第5話 私、お姫様みたいです
目が覚めると、豪華な天井が目に飛び込んできた。ここは…
そうか、昨日はお父様が私たちを迎えに来てくれて、それでホテルに泊まったのだった。それで、お父様とお母様と一緒に眠ったのだった。あれ?お父様とお母様は?
辺りをキョロキョロと見渡すが、2人の姿はない。
「おはようございます、オリビア殿下」
私に挨拶をしてきたのは、メイドのクリアだ。
「おはよう、クリア。お父様とお母様は?」
「お2人はお隣のお部屋でございます。さあ、殿下。お着替えを。今日はどのお召し物にいたしますか?申し訳ございません。急遽既製品を準備いたしましたので、着心地があまり宜しくないかもしれません。国に戻ったら、すぐに殿下のお召し物をデザイナーに作らせますので」
クリアがとても豪華な服を並べ、申し訳なさそうに頭を下げている。この人、一体何を謝っているのかしら?こんなお姫様が着る様なお洋服、見た事がないわ。これが噂に聞く、ドレスと言うものなのね。
「クリア、謝らないで。こんなにも素敵なドレス、初めて見たわ。こっちも素敵だし、こっちも!あぁ、どれにしようか迷ってしまうわ。ねえ、クリア、私にはどのドレスが似合うかしら?」
「そうですわね。こちらのピンクのドレスなんて可愛らしい感じがいたしますよ」
クリアがふんわりとしたリボンが付いた、ピンクのドレスを勧めてくれた。
「確かにこのドレス、素敵ね。それじゃあ、これにするわ」
「かしこまりました。それでは、お着替えをいたしましょう」
早速ドレスに着替えさせてもらい、髪もハーフアップにしてもらった。キラキラとした赤い石が付いたイヤリングとネックレスも付けてもらった。私の瞳と同じ色の石だ。そして、これまた綺麗な靴に履き替える。
「まあ、お可愛らしい!本当に殿下は陛下によく似ていらっしゃいますわ。さあ、お2人がお待ちです。こちらへ」
クリアに連れられ、部屋から出る。ついキョロキョロとホテル内を見る。本当に立派ね。それにしても、誰にも会わないわ。周りを見渡しても、護衛騎士が何人かいるくらいで、他のお客さんらしき人は見当たらない。もしかして、私達しか泊まっていないのかしら?
そんな事を考えていると、立派な扉の前で止まった。クリアがドアを開けると、これまた広い部屋に、机とイスが。そこには、お父様とお母様もいる。赤いドレスに身を包んだお母様、なんだかお母様じゃないみたい。
「おはよう、オリビア。今日のあなた、お姫様みたいよ」
「おはようございます。お母様も、お姫様みたいよ。とても可愛いわ」
今まではあまりおしゃれをした姿を見た事がなかったけれど、こうやって着飾ると、お母様もまだまだいけるわね。そう思いながら、お母様に抱き着いた。
「シャリーもオリビアも、とても可愛いよ。こんなに可愛い姿を男どもが見たら大変だ。特にオリビアはまだ9歳。万が一誘拐されたら…とにかく、私から離れてはいけないよ。さあ、こっちにおいで」
私とお母様をぎゅっと抱きしめたお父様。昨日からよくわからない事を言っている。
「お父様、私は誘拐なんてされないわ。もし誘拐犯がいたら、やっつけるもの!」
自慢じゃないが、私は意地悪な男の子たちを懲らしめた事もある。あの時の男の子たちの半泣きの姿、今思い出してもスカッとするわ。
そんな私を抱きかかえたのは、お父様だ。
「オリビアは随分と勇敢だね。でも、君はもう国王の娘、そう、王女なんだ。とにかく、十分気を付けないとね。さあ、朝食にしよう。お腹が空いているだろう。たくさんお食べ」
私を椅子に座らせ、おでこに口づけをするお父様。お母様の腰を抱き、私の向かいに2人して座る。そして目の前には豪華なご馳走が。
私のお誕生日の時ですら、こんなに豪華な食事は出ないのに…国王って本当に凄いのね。
早速頂く事に。自慢じゃないが、テーブルマナーはお母様に叩き込まれている。いつも通り背筋を伸ばして、食事をすすめる。それにしてもこのお肉、美味しいわ。朝からお肉を頂けるなんて、贅沢ね。サラダもスープもあるし。それに何よりこのパン、柔らくて口の中で溶けてしまいそう。
「オリビアは随分とテーブルマナーが出来ているね。シャリーに教えてもらったのかい?」
「はい、お母様に厳しく叩き込まれたので。マナーなどに関しては、本当に鬼の様に恐ろしいのよ。お母様は」
こんな風に目を吊り上げてね!と言わんばかりに、指で目を吊り上げた。
「もう、オリビア。お母様はそんなに恐ろしくないでしょう。本当にこの子は」
お母様が怒っている。でも、本当に怖いんだから。
「ハハハハ、シャリーがそんなに目を吊り上げて怒る姿、私も見たいものだ。オリビア、君はこのお肉が気に入った様だね。私のもあげよう。オリビアは少し痩せすぎだ。もっとたくさん食べないとね。シャリーも、随分と痩せてしまった様だし。相当苦労したんだね」
お父様が悲しそうに呟いた。
「お父様、私もお母様も、村の人に親切にしてもらっていたから、それなりに幸せに暮らしてきたのよ。そんな悲しそうな顔をしないで!」
「オリビアは優しい子だね。私を気遣ってくれているのかい?ありがとう」
そう言うと、お父様が微笑んでくれた。よかった、元気になってくれたみたいね。その後も3人で話をしながら、美味しく朝食を頂いたのであった。
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