知るのだけど。そりゃあ、さわられ放題なんてされたら、誰だって怒るわよね。

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